星の髪飾り

星の髪飾り

2007/01/13
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「インテリアコーディねーちゃん」・・・・・・カタカナに騙されてはいけないということか。

きっと聞こえほど派手ではない。 

むしろ地味な部類に入る仕事であることを象徴している呼び名だ。 少なくとも裕子が知る

ところのそれは、ゴム長靴を履き、ヘルメットをかぶり、引渡し前の現場へ出向き

図面やスケールを片手に、配線、窓寸法、必要事項の確認をする。 

それらに些細な妥協や怠りがあれば、後で倍になって自分に降りかかってくる。 

笑顔と緊張の連続作業に加えて、接客前の現場確認をするコーディネーターは、現場監督や

工事者とは云わば同士だ。少なくとも、裕子はそう思って十数年仕事を続けてきた。



 仕事を生きがいにしてきた裕子にとって、そのアクシデントは心の沈没であり、小さな

悲鳴は、夫秀明の背中にぶつかり直ぐにヤマビコとなって帰ってきた。

賃金を抑え、収益確保を図ろうとする企業のシナリオの真っ只中、リストラの文字に

敏感にならざるを得ない秀明。 もともと賛成ではなかった妻の仕事上のトラブル。

 多くを語らなくなった付かず離れずの夫婦は、引き立てのエスプレッソの香りに

ぐったりと寄りかかる。 




 「いざなぎ景気」が、ささやかな「癒しブーム」をもたらしたのかもしれない。

インテリアも「和」に注目を集めはじめた。 移行というより、生まれ故郷に落ち着いた

のかもしれないが、カントリー、アジアンを経て、和に流れる店舗や展示場も増えていた。


 新宿にあるインテリア小物店「風雅」は、年齢層を選ばず出入りの多い店だった。

オーナーの上川明と年明けに打ち合わせを済ませた裕子は、春向けの店内ディスプレー

変更に伴うチェックを済ませた。 小物達を生かすメインのテーブルクロス、窓辺に

寄せられるカーテン。 さりげなく「和」を生かす大きな役割は、生地選び。

メーカーショールームへ何度か足を運び、カタログでは不明快なサンプルを再確認。

エンボス加工(凹凸)が施された淡色の生地、脇役は主役を引き立てなければならない。

裕子は久々の店舗の衣替えに幾分緊張しながら、オフィスに戻る。

デスクでいつもの作業にかかる。 上川に確認済みのサンプルの品番を念入りにチェック。

発注依頼書をデスクの真ん中に置く。 

 フェイマス F- 207 色番(LB)
 納期 2月5日
 生地見本は納期が近いため、いつものように直送にて上川様までお願いします。
 備考欄・・・・・・

 そしてそれはいつも通りの段取りの途中で起きた。

ブラインドの羽の隙間から僅かに入り込む陽射しが、何かを見透かしたように透明に光った。


                     撮影 kitakitune05さん





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最終更新日  2007/01/13 07:18:04 PM コメント(12) | コメントを書く


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