星の髪飾り

星の髪飾り

2007/11/01
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 真沙にとって、茂夫の死は途轍もない天からの放射能だった。 

真沙は東京に行く事を決めた。 幼い子を連れての都会での再出発を理解した上で、両家は一時「忘れ形見」を引きとることにした。 

 林家では働き者の志津が牛の世話から戻り、睫毛の下で大きな瞳を潤ませて座敷にやってきた。
何も知らない亜由美は、ハタキで二匹の猫を追いかけている。
「直ぐに亜由美を迎えに来ます。 しっかり環境を整えて・・・」
 真沙は畳に額をつけた。          


 大谷家では、母や兄弟と離れて暮らすことを自覚できる多希子が訊ねた。

 亜由美と違って、多希子が東京で暮らせる日は遠いかもしれない。 良子は前掛けで目頭を拭った。
「迎えにくるってやあ! おばあちゃんがいるで、安心していいでね」
 冴は、膝を揃えて健気に真沙を見つめる多希子に、熱いまなざしをむけた。
「東京はアルプスのむこうよ。 いつもタッコを見てるから。 きっと迎えにくるから・・・」
 真沙は一度多希子を抱きしめたが、すぐに立ち上がり、背を向けた。 


 底流の人は、さざ波のゆくえを見守りながら大海への軌道を踏み、ぬくもりが去った小さな胸は、新たな覚悟を立てた。
「タッコは悲しくないでね。 寂しくないでね・・・」

 永遠は、絶えまない一瞬の積みかさねであることを裏切らない。

                  次回、永遠に第三章 1 「豚と鶏のお出迎え」





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最終更新日  2007/11/01 03:58:50 PM コメント(6) | コメントを書く


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