mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2007年05月19日
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真っ黒な世界なのか、真っ白な世界なのか、いやそれともそもそも色など存在しない世界なのか。
アルテミスの意識は既に自分の存在すら忘れるほどとなっていた。
そのアルテミスを再び呼び戻したのは赤い不思議なオーラであった。
それは凄く細い糸のよう、しかし切れる事のない針金のようにアルテミスに絡み付いていた。
意識を時の流れの中に取り戻した後、アルテミスの中に不思議な声が脳の中に響き渡る。

『un grand vent soufflera, quand un esprit mauvais rouge se réveille』


『Un vent appelle un chevalier, et un chevalier sera vêtu dans un vent et aidera une flamme rouge』


『Le vent du futur agitera une flamme rouge et scellera un esprit mauvais rouge』


_何?

_何処かで聞いたことがある気がする。

_アルテミス、聞こえますか?

_ええ。

_それは我等「守人達」に伝わる古き伝承の一説です。
_しかし、このような次元を超えて届くとは
_あなた達の力には驚かされます。

_なんて言ってるの?
_言葉が全然わからなくて。

_意味はこんな感じです。

「赤い悪魔が目覚める時、大いなる風が吹くでしょう」
「風は騎士を呼び、騎士は風を纏い、赤い炎を助けるでしょう」


_我々の守人達は、六つの石の地上界での守護者です。
_そして対になる六人の悪魔が地下界より現れた時、必ず天上界より使者が現れ
_救いがあるという都合のいい予言があるのです。
_殆どは人々を統治するための作り話と思われてきましたが・・・

_天上界からの使者かぁ、なんか凄い人の扱いになってるな


この不思議な空間にいて、過去への旅や自らが人でない物になった経験さえ時折、他人の事に
感じてしまうのだ。

_うぅうっ

_どうしたのです?

_なんだか胸が苦しいの。
_胸の奥から力が抜けていくよう。
_いや、どちらかと言えば力が何処かへ向かって溢れ出る感じ。

アルテミスに繋がった赤いオーラが先ほどより更に強く光りだす。
その光はやがて色のない世界でアルテミスの形を抜き取るようにアルテミスの全身を包む。
苦しむアルテミスの鎧の中心部分、白い肌が丁度半分程露出した胸の谷間から一本の赤い
オーラが底のない井戸の奥へと吸い込まれるように色のない世界への果てへ向かって伸びていた。

『existence plus sombre que noir de jais』
(漆黒より暗き者)

_また不思議な声が聞こえる。

_こ、これは詠唱呪文。
_誰かが契約の詠唱を唱えています。
_しかも、これは赤の王、すなわちレッドストーンとの契約呪文。
_これを地上界で唱えるなんて。

_凄いやつなの?

_「メテオ」なんですが通常の魔導師が使う物とはまったくの別物です。
_レッドストーンの力を無理やり完全解放する。
_かつてエリプトの国を一夜にして地図から消し去ったと言われる
_別名「The flame of God(神の炎)」最強最悪の禁呪です。
_いったい誰が?

_普通は使えないの?

_この呪文はかつて炎の守人が封印した禁呪です。
_使えるものは炎の守人の長か・・・適正者のみです。

_じゃ多分トリーシャね。
_この気はきっと彼女よ。
_彼女の悲しい気持ちが伝わってくるもの。


『existence plus rouge qu'effusion de sang』
(流血より赤き者)

_うん呼んでる。
_彼女が私を呼んでる。

アルテミスが赤い糸に導かれ、色のない世界の先に僅かな光を見つけた時、急に先ほどまで
聞こえた呪文が途絶えた。しかも、アルテミスから出ていた赤いオーラも力なく消えていた。
何故だかアルテミスには判らなかったが既に向かうべき方向を見つけたアルテミスは先ほどまで
あった赤いオーラをたどる事で自分が向かうべき場所にたどり着くと確信していたアルテミスは
いつの間にか自由となった体を意識の力で推し進めていた。

「ダメー!」

_な、なんだ!

「そっちはダメ!」
「お願いだから、彼方が向かうべき場所はそこじゃない」
「私の所へ、お願い私の所へ」

新たな不思議な声に吸い寄せられるかのようにアルテミスは再び光ある世界へ吸い寄せられていった。

赤石物語
(Blackworld and Redstonestory)

~古都の南風 傭兵の詩~



『existence plus sombre que noir de jais』
(漆黒より暗き者)
『existence plus rouge qu'effusion de sang』
(流血より赤き者)


ゆっくりと、篭るような声で呪文を唱えるトリーシャをルジェと雪音が必死に止めようと試みるが
トリーシャから溢れ出す赤いオーラにより近づく事さえ出来ずにいた。

「くっ、このままではまずい」ルジェが近づく事も出来ないもどかしさを愚痴る。

「何とかして止めないと。何とかして」雪音も同様に表情を歪める。

赤いオーラに向かい足を進める二人の足は圧力に押され上がらない。体を支えるので精一杯の足が
オーラの力に押され、大理石で作られた頑丈な床にミシミシ音を立てながら亀裂を作る。


