星の髪飾り

星の髪飾り

2007/11/22
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 黄金色に靡く稲、黄赤に染まる木々、家々の庭先で秋を待ち続けた柿の実が村を彩る。
空に向かう銀杏の木の下に、少女達がひとりふたりとやってきた。
「珍しい光景ですね。 福沢先生のクラスの子供達ですな」
「いい?女子だけの秘密だでね」 
 意気揚々とした多希子がランドセルからわら半紙を出すと、おかっぱ頭が輪の真ん中に集まった。ガリ版印刷されたテストの裏には、赤鉛筆で「作戦」とが書かれている。
「よーく見るんな」
 多希子は肩まで伸びた髪を輪ゴムで縛り、鼻水をすすりながら作戦の構図に得意げに指を這わせた。
「私は弘君?」 
「私、紀夫君?」  
 学級委員の恵子が多希子の給食袋を逆さに振ると、色とりどりの手裏剣が現れた。
「すごい!上手に折ってあるね」
 起用に折られた手裏剣は、伊那町での退屈な入院生活の収穫だった。 
姫の頭がさらに小さく固まると、職員室の窓辺に立った教師が首を傾げた。

「タッコちゃはシュルケンが好きだで」                          
「男には男の武器を使うんな」                           
「これをどうするんな?」                   
「頭を使うんな。 自分の名前と線で繋がった男子を覚えるんだに。それでね・・・」
「あいつ等は今、竹馬に夢中だで。 タッコちゃが言う通り、一番長い二時間目の休み時間。 仕返しはその隙だでね!」
「大丈夫ずらか・・・」
「タッコちゃに賛成の人、ほんでお嫁にいかんでもいい人、この指とまれ!」
 恵子の人差し指に、歯を見せた姫の指が絡まった。 多希子は恵子の肩をポン!と叩いてにっこり笑った。
 暫くすると銀杏の木の下でケラケラと笑いが起きた。 男子の悪戯に好意が隠れていることを少女達は知らない。              

 各々色が違う手裏剣を持った姫が解散すると、恵子と多希子はランドセルを枕に銀杏の木の下に寝っ転がった。 
「恵子ちゃ、鉄人二十八号、狼少年ケン?どっちが好き?」
「狼少年ケン。動物が喋るで好きな。 それから・・・あれも好き」
「雲? 雲は風と一緒に旅をしとるね。 雲に乗って空を飛びたいねえ」


 作戦に胸が躍ったその日、多希子の帰宅に気づいた良子は「遅かったじゃんけ」と言って、蔵に入って行った。 良子は紫色の風呂敷包みを、大事そうに抱えていた。

【ねえ、お母さん。 私は今でも覚えている。 あの時の良子おばさんの横顔。 蔵で冬眠し続けるアルバムにふたりが写っていたのね? 割烹着のお腹の辺りがふくらんでいるね・・・】 





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最終更新日  2007/11/22 03:02:23 PM コメント(12) | コメントを書く


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