星の髪飾り

星の髪飾り

2007/02/17
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従業員は上司である店長やチーフと距離をおいて働くことは難しい。

レストランのフロア―で働く者は客と直接かかわる為、オーダーが遅い、冷めている、

溶けている等の苦情に時には頭を下げなければいけない。

そして彼らの為に、厨房では常に呼吸を合わせて、フロア―のオーダーに機敏にそして

確実に応えなければならない。 縦と横、どちらの歯車も大切なコミニケーション。 

職場にいる時間は長い。

人間関係が錆びていれば、そこはストレスの温床になりかねない。

縦横、互いにわかちあい感謝しつつ、同じ目的に向かって和を保っていった時、売上げは

自然と後ろから付いてくるのかもしれない。


 真夏の陽を浴びた入り口の寄せ植え。 奏が水をさすと、葉の上で雫が輝いた。

そうしてレストラン「街路樹」の扉は開く。

何かを吹っ切ったように意思のある瞳で奏が言う。

「オーダー入ります! 」

 その日はベテラン小林が夏風邪で休んでいた。

「香川さん、後ろ終わったらこちらを手伝って下さい! 」

「はい」

 裕子は、チーフの西田に「後ろ」と呼ばれるのはあまり好きではなかった。

ラインに入ると、倉田の視線が湯気の真ん中をくねくね曲がりながらやってきた。

「大丈夫かい? 」

 不安が増した。 

「香川さん、チョコパをつくります。 さっきから探しているんですが、シロップ」

「チョコレートパフェですね。 チョコシロップは朝、スタンバイしましたよ」

「今日の日付シールを貼って、ここに」

 ラインの作業台下の冷蔵庫をあけて裕子が言った。

「忘れたんじゃないの? 」

 倉田がハンバーグを焼きながら、まるで包容力の無い男を出した。 

倉田への免疫はできていない。 

「忘れましたか? 香川さん」

「いえ」

 カウンターの向こうから矢沢が「お客様お待ちしています」と何気に言うと

裕子は、しゃがみ込んでシロップを必死に探しはじめた。

「チーフ、急いでいるので、バックヤードから新しいのを出してきます」

「そういうことを言っているのではないです! あるべきものがない。問題はそこです」

「じゃあ、もう一度探しましょう」

「探しましょう!って、あんたが探すんだろう? 」

(わかっているけれど、今はフロアーが待っている! 優先はそっちでは? )

キッチンのやり取りを気にしながら、矢沢が言った。

「あのう、チョコレートパフェ、未だですか? 」



 険悪な空気の中、緊張感のない足跡がした。

「あったー! こんな所にほら」

 竜也がサロン(前掛け)の下から、シロップをそっと出して裕子に手渡した。

冷蔵庫にピザ生地を取りにいった彼が、新しいものに今日の日付シールを貼った形跡が

見えた。 機転をきかせたさりげない行動。 配慮のない言葉。 年齢とは別の次元で

何かが動く。 

「借りができたね」

 裕子はすれ違い際で、竜也に小さく囁いた。

小林の存在の大きさを思い知らされながら、ピークのランチタイムをなんとか切り抜けた。




 午後からのシフトでやってきた洋介とチェンジして、裕子と竜也が休憩に入った。

「さっきはありがとう、シロップ」

「何でわかった? 」

「日付シールが斜めに貼ってあった」

「小林っちがいないと、駄目だな、あそこは」

「チーフが遅刻してこなければ、スタンバイの確認もできたのに」

「社員は30分前には入るんだよ、本当は」

「そうなの? 1時間も遅れてくる時もあるじゃない」

「それでやたらと理屈っぽいから、イライラするんだ俺」

「洋介だけかと思ったけど、やっぱりそう思う? 人、募集してくれないかな? 」

「無理」

「うまく回転しないと、ヤバイよ、店」



 しばらくすると、竜也は更衣室の床にお粗末に敷かれたのスノコの上で、

ポロポロとギターを弾きはじめた。 

「うーん! 繊細な心のメロディー」

 瑞々しい音色に思わずそう言って、ほど良く筋肉がついた腕の辺りを見た。

「香川さんは何かやってるの? 」

「ダンスを少し」

「盆踊り? 」

「失礼な! 」

「俺相手にすぐムキになるしー」

                          TOP 写真 SOUさん 



 小麦のささやきです。67.jpg

 仕事のない土曜日は、空気が抜けた自転車をこいでいるようでつまらん!
リズムって大事。 明日は塗って(笑)、胸を張ってしゃきっと行こう!





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最終更新日  2007/02/17 07:13:12 PM コメント(8) | コメントを書く


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