星の髪飾り

星の髪飾り

2007/11/24
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 台所の板の間に広がった光の上に、多希子がやってきた。
「おばあちゃん、卵の殻とってあるら?」
「ほれ、たーんとあるに」
「ご飯粒も持っていくでね」
「何に使うんずらか?」良子が進二にお茶を入れながら呟いた。
「タッコのすることは、わしにもわからん」
 多希子はてっぺんにボンボンが付いた毛糸の帽子を被り、踝を隠した靴下を引き上げながら忙しなく廊下を歩いて行った。
「ほい、もう学校行くのけ?」



 男子の間で流行りだした竹馬は、それぞれの家庭で兄や父親が拵えた傑作で、広い校庭に散っていく竹馬族の後ろ姿はそれなりに凛々しかった。
「さあ、今だでね!」
 男子が去った直後、恵子が姫たちに指令を出し、多希子は仕掛けが詰まった弁当箱を持った。  
「いい? 三時間目の国語、北斗七星のページだでね。 間違えんようにね!」         
「大丈夫。 間違えんよタッコちゃ!」      

 下駄箱に乱暴に入れられた上履きを手早に出した多希子は、つま先に奇妙な仕掛けを塗り込んだ。


 三時間目の鐘が鳴ると、小脇に教科書を挟んだ福沢がやってきた。

 パーマネントの髪をくっきり横分けにした福沢が、隙間だらけの教室を見渡すと、しゃんと姿勢を正した女子の目が不自然に輝いた。 ヘアーピンを留めなおす仕草はいつもながら素早く、気合いを入れる時にする福沢の癖。 多希子はそれを見て胸が躍った。

 やがて教室の後ろから、上履きのかかとを踏んだ竹馬族が戻って来た。
「なんなー許さんぞ!」大将の広隆が不機嫌な顔で椅子を引き、両足を開いて腰かけた。
「どうしたの? 三時間目は始まっているのよ! 上履きちゃんと履きなさい!」
「つま先に何か詰まっとって履けん・・・べとべと、ちくちくするんな」

「何か入っとるぞ」
「白い手裏剣!」                        
「俺は青い手裏剣!」
「折り紙じゃないの? ちょっと見せなさい!」 

 さっきまで勇んで竹馬を操っていた男子が、教壇から降りてきた福沢を、口を半開きにして見上げている。
「先生!何か書いてあるに」 
 恵子の一声が絶妙なタイミングで、教室を突き抜けた。 
福沢は教科書の中に現れた色とりどりの星型を摘まんだ。 書かれた文字には特徴があり、ひらがなはくねくね曲がり、漢字は右上がりで勢いがあった。









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最終更新日  2007/11/24 06:20:34 PM コメント(8) | コメントを書く


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