現実逃避所 Ally of Jastice

May 14, 2005
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カテゴリ: 趣味のハナシ
えー、あー、コホン。わかる?
ハイハイどうやらこの言葉なら通じるようだな。
……俺? 俺はな、悪霊オセロット、名はラムセス。
俺は一体だれかというと、その名の通り悪霊オセロット……かもしれないし、そうじゃないかも。
オセロットの姿をいつも俺は何かに変えて使ってる。
何にでもなれるっていうわけ。ただし、実在する動物は人間、それだけだ。
それ以外のものに化けるには、実在する動物を3体以上組み合わせたキメラにしかなれない。しかしコイツはやっかいで、頭、胴、手足のそれぞれにエネルギーを使うんで長い間化けてはいられない。
ま、こんなお粗末な力でも、破壊や陰謀を楽しむだけの力ならある。超能力とやらが使えるし、パワーはまぁまぁいいもんだ。人間を脅かしたりおとしいれたりするのは心地良い。ほんとに。
しかしここ最近、人間はだいぶ賢くなったみたいだ。唸っちゃうねぇ。

じゃ、なぜまだ征服できないかというと戦乱おかげさ。――敵は、『魔界』を襲うエイリアンだ。けっこう強力で、魔物と呼ばれる悪霊の分身や、悪魔といわれる悪霊の下僕を次々とぶったおしてくれたから護りが弱まり悪霊の数が減っちまったからな。
こんだけ少なくちゃ、生界侵略を速やかに成功させるのも難しいって。わかる? わかんねーよなぁ!
……仕方ないか。ま、気にすんな。
とにかく、人間を片付けたら今度はエイリアン、というわけにも行かないんだってこれが。
エイリアンは人間界と魔界を同時に攻撃している。ほんとはもちろん人間界を先に征服し、エイリアンの武力の進行を止めたほうがいいんだ。けれど不甲斐なく手一杯な俺たち。
人間どもはさっき話した『魔術』でエイリアンに対抗してたみたいだ。
エイリアンも少々人間を見くびっていたみたいだな、ここ何千年かは人間界から手を引いてこっちに本腰を入れてやがる。
悪霊とエイリアンが戦っているからいいものの、人間界はあと少しでジ・エンド――終焉だ。たまんねーよなァ。嬉しいねぇ!
……だいぶ話がそれたが、俺が何者かって話だな。
固体じゃ表せないのはわかってくれたと思う。だから、役職で表そう。俺は『隠密地球侵略作戦部総指揮官』だ。
魔界での組織の一部で、エイリアンにも同じようなのがあるんだろうな――互いに戦っている間、なるべくこっそりと活動をし人間界を制圧しようと試みているようだ。悪霊とエイリアンのこのではどれだけ多くの下僕を先に手に入れるか――武力が問題となるだろう。

どちらにしろ、俺はこの少人数部隊でなんとか2度の戦いを勝利に導かなければいけない。
――しかし、わかると思うがなかなかこれも厄介だ。人間を先に手に入れようにも……一般的に魔術が使われていた時代に比べれば、俺の部下の暗躍、事実の偽装工作により魔術を知るものは極小数になった――が、その部下たちはみんな憎き魔術師にやられてしまった。かといって、さっきも言ったとおりエイリアンには少々てこずっている。今のところ戦果をあげられないのは俺の能力がないわけでわなく、人員――もとい、悪霊不足。部下は生き残ってるのしかない。手駒が少ないわけだ。
悩みの種はまだある。
非常に不快な事実だが、人間が滅びると悪霊も滅びる。
なぜなら、悪霊というのは人間の強い邪念がなんらかの方法で動物に取り付いて生まれるわけで(俺の場合オセロットだった)、それを永続させるには悪霊になった邪念に更に人間の負の感情を与えることにある。つまり、俺が破壊活動とかをして、人間を殺したりして人間が悲しめば悲しむほど俺の寿命が延びるわけで……やっぱり多少は人間が必要なんだな。うん。

