名作落語大全集

名作落語大全集

2021.08.18
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カテゴリ: 落語

​ 【粗筋】
 二十歳になってもぶらぶらしている与太郎に、叔父さんがかぼちゃ売りを勧める。
「大きいのは​
13 銭、小さいのは 12 銭。これ元だよ。売る時は上ェ見て売りなよ」
 といわれて、空を見上げながら元値で売り、安い安いとすぐ売り切れた。喜んで帰ったが、叔父さんに小言をくらった。
「上を見るというのは掛け値をすることだ。13銭は15銭、12銭は14銭で売るから2銭ずつ儲けが出る。掛け値をしねえで女房子が養えるか」
「女房子なんかいねえや」
「あればの話だ。なんで飯を食うんだ」
「箸と茶碗」
「箸と茶碗で飯を食うのは当たり前だ」
「ライスカレーは匙(しゃじ)で食う」
もう一度売りに出掛けさせられることになってしまう。
「こういう間抜けな物を、作る奴がいるから食う奴がいるのか、食う奴がいるから作る奴がいるのか知らねえが、間抜けなことに間に入って売らなきゃならなくなる奴もいる」
 と哲学的な愚痴を言いながら、さっきと同じ所へ行って売ろうとするのはさすがに与太郎である。
「さっきと同じ値段でいいね」
「いや、大きいのは
15 銭、小さいのは 14 銭だよ」
「何だい、値上げしたのかい」
「13銭は15銭、12銭は14銭で売るから2銭ずつ儲けが出らァ。儲けがなくっちゃ女房子が養えねえ。売る奴は利口で、買う奴は馬鹿だ」
「おいおい、お前とぼけているのかと思っていたら、本当に馬鹿なんだな」
「ヘヘッ、おだてるない」
「仕様のない奴だな……女房子を養うって言ったが、子供がいるように見えねえな。いくつだ」「年か、年なら60だ」
「60ってことはねえだろう。見たところはたちくらいだな」
「そう、元ははたちで40は掛け値」
「おいおい、年に掛け値をするやつがあるか」
「だって掛け値をしなくちゃァ女房子が養えねえ」

​ ​【成立】
 安永5(1776)年『軽口駒さらゑ』の「かけねの間違い」など。寛永5年『醒酔笑』巻五の無題、子供の年齢を聞かれた商人が、「かけ値で13、本当は12でございます」と答える噺がある。万治2年『百物語』下巻13は、掛け値をするよう言われた息子が、飛脚に道を聞かれ、すぐ近くなのを大きく教える。親父が呼び返して、飛脚が右往左往する。
​​
柳家小さん(4)が、「今度の席で『唐茄子屋』をやるぜ」と言って皆を驚かせた。当時「唐茄子屋」は三遊亭圓右(1)が得意として、他に演り手はなかったのである。ところがいざ高座に出てみると、大阪の「みかん屋」を商売替えしただけの改作だった。小さんは「唐茄子屋」という題で繰り返しこれを取り上げ、元々の「唐茄子屋」は混乱を避けるため「唐茄子屋政談」と呼ばれるようになった。それでもただ「唐茄子屋」といえば「政談」を指すのが常識であるため、この噺の方を「かぼちゃ屋」と呼ぶのが一般化したようである。
 尚、「ライスカレーは匙で食う」というくすぐりについて、武藤禎夫は小さん(4)が「道具屋」で使っていると記しているが、この噺の勘違いであろうか。

​ 【一言】
 ​
うえをみてうろう 〔上を見て売ろう〕(連語):日本古来の経営のコツ。さきに『上を向いて歩こう』が米国ヒットパレードで第八位にランクされたが、この「上を向いて売ろう」方式も、いずれ米国財界に影響を与えるだろうと予測されている。(江國滋)
​
〇 ほんとは『かぼちゃ屋』でなく『唐茄子屋』なんですが、『唐茄子屋政談』をよく『唐茄子屋』というので、それと区別するために『かぼちゃ屋』になったんだと思います。だいたい、東京じゃ普通「かぼちゃ」といわずに「唐茄子」といいますから……この噺は実におかしくできている。しかも、みかんを売るよりかぼちゃを売るほうがよっぽどおかしい。改作で噺がよくなった珍しい例ですね。(柳家小さん(5))
​
​
【蘊蓄】
 ​
「カボチャ」という語はポルトガル語の「 Cambodia abóbora 」(カンボジャ・アボボラ、「カンボジアのウリ」の意)の後半が略されたもの。逆に前半を略してボーフラあるいはボボラと呼ぶ地方もある。また、「南瓜」 は「南京瓜」の略であり「南京」とも呼ばれるが、東京では「唐茄子」が一般的。
 熊本民謡にあるおてもやんの歌詞「カスガボウブラドンたちゃ」というのは、「春日」という字を当て、産地であるという注がついているものがあるが、最初の「カンボジアボーブラ」がなまったものという説もある。「カボチャ野郎」とでも訳すと通じる。
 英国でパンプキンと呼ばれるものは、果皮がオレンジ色の種類に限られ、その他のカボチャは全てスクァッシュで、日本のカボチャは「カボチャ・ スクァッシュ」と呼ばれるが、オーストラリアなど他の英語圏ではこの限りではない。
 イギリスに言った時に聞いたら、シンデレラの馬車もオレンジ色の瓜型のもので、日本のカボチャを絵に描いて見せると、シンデレラはこんな馬車には 乗らないときっぱり否定された。尚、黒人のエディなんちゃらって人が王子様になった映画「シンデレラ」は、サイズの合う女性を探すというもので、靴よりは説得力がある。この映画でもカボチャは同じだった(日本未公開らしい。ま、成人映画ですからねえ……日本のと違ってぼかしもないし……)。ディズニーのアニメは日本式のカボチャだったと思うが、なぜだろう。






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Last updated  2021.08.18 20:46:24
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Comments

落語愛好者@ Re:落語「は」の88:浜野矩随(はまのまさのり)(02/08) 読みが違っておりますよ。 浜野矩随は「は…
ヌ−ベルハンバ―グ@ Re:落語「ね」の14:猫忠(ねこただ)(09/24) 初めてコメントさせ頂きます。 六代目・三…
名無し@ Re:落語「と」の86:とろろん(05/12) 「デロレン左衛門」は「デロデン祭文」では…
モルモタマ@ Re:65:油屋猫(あぶらやねこ)(10/21) これは小咄で、桂米朝が小咄ばかりを演じ…
背番号のないエース0829 @ 日比谷公園 「日比谷焼き討ち事件」に、上記の内容に…

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