【送料無料】 三陸物語 被災地で生きる人びとの記録 / 萩尾信也 【単行本】
今年を振り返るに当たって、誰もがはずすことができないのが、三月の震災だろう。
この本の趣旨を一言で紹介するなら「被災地には人の数だけ生と死が存在し、それが織りなす数多(あまた)の『物語』があった」-----著者が、あとがきに書いている一文である。
過酷である。九死に一生を得て、その後避難所でけが人の看護の手伝いをする高校生の女の子の話など、この年の女の子に課せられた荷物の重さと、それをしっかり自分の体で背負っているたくましさに、圧倒された。
親への思い、子への思い、奇跡のような話、聴覚障害の方、視覚障害の方々の、理解されないことによっておきるご苦労...、限りなく物語が存在する。
数々の物語に心を奪われる。一方で、この本を読んでの感想は?と聞かれたら、「そこ?」と言われそうだけど、この著者、「そこまで好きなの?この仕事が」ということ。
地震がおさまるとすぐに、コンビニで電池や着替えを買い、新聞社に飛んで戻り「現場に行かせて欲しい」と上司に頼み込んだという。若くはない、ベテランの記者だ。災害の現場にとどまって半年間取材を重ねる。
たくさんの人に会う。手助けもする。一緒にお酒を飲む。東京に戻ってまた、再び現地へ。つい先日また、毎日新聞に現場から連載を書いていた。
取材をしなければ、もしかしたら、その人の胸の中にとどまっていた物語かもしれない。それに耳を傾けること、書くこと、読まれることで、その物語は歩き出す。
仙台在住の私の友人にも、この1年、本人にも周りの人たちにも予想もつかない物語が展開した。
この年末、喪中はがきではなく、長い長い手紙をくれた。その物語は2月に始まっていた。思えばあのとき...ということが、あるものだ。そして、いつ終わるともしれない物語。
でも、彼女は地震のせいにも人のせいにもせず、自分自身をしっかり生きている。いい言葉が見つからないけれど、人はすごいなと思う。
著者は、高校生まで釜石に住んでいたそうで、会話や日常の描写が細やかで、安心して読めた。この土地への深い思いがあるのだろう、それが感じられた。それも、この本の魅力だ。
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