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2007.01.29
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カテゴリ: 音楽
先週土曜日、ピアニスト、指揮者でもあるダニエル・バレンボイムによるベートーヴェン・ピアノ・ソナタ第29番ハンマークラヴィーア第4楽章の公開レッスンをBSで見た。マスタークラス第3回目。

第29番はベートヴェンが書いた4楽章ピアノソナタ(全10曲)の最後となる大曲で、後に続く最後の3曲とは対照的に壮大で空間的な巨大さが特徴的な難曲。演奏は現在でも非常に困難なものとされ、多くのピアニストにとって“壁のような存在”と言われる。

第4楽章は幻想的な序奏Largoに始まり、Alligro risolutoの難解な3声のフーガ、コーダから構成される。途中フーガから部屋に入ってきて聞いていた母は「バッハ?」「バッハ?」と連呼して私に尋ねてきた。バッハより難解なフーガで受講生の演奏がロマン派がかっていたので、なおさら「バッハ」ではないけど一体何??と疑問だったのだろう。よくここまでベートヴェンもやってくれたものだという程、ピアノの持つ表現力の可能性を極限までに追求した作品で、当時のピアノ,ピアニストには演奏不可能だったと言われていたようだ。でもベートヴェンは「50年も経てば人も弾く」と芸術性のために考えうるすべてを駆使して作曲した。実際、作曲後20数年でクララ・シューマン、リストによってレパトーリー化され、各地で演奏されたようだ。

リストが超絶技巧であることは彼の作曲からもよくわかるけれど、クララ・シューマンも女性ながらハイ・テクの持ち主であったことを、リストがバイオリンの超絶技巧のパガニーニのようになりたいとパガニーニに弟子入りし、パガニーニの練習曲の中の「ラ・カンパネラ」をクララに送ったとされたこととあわせて考えても、強く印象づけられるエピソードだ。

弾くだけでもたいへんなこの難曲を受講生はよくここまで弾くものだと思いつつも、いったいバレンボイムは何を教えるのだろう?と興味があった。コメントはさすがにピアニストというより指揮者。テンポのこと、質問者も言っていたがfragmentのように関連性がないように見える構成が和声進行とテンポの解釈で意味のあるつながりになり説得力がある演奏になり、ベートヴェンの本質が感じられる演奏になるものだと感じさせられた。楽章毎のテンポの違いや調性もなんらかの関連があり、それをどう解釈するか考えることで一作品として構成を説得力あるものとして表現できるか否かを左右する。

試験にベートヴェンを持っていくと”耳にたこ”というほどまずテンポのことを言われる。テンポキープできないことは100も承知と思い”馬の耳に念仏”状態だったけれど、ある指揮者のある曲を聴いた時に、テンポの違いがこれほど曲の説得力の違いに結びつくものかと思ったことがある。ベートヴェンを説得力をもって表現できるテンポがあると。でも弾く作業に気がとられ全体を客観的に聞きつつ大きく構成をコントロールするのは難しいことだ。難曲ならなおさらのこと、指のコントロールで精一杯。私には難しい。こんな難曲間違っても弾くことはないだろうけど。。

バレンボイムは、中村紘子さんの本にもあったように「幼少で天才児と言われたか?ユダヤ系か?スラブ系か?」(ある有名な先生が自分の弟子にこの要素にあてはまる生徒しかとらなかったとか)にあてはまり、両親はロシア出身のユダヤ系移民で7才で公開演奏会を開いている。アルゼンチン出身で5才で母親にピアノの手ほどきを受け、その後は父に師事し両親以外にはピアノの指導は受けていないらしい。2度結婚していて最初は、あのチェリストのジャクリーヌ・デュ・プレ。才能があったにもかかわらず病気で悲劇的な終わりをとげた。映画がある。2度目は、あのギドン・クレーメルの前妻でユダヤ系ピアニスト、エレーナ・バシュキロフで彼女の父は高名なピアノ教授、私も好きなフリードリッヒ・グルダの息子リコの師でもある。

バレンボイムがイスラエルでワーグナー作品を指揮して、国民的反発を買った一件は有名である。しかしながらアラブ人とユダヤ人の混成オーケストラが結成された際、指揮者選びをめぐって楽団員が糾合した時、アラブ側を納得させるために担ぎ出されたのが、ほかならぬバレンボイムであったらしい。

ピアニストも最終的には指揮者のもとに勉強に行くと言われる。また、ピアニストから指揮者になっていった人は、アシュケナージ、クリストフ・エッシャンバッハ、チョン・ミュンフなど珍しくない。一人より多くの人とオケで主に音楽を作り上げていく方に興味が向くのは音楽家として当然の道のような気がする。

前2回を見逃してしまったのは残念。再放送があったら是非見たいものだ。






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最終更新日  2007.01.30 00:26:03
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