星の髪飾り

星の髪飾り

2007/08/30
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人込みに紛れる。 

「本当に好きなんだね、こういう通りが」

 優がそのまま首を傾げれば、僕の肩に乗るバランスを得ているのに、僕等には何も

起こらない。 見上げる眼差しにドキっとするだけで、僕はお預けをくらったままだ。



「わー!簪(かんざし)がある」

 僕よりずっと年上なのに、浅草がそんなに珍しくて新鮮なのか。 優は布やべっ甲の

簪に見惚れている。 僕は隣のかぐや姫を月に帰したくない。 

「それでさあ、先週あそこで買った毛糸、何か作ったわけ?」

「セーター・・・・・ああマフラーって言っておこう。 浩樹とお父様の分よ」

 ふたりの間に暮らしの匂いが入ると、僕は揺れる。 

「嬉しいな! そう言えば先週、横浜に送ってくれた花、ウイン・・・えーと」

「ウインターコスモス」

「そう、それ。 親父、喜んでいたよ。 母は花が凄く好きだったし」

「お茶目な花でしょ。 多年草だから毎年お友達を増やしてくれるわよ、きっと」

 優は時々革ジャンを掴んで、僕からはぐれないようにしている。 



「イブはどうする?」

 一番のメインを、辺りの発色や活気に紛れさせて言ったのに、優は空かさず反応した。 

「車で冬の海を見に行く? 」

「駄目よ!車は走る個室だから。 ハンドル一つで何処にでも行くのよ、あの物体」

 優は瞳の奥で謎めいた輝きを見せた。 

僕は何度かそれに出会っているけれど、優の思わくに頷くと、彼女はとても可愛い仕草で

僕を覗き込む。そして僕はそれにやられる。 

「東京タワーはどう? 」

「いいね!」



 東京タワーは小畑千恵子と行った思い出の場所で、それから間もなく僕等は別れた。 

今、何故そんなことを思い出すのか。 優のOKに言葉以外のアクションがあってもいいの

に、僕は千恵子を思っている。 まるで魔法にかかったように千恵子が消えない。 

「浩樹、昔の恋人を思い出してるでしょう?」

「どうして?」 (わかるの?)


 その時、僕に魔法をかけているのは実は優ではないかと、ふと思った。


                      photo by  kitakitune07さん





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最終更新日  2007/08/30 12:38:59 PM コメント(12) | コメントを書く


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