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2003年01月09日
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 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の極微の世界を覗いてみる。ある科学者はこう述べている。「長年にわたって電子顕微鏡でウイルス粒子を観察してきたが、これほどまでに微小なものが持つ精密で複雑なデザインにはいまだに驚嘆し、興奮させられる」。
 ウイルスはバクテリアより小さく、そのバクテリアは人間の平均的な細胞よりもずっと小さいものである。ある権威者によれば、HIV粒子は「2億3,000万個集めても、この文の終わりにあるピリオドぐらいの大きさにしかならないとのこと。ウイルスが増殖するには、まず宿主細胞に入り込んで、その資源を占拠することが必要である。
 HIVは人体に進入すると、免疫系の制御下にある大兵力と闘わなければならない。骨髄で生産される白血球によって防衛網が作られる。白血球には主に2種類のリンパ球があり、T細胞およびB細胞と呼ばれている。さらに食細胞と呼ばれる白血球もある。
 T細胞には様々なタイプがあり、それぞれが異なった機能を受け持つ。ヘルパーT細胞と呼ばれるものは戦略上の要となる。侵入者の識別を援助し、その敵を攻撃して破壊するための細胞を生産するよう指示を出す。HIVによる攻撃の際に特にねらわれるのは、このヘルパーT細胞である。キラーT細胞は、進入されてしまった体細胞を破壊するために活性化されるB細胞は、感染との戦いに投入される抗体を生産する。
 HIVはレトロウイルスの一種で、HIVの遺伝情報は、DNA(デオキシリボ核酸)RNA(リボ核酸)の形で保たれている。HIVは、重い症状が現われるまで長期間潜伏していることがあるので、レトロウイルスの中でも、レンチウイルスと呼ばれるサブグループに分類されている。
 HIVは宿主細胞に入ると、その細胞のメカニズムを思いのままに使うことができる。宿主細胞のDNAを“再プログラム”して、HIVのコピーを大量に作る。しかし、そのためにはまず、異なる“言語”を使わなければならない。自分のRNAをDNAに変え、宿主細胞の生産メカニズムが読んで理解できるようにする必要がある。そのためにHIVは、逆転写酵素と呼ばれるウイルス酵素を用いる。やがて宿主細胞は、多数のHIV粒子を生産してから死ぬ。これら新たに生産された粒子は、他の細胞に入り込む。
 ヘルパーT細胞の数が大幅に減少すると、他の軍勢は反撃されるおそれなく人体を荒らし回ることができる。患者はあらゆる種類の疾患と感染症にかかりやすくなる。こうして、ついにエイズが発症する。HIVにより免疫系全体の機能が損なわれてしまったのである。
 以上は簡略化した説明であり、免疫系についてもHIVの作用についても究明されていない点が多い、ということを覚えておかなければならない。
 ここ20年近くにわたり、膨大な資金をつぎ込み、世界中の一流の医療研究者が知力と体力の限りを尽くしてこの小さなウイルスを研究してきた。その結果、HIVについてかなりのことが分かってきた。外科医のシャーウィン・B・ヌーランド博士は幾年か前に次のように語っている。「ヒト免疫不全ウイルスについて収集されてきた情報の量と、その猛攻撃に対する防御を講じる面での進歩には、まさに驚くべきものがある」。





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最終更新日  2003年01月10日 01時19分47秒
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