星の髪飾り

星の髪飾り

2007/11/27
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            シーン 30 「初恋」 


 大空みなぎる赤石連邦、山の間を渡る雲、自然の奏でを仰いだ樹木は、瑞々しいそよぎで大地を包む。 裏山から流れ込む山水がちょろちょろと竹の皿に滴ると、三年生になった多希子の両手が器に変わった。 
「ああ! おいしいお水」                               

 仕返しの後、より添った仲間達は、冬の下駄スケート、春の遠足、理科の課外授業を経て校内でも評判の仲良しクラスになっていた。                      
紺色のブルマーを履いた姫達が校庭に散ると、迷わず追いかける男子。 逆上がりの練習に勤しむ彼等は、我先にと鉄棒を握る。
「もうちっとだね! 仁美ちゃん」

青空への一回転に誰もが満足顔。けれど達成感を得た仲間を見ると仁美は焦る。 
「誰か、お尻をあげてくれん?」
 仁美は白い腿に緩んで落ちたブルマーのゴムをたくし上げて、気合を入れる。
「逆上がりできんのは私だけだ。 水泳も下手くそで困る」                            
「勢いをつけるんな! ほら、タッコを見とってみ? こう・・・」                        
「できんでも気にするな。 仁美は絵が上手い。 タッコは山羊が豚かわからん絵を書いたって平気でおる。 山の間からでかい東京タワーが頭を出しとるし」                  

勇は鉄棒を放さない隣人を見て、にんまり笑った。               

「ふん! 山羊と豚は鼻の穴が違うだけな。 東京タワーは山の背中にちゃんとおるんな! 知らんくせに」                 
「おまえ、言うことが支離滅裂だなあ」               

 それから数日後、仁美は勇の初恋の力と、多希子の達者な号令で見事に逆上がりができるようになった。 校庭で大きな拍手が湧いた。
福沢は、放課後汗を拭いながら必死に練習する仁美を、校舎の窓から幾度か見ていた。      
「がんばったね」                

 この頃から黒板の悪戯書きが、相々(あいあい)傘へと変わっていた。 桃色のチョークで書かれたふたりは教室にはいない。
「大将は?」
「このごろ放課後は、直ぐいなくなるに」


 澄んだ青空を舞うブランコの振幅が次第に大きくなっていく。
「おーい!そんなにこぐとぶっ飛ぶぞー!」
「聞こえーん」
 広隆はひろひら舞う多希子のスカートに、目を向けたり背けたりして立っていた。                                          






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最終更新日  2007/11/28 06:13:45 PM
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