星の髪飾り

星の髪飾り

2007/09/03
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それは漠然としているけれど、口ぶりや瞳に潜んで僕を手招きする。 

好きになれば徐々にに相手を知りたくなる。 現われたバックボーンに捕らわれなければ

付随する感情や多くの行き違いが少なくて済む。 ただ僕には自信がない。

訊く事も知ることも実は怖い。 遮られた感情は、気配ばかりが充満して行き場を求める。 



 僕は浅草から高崎に向かっていた。 甘い節度に引き寄せられ、突き放されては余韻を

引きずる。 優の仕掛けは一定の距離を保ちながら、時を稼いでいる。 

用事があると言って銀座に向かった優は、僕に手を振った後、バックから簪(かんざし)を

出して髪に留めた。 僕は目を見張った。 それは黒に金粉が散りばめられ、下がった紐の

先で小さな雫が揺れていた。 しかも、優がお気に召して眺めていた物ではなかった。

(何時の間に買ったのだろう?) 

僕は別れたばかりの優に電話をしようと、携帯を耳にあてた。

「何か言い忘れたことがあったような気がして」

「びっくりするじゃない!」

 優は本当に驚いたようだった。  

「どうしたの? もうホームなの。 言い忘れたことを思い出したらメールしてくれる?」

「あ、ああ、そうするけど・・・・」

 僕は夕暮れにけじめをつけ、銀座に向かう優がちょっと気になった。 

別れ際のひとコマは、それまで心に張り付いていた無形と組んでゆっくりと宙に浮かんだ。

 そのスライドショーは、僕を取り巻く気配を深い闇色に染めた。


                 photo by kitakitune07さん





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最終更新日  2007/09/03 09:07:51 PM コメント(7) | コメントを書く


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