そしてもう1つ、自分を生んだ人間の負の感情が無くなること。別に、死んでも想いは残る。やっかいなのは魔術だ。魔術にはどうもそれをなくす力があるらしい。
強力な魔法で想い――つまり俺の寿命だな――をねじ伏せれば俺は消える。
もっとも、命を代償にするからこの術を扱う魔術師がいないんだけどな。
また、魔術師は俺たちが人間界にいるときのみ、悪霊を召喚することが出来る。――悪霊の名前と悪霊を作った人物がわかれば、俺らを手駒にすることも出来る。強力な魔法なんぞやつらが使わなくても、負の感情を消されそうになれば悪霊の中の元の人間の醜い想いが反応するんだ。消えたくない一心で、血が動いちまう。――人間って言うのは俺らを生んだだけあるよ、まったくしぶといやつらだ。まぁ、確か召喚して手駒にするのにもよほど代償があった気がする。
……こんな風にこの世は成り立ってるわけ。
馬鹿な人間社会はもうすぐジ・エンド。
そのうち人は悪霊のためだけの存在になる。霊長類ヒト科を支配するのはどんな気分だろう。
エイリアンの住む『死界』、俺の住む『魔界』、そして人間界とも呼ばれる『生界』――この世界でのあらかたの事情はおわかりいただけただろうか。
だいぶ話が長くなったな。……俺も一応総指揮官なんでね。これから重大任務なわけよ……ハァ。





太陽の光が木漏れ日となって窓から差し込む。
窓際のベッドに降り注ぐ陽光で、少女は目を覚ました。9月とはいえ、まだ暑い。
星の光も好きだが、やはり朝のことを考えると薄カーテンをしめておくべきだった――
そんなことを思いながら、ベビードールから半袖Tシャツとショートパンツに着替え、階段を急ぎ足で駆け下りる。
リビングでは、少女の兄がピザトーストを食べている。
2階で両親がまだ熟睡していたのを知っているから、少女も自分で朝食を用意することにした。
「おはよう、ビビ。父さんたち、まだ寝てる? 」
少女の兄、プトレマイオスが言った。
ビビは頷く。
「まだ寝てる。またどっか掘り返しに行くの? 」
トーストにケチャップとハム、チーズ、コーン――材料は全てプトレマイオスが出しっ放しにしておいたものだった――を乗せながら、いつも通りの会話。
「人聞きの悪いこと言わないでくれ」
「でも、お母さんたちに言えないんでしょ」
プトレマイオスは、存在しない『魔術』について調べていた。
「内緒で古代の魔術師について調べるなんて、どうかしてる」
「それが……もうすぐ世界が滅びるかもしれない」
そう聞いて、ビビはくすくすと笑う。
つられてプトレマイオスもけらけらと笑う。
「はは……それに打ち勝つには、魔術ぐらいしかないからな」
「いつも冗談ばっかり……『魔術』はね、古代の科学文明で、もうとっくに現世にもあるの」
「さぁ、どうだかな? 歴史では違っただろ」
プトレマイオスは19歳で、ビビが12歳。
年の離れた兄というよりは、若い父親のような存在だった。
無口なプトレマイオスだったが、ビビとだけは時々会話をする。
「それじゃあ、行ってくる」
ビビが焼き上がったピザトーストと、オレンジジュースをテーブルにコトン、とおくと、そう言って彼は家を出た。

