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ささき みゆう

ささき みゆう

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April 11, 2008
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テーマ: 愛しき人へ(899)
カテゴリ: μ ,miss you,kiss you


『もう二度と寂しくないよ』と言いたくて 言えずに交わす 涙色キス   







3~4時間くらい、ドライブしたでしょうか。

見慣れた景色が見えてきて、北草間周辺に、帰ってきた。



『この辺に100円パーキングあるかなぁ』

『ある!うちからいちばん近いトコ!』



そこに、車を停めて、

私の家まで、手をつないで、歩く。


あなたと手をつなぐのが、すごーくしあわせ。



なんだか、世界中のしあわせ、全部独り占めした気になるの。




大好き。

ともあき、大好きだよ。




いつものように、テレビをつける。

で、他愛ないおしゃべりをするんだ。

きっとね、他の人が聞いたら、くだらない話ばっかりなの。

だけど、冗談ばっかり言って、ともあきが楽しそうにするのを見るのが、

これまた、私のしあわせだったりするの。



『…岩手県○○市で起きた、連続強盗事件で………』


今ちょうど、“ 報道サテライト・サタデー ”の時間。




『あ、いわて

 ねぇねぇ、龍泉洞、ほんっとにすごいんだね…

 こないだWeb検索しちゃった』


そうなの。

岩手県はね、ともあきの出身地。



初めてお昼に一緒に行ったとき、教えてもらったよね。


私の、テレビの近くにおかれたノートPCから、

ともあきが、検索をかけてた。

画面いっぱいに、岩手県の地図が表示された。



『この辺なんだよ、住んでたとこ。』

『そうなんだ!』

『ほら、結構近いでしょう?龍泉洞』

『あ~…本当だ…』

拡大された岩手県の地図を、

ともあきは、ドラッグしてするするすると動かした。


『ここ。この辺に住んでたんだ』

『わ!今の地図でも、まだ家が残ってる!!』

『うん……もうね、今は違う人が住んでるよ。』

『知ってるの?』

『一度……当時の近所の、両親と親交が深かった人達に、挨拶しに行ったんだ』

『……そうなの……』


…空き地っぽいところにカーソルを持っていって、ともあきが言った。

『…この辺で、よくひとりで遊んでたよ』

『……え……』

『なかなか両親も遊んでくれなかったしねー………』

『働いてたんだっ…け…』

『うん。小さい洋食屋をやってた。』



ともあきは、まるでその場所にいるみたいに、

私に、昔住んでた場所の話をしてくれた。

『で、この辺がね、親戚が住んでたとこなんだ』

『そうなんだ………』



どうしよ、胸が、きゅってしめつけられて……止まらない。



『なぜ…?

 なぜレストランだったのに…転勤じゃないのに…横浜へ来たの…?』



『……なかなかね、お店が…うまく行かなくなっちゃったんだ……。

 売り上げも、下がる一方だったしね………。 


 父方の親戚が、横浜にいて、会社を経営してたんだ。

 そこで…父が働かせてもらえることになって…

 引っ越すことになったんだ』


せつなそうな笑みを浮かべて、あなたが言った。



私の胸の痛みが、ピークに達した。



ともあき、この住んでた街、好きだったんじゃないのかな。

ご両親のことも、すごく大好きだったんじゃないのかな。

そんな気がしたから。

すごく懐かしむように、大切に、優しい目をして話すともあき。

そして、忙しい両親。

この場所を離れなくてはならなかったとき。

ひとりで遊んでいたりした時期。



……どうしようもなく、せつなくなった。



気がつくと、私の瞳から、涙がぽろぽろこぼれてた。



ねぇ、もう寂しくないよ。ずっと側にいるから。

そう言いたかった。

でも、そう言っていいのは、私じゃないんだ。

それが、たまらなく悲しいよ。


たくさん、寂しい思い、したんだね。

悲しい思い、したんだね。



懐かしい故郷を、優しい目で案内してくれるともあきが、

いとしくて、いとしくて………たまらないよ。



マウスを動かす手と、反対側の…ともあきの手を、そっとにぎった。



涙だけ、ぽろぽろこぼれる。




………私だったら………

強く思った。




………ご両親の最期の時間、出来るだけ多く、ともあきと過ごせるようにしたのに……!!




……ぎゅ……ただ強く、あなたの手を握る。


言えないよ。そんなこと。

言っちゃだめなんだよ。



『…ここにはね、“浄土ヶ浜”っていう、綺麗な海岸があるんだ……

 小さな頃、両親に何度か、連れられて行ったんだよ。

 ここに行ったときの写真とかが残ってる』



ともあき。


ともあき。


何度呼んでも、足りなくなりそうだった。


ともあき………




『どうした?』

『……ううん……せつなくなっちゃって………』


届くかな、わからない、それでも、言葉にしたい………



『もう、寂しくないから、ね?

 私、いるから……小さな時の分の寂しさも。私にわけて…』



ふ……っと、穏やかな微笑みを浮かべて、

あなたが、強く私を抱きしめて、そっとくちびるを重ねた。








続きが気になったら、押してみて?

たくさんの人に読んでもらえて、嬉しいな…。ありがと。

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Last updated  April 19, 2008 08:28:32 PM


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