この時点でふつうの物語でないことは明らかなのですが、アダムの両親は、自分より年上の姿になった息子を喜んで迎え入れます。ただ、幼いころから自分のセクシュアリティを自覚しつつも隠してきたアダムの現在を知り、昔のままの価値観の2人は、時に心無い言葉を投げかけてしまうのです。そんなときのアダムの表情がまた、切なく語るんです。そして、「済まなかった」と語る父とそれに抱き着いて泣くアダム。クリスマスツリーの飾りつけをしながら、Pet Shop Boysの「Always on My Mind」の歌詞を呟く母。この歌詞がそのまんま母から息子への謝罪と愛にあふれていて、私はここで涙で前が見えなくなりました。
そして…自宅に戻ったアダムは、ハリーの部屋を訪れます。しかし、そこにあったのは…。これは言えない!言いたくない! ラストシーンは本当に印象的です。ベッドに横たわり、背中からハリーを抱きしめるアダム。ハリーが「何かレコードをかけて」というと、流れるのがFrankie Goes To Hollywoodの「The Power of Love」。最初のシーンでもアダムがかけていたのもこれでした。このバンドというと、やはりセクシュアリティではアダムに通じます。アダムはこの曲をよすがに生きているのかななんて最初は思いましたけれど、ハリーが初めてアダムを訪ねたときに「ヴァンパイアがいるんだよ」と言ったんですが、歌詞を読んで、ここでつながるのか!と納得。 「ぼくがきみを守る」とアダムが言って眠りにつくラストは、いろいろ示唆に富んでいて、想像力をかき立てられる終わり方でした。もしかすると、アダムも…。