朝6時30分、通学に30分とかからない大学へ行くにはまだ早い時間だと、ビビは思う。
しまりかけたドアから朝の風が吹く。
閑静で落ち着いた民家や公共施設が立ち並ぶのどかな町で、小鳥のさえずりくらいしか聞こえない、なんとも爽やかな朝だった。
少し暑かったので、ビビはキッチンの窓を開けた。
椅子に座り、まずオレンジジュースを一口飲む。
朝はいつもこの『無農薬オレンジジュース100%』を愛飲している。
近所の農家で作っている、濃縮還元でない100%オレンジジュースだ。
ビビの住むこの町は、中くらいの港町だが、農家もいくつかある。
この町と隣の町とを隔てる山のふもとに農家が何軒かある。
若干遠いし、商品は高い。それでも、ビビは農家までジュースを買いに行っていた。
もちろん港は活気に溢れた小都市で、濃縮還元のオレンジジュースならば様々な種類があったのだけれど、今は港にあまり近づきたくなかった。

港には度々海賊船が止まることがある。
今、ビビの町に停泊している海賊船は、決して住民を攻撃しなかったが、貿易船と鉢合わせるとたちまち海上銃激戦をはじめるのだった。
住民に被害を与えないように大砲を使わないという海賊団によるポリシーらしいが、かえって流れ弾が危険だという。
そしてなにより、その海賊団が魔術に関わっているという。
(たぶん、プトレマイオスもそこで色々探ってるんだよね……)
トーストをほおばり、ため息をつく。
いつも朝早くからふらりとどこかへ行っては魔術について調べているプトレマイオス。
もし、海賊に目を付けられたらどうするのだろう――
嫌な気分をまぎらわすため、お気に入りの曲を小さくBGMにする。
そしてさらにためいきをもうひとつ。
(魔術なんて、あるわけないのに――)

昔、この国には魔術があったと言われている。
しかし、それはきっと伝説か何かに過ぎない。魔術なんていうものはありえない。
あったとして、古代に科学文明が発達していただけだ――と、ビビは思っていた。
プトレマイオスが調べ始めてみてから、ビビは魔術について考えてみたけれど杖を持ち呪文を唱えたところで何かが動いたり、箒にまたがった人が飛ぶというのはありえない――というのがもっぱらの考えだった。
『魔術』は、紀元後2000年前後、『アース』で生まれた。魔術はアースの宇宙局から、イリス星のこのトリクス国の宇宙局を経由して伝わり、当時の最大都市リベア――この町だ――を中心に広がっていった。人と人との戦争に使われたと言う。はるか離れたこの土地の宇宙局にアクセスできたのは、アースの魔術の高度をそのまま表しているらしい。
つまり、リベアというこの町はイリス星でのいくつもの戦いにおいて使用された魔術の発信地ということになる。
そして、その『魔術』は魔術師にはなれなかったものの、魔術を護ることを志す『リベアの守人』により、数々の戦乱で魔術師が滅びた後も伝えられていったと言われたが、魔術師が絶え、戦乱により文明が破壊され、町の復興時にはトリクスの首都がドルドーにうつっていたし、人々の間ではもとから魔術など存在しなかったという者も増えてきた。

ビビは、魔術が嫌いだ。
魔術は使い手を選ぶ。選ばれた使い手は魔術で戦争をした。
選ばれない、無関係で無力な民を次々と殺した。
けれど、そんな恐ろしい力が守人により今まで残っているのなら今のこの平和なトリクスはないはずだ。銀行強盗や、海上銃激戦などの事件は確かにあるが、一瞬の爆発にして何万人の人が黒焦げになるようなかつての魔術師たちが起こしたような事件はなにひとつない。
そして、今では魔術はビビにとって『元から存在しないに等しい存在』だ。
戦記に記されているとはいえ、それが『魔術』だとは限らない。おそらくそれは戦乱で各国々が破滅への一途を辿る前までに栄えていた、科学文明。
魔術という名の、科学文明が存在していた。
魔術師と言うのは科学者たちのことで、人々が思う魔術のようなおそろしいものが、今も存在するわけがない。今、トリクスには素晴らしい科学技術がある。それこそ現世に伝わりし魔術だ――と、ビビだけではなく、なぜか魔術を歴史で教える教育の裏で、ほとんどの人がそう思っていた。口にこそ出さなかったが。






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Last updated  May 15, 2005 12:09:54 AM
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