M-BLstory

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February 2, 2025
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テーマ: 自作BL小説(22)
カテゴリ: BL小説
第七章:交わる刃

夜の街に銃声が響いた。

九条は冷静に身を伏せ、素早く拳銃を構える。敵対組織の連中が数人、ビルの奥から飛び出してきた。

「クソが……」

九条は一瞬だけ柊の方を見た。

「お前はここにいろ!」

そう言い捨てて、九条は暗闇の中へと消えた。

柊は奥歯を噛み締めた。

(俺は……ここでただ待っているだけなのか?)



九条がいるこの世界は、脚本も演出もない、むき出しの現実だった。

そして——九条がこのまま、この世界に囚われ続けるのを、柊は見ていられなかった。

***

九条はすでに敵の一人を仕留めていた。

しかし、油断はできない。敵の動きは明らかに計画的で、こちらの動きを読んでいるようだった。

(……裏切り者がいるな)

九条は直感的にそう確信した。

辰巳会の内部に、敵に情報を流している者がいる。そうでなければ、ここまでピンポイントに襲撃されるはずがない。

九条は静かに息を整え、銃を構え直した。その時——。

「九条さん!」

聞き慣れた声が響いた。



「……何やってんだ、バカ!」

「黙って待ってるだけなんて性に合わないんだよ!」

柊は拳を握りしめて言う。その目には迷いがなかった。

九条は舌打ちし、彼の腕を強く掴んだ。

「お前みたいな奴がここにいたら——」



柊の言葉に、九条は息を呑む。

「……」

確かに、柊はただの俳優かもしれない。だが、彼の瞳は戦場に立つ者のそれと同じだった。

「……クソが」

九条は諦めたように小さく呟く。

「だったら、俺から離れるな」

柊は小さく笑い、頷いた。

その瞬間、銃声が響いた——。

***

九条はとっさに柊を庇い、弾丸が頬をかすめる。

「……ちっ」

敵はまだ近くに潜んでいる。

九条は柊の腕を引き、影へと身を潜めた。

「いいか、俺の合図で走れ」

「分かった」

九条は一瞬、柊の顔を見つめた。

——どうしてこいつは、ここまで俺に関わろうとする?

疑問は尽きなかったが、今は考えている暇はない。

「……行くぞ!」

九条の号令とともに、二人は駆け出した——。





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Last updated  February 2, 2025 11:29:18 PM
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