misty247

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2005.10.30
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現地に着くと、山の端から夏空のように入道雲が湧き上がり、陽射しは深い山間を隈なく照らしてまだ宙に余るほどに強く、十月初旬から一月戻ったぐらいの菊日和であった。魔法瓶に注ぐお茶をホットにするかアイスにするかで迷うこの時期、高低差1000m近くの登りに備えての冷やしたお茶と、頂で山風に吹かれて急速に体温を奪われるのに備えての温かいお茶の両方を持ってきたのだが、青天を衝くように聳える薊岳の山巓を見上げると、両方ともが要りそうだと確認できたので幾らか荷が軽くなった気がした。
 登山口にあたる笹野神社の石垣に並んで秋海棠が咲いていた。祭りのときに町内に巡らされる提灯さながらに、秋海棠は秋祭りの灯火を装って道端の野草を飾っていた。神社の横手から山に入り込む。最初は植林地帯をひたすら登る。紅葉には早いようで山林は濃い緑に包まれていた。歩いていると木の下陰で苔むす倒木の木口につく黄や橙の色鮮やかな茸がよく目についた。
 道標は大鏡池を指し示す。大鏡池は笹野神社と薊岳との間にある差し渡し50mにも満たない小さな池である。ガイドブックによれば野生の鹿が時折水を飲みに寄るとか。池よりも鹿に出会える僅かな可能性を楽しみに、池を見落とさないように注意深く歩いた。
 かなり高度を上げて空が少し近くなった感じがし始めた頃、ずっと大鏡池を案内していた道標がその地点から薊岳を指し示したので、おやっと思い辺りを見回すと、土手のような小高い盛り上がりが疎林の奥に認められた。果たしてあの向こう側が大鏡池か。
 道から離れ枯葉の堆積を踏み越えて進むと眼前に小さな池が現れた。辺に小さな祠が建っている。麓の神社の雨乞いの神池、大鏡池だ。ここでの標高は1000mを超えており、近畿圏でこの高さにある池は数泓しかないという。取り囲む樹林に梳られた日の光が縞合に射し、水鏡に降った明暗はそのまま音と時とを道連れに静かに解け合って沈んでいくかに思われた。端まで降りていき、水面に高く翳した枝から垂れる木根が熱帯風の林相を呈しているのを眺めながら、暫し鹿の訪れを待ってみた。しかし、野鳥の啄んだ木の実が、無何有の水底を窺わせる蒼古たる池に落ちていく音が時折聞かれるだけで、辺りはいつまでもひっそりかんと静まり返っていた。 <つづく>

薊岳_大鏡池
△ 鹿の訪れを待った大鏡池の辺から





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Last updated  2006.05.07 00:57:06
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