星の髪飾り

星の髪飾り

2007/09/06
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仕事で荒れた指先をいたわりながら、黒革の手袋をはめて、寮に向かう。

途中、どうしようかと迷いながらコンビニを通り過ぎ、シャッターが下りかけた花屋で

自転車を止めた。 ふっくらとした愛想のいい店員から花鉢を受け取り、再びペタルを

漕いた。 

 寮に着くと、隣の部屋から仲間達の声がした。 (また呑んでるな・・・) 

僕は足を忍ばせて部屋に入り、暖房のスイッチを入れた。 

「ふー・・・・・」 

 テーブルに置かれたサザンクロスは薄紅色で、妖しげに揺らいで僕を見つめる。

「冬に咲く花は健気でしょう。 サザンクロスはね、星型の花で、南十字星を思わせるから

そんな名前がついたみたい」

 優が耳もとでささやいているようだった。 花言葉 「遠い記憶」



 サザンクロスは、出会いから今日までの僕等の仕組みに首をかしげる。 

僕を胸騒ぎにかき立てるのは、単なる男の影ではなく、もっと謎めいた何かで、今それは

潜伏期間に息を潜めているだけだ。



 僕は革ジャンを脱いで、クローゼットを開けた。 

寮に入る時、横浜から衣類と一緒に持ってきたアルバムを探すためだ。 そこには、さっき

スライドショーに現われたワンシーンがある・・・・きっと。 

僕は衣装ケースの奥からそれを見つけた。 アルバムを手にした時、心臓に圧力がかかった。 

その勢いを借りて、僕はおそるおそるページをめくった。

「あった!」

 まだ小学生だったある年の始め、僕が父を写した時に偶然入った母の後ろ姿。 拡大した

写真の右下に、和服姿の母がいた。 そして、うなじの上で黒髪を留めている簪(かんざし)

を捕らえると、僕はゆっくりアルバムに顔を近づけた。

「やっぱり・・・・・」

 その簪は、さっき優が付けたものと、とてもよく似ていた。 

母が好きだった簪は、僕の記憶に残っていた。

                  photo by  しっぽ2さん





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最終更新日  2007/09/06 06:07:08 PM コメント(7) | コメントを書く


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