『Une personne des six grands rois loin oubliée par les gens』
(人々に忘れ去られし、偉大なる6人の王が一人)


トリーシャの差し出す右手の前方が空間毎、何者かにつねられたかのように湾曲しだす。
そしてその中心部分から光の球体が姿を現し始めた。

「凄い熱量だな。この時点でゆうに通常のメテオの倍のオーラを感じる」

シトンが地面に剣を付きたて呪文の圧力に耐えながら感嘆の声を上げる。
マシン・インターは既に言葉を失い、呆然を口を開けその圧力に体ごと壁に打ち付けられていた。


『Il promet le nom de tu』
(その汝の名に誓わん)


球体は大きさを増し、トリーシャは右手を支えるように左手も球体の前に差し出し、掌を大きく開く。
トリーシャの足元には不思議な文字か文様か判別が付かない物が白い光を放ち、魔方陣を形成して行く。
膨張するオーラは部屋全体を内側から圧迫し、壁や天井も崩れだし落ちた欠片は紙くずのように舞い上がる。
シトンを支える剣も遂に力尽き小さな音を合図に亀裂が入り、その直後には刀身の中程から二つに折れ
シトンは体を宙に放り投げられ、そのまま一回転し壁へ逆さに貼り付けられた。

「よう旦那、今度はもっといい剣を買いなよ」インターが軽口を言う。

「ああ、考えておこう。生き残れたらな」

同様にルジェが大きな音を立て、まるで十字架に磔られたようにシトンの隣に打ち付けられる。
雪音は転がるようにルジェの真下に横たわる。
皆が一様に自由を奪われ、それに対抗するように必死の形相で体全体を襲う圧迫感と戦っていた。

「ダメ、もう詠唱が終る」ルジェが悲痛の叫びを上げる。

「だ、誰か、トリーシャを止めて」雪音が床に張り付きながら涙を流す。


『Moi et toi ruinerons toutes les personnes folles qui s'opposent!』
(我と汝の力をもって我らが前に立ち塞がりし愚かな全ての者に等しく滅びを与えん!)


遂にトリーシャの詠唱が終り、床の魔方陣から一斉に光のカーテンが天井へと昇り、トリーシャを囲む。
前方に伸びた両腕の先の球体はその場に押し留められる事を拒絶するかのように激しく輝き、揺れている。
トリーシャの身体からは激しく渦巻く赤いオーラに溢れ、その力によって床から少し浮遊した状態である。
その背後には炎を纏う不死鳥の幻影が陽炎のように現れている。


『Meteo・・・うぅぐぅ』


今まさに呪文が放たれようとした時であった。赤いオーラは吸い込まれるかのように壁に張り付く戦士達
の直ぐ隣の扉の方へと集まり、呪文を放つ寸前のトリーシャは黄色い光に自由を奪われていた。
その扉の奥の暗闇から、ゆっくりとした足取りでザードフィルが現れた。
そして高らかと右手に赤い宝玉のついた首飾りを持っていた。
その宝玉に物凄い勢いで室内に満ちた、赤いオーラが吸い込まれていく。

「なんとか間に合ったな」

ザードフィルが言葉を発すると同時にトリーシャは前のめりに床に崩れ落ちた。

「お姉さま!」「トリーシャ!」

雪音とルジェがトリーシャに駆け寄る。

「大丈夫だろう。急激な力の解放と消失で気を失っているだけだ」
「しかし、何があった?レッドストーンが急激に反応し、強烈なオーラを感じやってきたのだが」

「シトンとマシン・インターの戦いの最中にお姉さまが突然現れて、例の一節を唱えた後にメテオを・・・」

ルジェが答える。

「守人達の伝承か・・・」
「花火、トリーシャ、メイヴィ、適正者が多く集まっている。レッドストーンも異常な反応を示した」
「しかし、予定外にレッドストーンを使ってしまった」
「そうそう思い通りにはいかんな」

一人納得顔のザードフィルは再び皆に背を向け部屋を去ろうとする。
その手に持つ赤い宝石には僅かに亀裂が入っていた。

「インターの処遇は?」シトンが問う。

「彼も大切な祭りの参加者だ、頬って置け」

そっけなく言い捨てザードフィルは扉の向こうの闇へと溶けていった。
その足取りがほんの少しだけ重い事を誰もが見逃していた事に気づかなかった。

<あとがき>

まぁ少し頑張って更新しましたb
今回もまた少しだけオフランス語がw
訳も言葉も適当なのは仕様ですし、間違っているかもですがそこはスルーでお願いします。

因みに、前回言ったパ○リの元ネタは

黄昏よりも昏き存在
血の流れより赤き存在
時の流れに埋れし偉大なる汝の名において我ここに闇に誓わん
我らが前に立ち塞がりし全ての愚かなる者に我と汝が力以て等しく滅びを与えんことを

です。(まぁ有名な奴ですね。赤目の王との契約呪文だったなぁと思い出して使いました)

アレンジと翻訳が無知な私には苦労でした><;
フランス語ってちょっとカッコイイかなと思ったんですが・・・どう?どう?





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最終更新日  2007年05月19日 17時21分16秒
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