星の髪飾り

星の髪飾り

2007/03/02
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今となっては何を言ったか思い出せないダンスサークル最後の日。

血圧上昇と呼吸の乱れ、少しの細胞活性化、脳と身体の記憶はこんなものだ。

 夜になると「街路樹」は、道端の街灯と入り口の植え込みに忍ばせたライトアップが

仲良く溶け合って美しい外観を浮き出していた。 

「ああ、星だ! 明日は晴れるな」

 翌日は、今時お台場に行ったことがないと言った、竜也の常識では、到って

天然記念物のオバサンとでかける事になっていた。

裕子は「デートの下見? 」とにやけて訊いたが、最近カリカリしている年令不詳の

その人は、母親にも恋人にも属さない不思議な存在なのだ。

「街路樹」を出た竜也は、自転車に跨ってくちばしを開いた。

「ああ、もう十一時だ、よしゃっ! 帰ろうっと! 」



 竜也は、待ち合わせの時間より十分早く着くと偉そうに言った。

確かにベンチには両足を投げ出して退屈そうにくちばしと遊ぶ竜也がいた。

「お待たせー」

「そんなにフーフーいちゃって! ホームを走る姿、可笑しいよ」

「だって、待たせているかと思って・・・・・・」

「やっぱ年だね」

 竜也の素材は新鮮で、熱いスープに入れて溶かしてしまいたい。

直球ストレートに「街路樹」の誰もが一度はムカっときて、二度目は呆れ、三度目で慣れて

最後に許せる。 そんな素材と一メートルほど距離をとってつり革に掴まる。

「電車混んでくるからさあ。離れていると不自然じゃん、別に気を使わなくてもいいよ! 」

 あいつはデカイ男になりますよ! と言った矢沢の言葉、どう見てもふにゃふにゃした

コンニャクか蓮根。 数箇所、穴のあいたジーンズと重ね着のシャツを裕子は眺めた。

「いちおうね、竜也に気を使って若作りしてきたんだけれど」

「どうせ親戚のおばさんと甥っ子にしか見られないよ」

(ズコッ!)

 お台場に着くまで、結局ふたりは奏の話で盛り上がった。

恋のフェロモンを露骨に出さないようにとか、元彼のこと、家庭のこと、音大に行ってたら

凄かったかもとか、そんなこんなで一時間。 ふたりはお台場に着いた。

「わー! 平日でもこんなに人が! 」

「いいっしょ? ここがお台場だよ」

 竜也は観光案内をするかのように誇らしげに言った。

密着するアベックを横目で見ながら、裕子は夏が遠ざかった海の匂いを感じていた。

「ここ、夜景がきれいでしょう? 」

「いちおう、デートスポットだからね」

「来月のおわり位から、あれ、ほら! イマジネーション点くよね」

「イルミネーションのこと? 」

「そう、それよ。 その時は奏ちゃんと一緒だね」

「だといいな・・・・・・。ねえ、俺、朝飯抜きなんだー 腹減ったな」

「どうする? 超一流のオッサン大衆食堂がいい? それとも二流の高級レストラン? 」

「マジ、選べないよそれ」

 竜也は立ち止まって青空に向かって伸びをした。

「あああー気持ちいいなあ! めっちゃ空が高いし・・・・・・」

「うん、めっちゃ気分いいよー! 今日は厨房から開放されたー」

                                  続く

撮影 しっぽ2さん





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最終更新日  2007/03/02 05:17:01 PM コメント(10) | コメントを書く


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