星の髪飾り

星の髪飾り

2007/12/15
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葉を落とした裏山の通学路を白い息を吐きながら少女達はひたすら歩く。 多希子は凍ったせせらぎの脇で立ち止り、足踏みをしはじめた。                                  
「霜はなんでざくざく音がするんずら」                     
「タッコちゃ、また家に引き返すの?」                                                                         
 にわかに発展する東京が頻繁に話題になると、霧のようにわいてくる寂しさを多希子は上手に追いはらえない。 こたつで温めた体温でズル休みすることもしばしばあった。 
そんな時、良子は気づかない振りをして、摩り下ろしたリンゴに砂糖を加えて持ってきた。                            
「お医者さんへ行くけ?」                    
「行かんでも治る・・・」                                  
 ひとりになった多希子は、古くなった兆番が並んだ箪笥を開けて玉手箱を出した。 そこには天竜川で拾った小石や、帽子を被ったドングリ、ちりがみに包んだ押し花が数枚と、手つくりの金メダルがお行儀よく入っていた。      

 空と山の輪郭が緩み、里が純白に染まると、囲炉裏や火鉢のまわりに家族の両手が集まった。  多希子は隣の弘子を呼び、悴んだ手に毛糸の手袋をはめて、独りが屈んで入れる位のかまくらを拵えた。 綿で膨らんだ半纏を着た弘子が、膝を抱えて入り込むと、弘子が連れて来た子犬がはしゃいで庭にたくさんの足跡ができた。                        
ひとしきり遊んだ後、鶏小屋と雪を被った畑の間を弘子が帰っていった。 多希子は赤い長靴の後ろを歩く子犬を暫く見ていた。                                                                            
 その冬は雪の結晶のようにきらきらと輝いていた。                               

 多希子が四年生になった春のことだった。
良子は勝樹と秀樹の手を引いて庭にやってくると、うららかに咲き誇る梅の花を背に立ち、多希子を呼んだ。 そして進二は、カメラを首から下げて表玄関からでてきた。 カメラを手にした進二は優しい眼差しを見せたかと思うと、シャッターを押す寸前カメラを下げてため息をついた。 そんなことを数回繰り返した進二が言った。                           
「多希子、どいれえいい顔しな・・・うんといい顔」          
「もうじき東京のお母さん達と暮らせるに。 今日は記念写真を撮るでね」                              
「おばさん!ふんと?」                      
 多希子は良子を見上げた。
「そうな。 ふんとうな」                      

 かけがいのない笑顔が写真に収められた。






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最終更新日  2007/12/15 09:28:11 PM コメント(11) | コメントを書く


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