misty247

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2008.12.06
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 <前日の続きです>



遭難4:枝尾根から山深い奥地に迷い込んで八方塞の窮地に

 草津温泉の北に位置する岩菅山は標高2295mの山です。西側は志賀高原スキー場があり人家もたくさんあります。しかし東側は原始の色濃い深い渓で、踏み込めるのは沢登りの技術をもった限られた者、それも数泊の行程で魚野川を遡行してようやく辿り着ける奥地です。
 日帰り単独行で岩菅山に登ろうとしたUさんは、大阪に住む59歳の男性。まだ稜線に残雪の多いゴールデンウィークのことでした。西側の一ノ瀬スキー場からアライタ沢を登って稜線のノッキリに出たときは15時近くでした。朝の出発が遅かったようです。帰りの夜行バスの予約を入れていることもあるし、Uさんは岩菅山のピークを踏むことを諦めて下山することに決めました。ただし往路を戻るのはつまらないので、寺小屋峰経由で降りようと稜線を南下しました。
 3時間歩いて、もう寺小屋峰にとっくに着いていい頃なのに着きません。実は気付かず枝尾根に入り込んでいたのです。急ぐ気持ちから、がむしゃらに降りているうちに辺りは暗くなってしまいました。時計は19時20分。道に迷ったことを悟りビバークしましたが、寒さから一睡もできませんでした。翌朝4時半から、稜線へ戻ることを目指して上へ上へと道なき斜面を登りました。ところが障害物に阻まれて遅々として進まず、登っては降りての繰り返しで、結局14時間歩き続けて、残雪のある高さまでも戻れずじまいに2晩目のビバークを迎えました。
 その翌日、少し登ると雪のスロープに出ました。しかし、何度かスリップして危険を感じたUさんは、登ることを諦めて下ることにしました。スロープは雪渓になり沢になり、沢は沢を合わせて大きな沢になりました。この日も10時間歩き続けて日暮れの18時。3晩目のビバークに。
 この沢が魚野川源流付近、冒頭で述べた東側の山深いところの真っ只中でした。道なき山中、ちょっとやそっと闇雲に歩いたぐらいではどこにも出られません。Uさんは結局、釣りを兼ねて遡行してきたパーティに助けられるまで、実に17日間、一帯を彷徨ったのでした。
 その間のサバイバルの希望と絶望。そして偶然助けることになった側の驚きが詳しく書かれてあります。



遭難5:人跡未踏の沢で重傷を負って動けなくなった

 渓流釣りを目的に、深い沢へひとりで入り込むようになったSさんは、東京に住む50歳の男性。
 ある年の盆の8月9日、大井川源流の仁田沢へ、テントを担いで単独3泊程度の釣り山行を計画しました。仁田沢は畑薙湖に注ぎ込む沢のひとつで、林道の通っている湖東の反対にあり、さらに注ぎ口の両側は尾根が張り出していて、容易に入れない沢でした。それだけに釣果が期待されたのです。

 そしてそこでSさんの記憶は途切れているのです。
 次に目覚めたときは河原に横たわっていました。服は血まみれ。すでに血が乾いているところから少なくとも30分は意識を失っていたようでした。右足は骨の露出する骨折で、右手首と左の掌にひどい裂傷を負い、額の皮はめくりかえっていました。
 あまりの出血量に最初は動かないほうがよいと怯んでしまいましたが、落ち着いてくると、人の来ない沢を狙ってきただけに、ここで待っていても救助の期待できないことは、自分がよく知っていました。
 湖畔まで出れば、対岸の林道を通る車に見つけてもらえるかもしれない。また湖面をゆくボートがあるかもしれない。そう考えて、後ろ向きに座った姿勢をとり移動することにしました。重傷を負った部位を数センチ刻みで引き寄せる、気の遠くなるような移動でした。150mを4時間かけて移動し、ようやく対岸が見える位置に達すると、棒切れとタオルで作った旗を振って、ごく稀に通る車に合図を送ろうとしたのでした。
 後日、現地を再訪したSさんは、あそこで気付いてもらうのは無理だと思ったと語られています。関係者しか通れない交通量のごく限られた道で、走る車から1キロ対岸の人に気付いてもらえる可能性のないに等しいことを。
 数日過ぎて、心の支えになったのは、帰宅予定を過ぎても戻らないことによる肉親の捜索願いでした。幸い行く場所は報告していたし、置いたままの車を見つけてくれるはず。14日になれば捜索隊が来る、それを信じてあと数日を生き延びることに努めました。
 執拗にたかるハエ、傷口に湧いた蛆虫、体の痛み、冷え込む沢筋、何度もみる幻覚。さまざまなものと格闘し、地獄の一週間を耐え、16日になってSさんは無事に救助されました。4ヶ月入院し、手術した右足は左より少し短いそうです。



遭難6:いったん迷うと戻る道も見失う複雑な地形の恐ろしさ

 大阪に住む48歳男性のSさんは、お盆休みに吉野から前鬼口までを二泊三日で単独縦走する計画を立てました。修験道の根本道場として名高い大峰山脈の奥駈道です。山上ヶ岳の宿坊と弥山の小屋に泊まる行程でした。
 弥山小屋を出たのが8月13日の朝4時半でした。もし体調が悪かったら天川に下りることも考えていたのですが、その必要はありませんでした。釈迦ヶ岳を予定より35分早い9時25分に過ぎ、前鬼口14時37分のバスに間に合いそうでした。順調に進み、太古ノ辻で主稜線を離れて前鬼へと下りました。
 ところが、少し下った所でSさんは道を間違えてしまいます。涸れ沢の対岸を登り返すのが正規ルートなのに、涸れ沢を下ってしまったのです。
 分岐点では疑いもせずどんどんと下りて、30分も下った頃、おかしいと気付きました。戻ろうと引き返したのですが、沢の出合に出くわした所で自分がどちらから来たのか分からなくなりました。検討をつけて登ったものの、こんな所は通った覚えがないとなって引き返し、また違う沢に入っては登っては降りての繰り返し。樹林で視界がなく地図もコンパスも使えず、自分がどこにいるのかさっぱり分からなくなりました。15時。動き続けでは消耗が激しいと判断し、その日はビバークすることにしました。

 大峰は小さな谷や尾根が幾重にも入り組んで非常に複雑な地形をしているのです。登山者が道に迷って行方不明になり、未だ発見されないケースが何十件もあるのだとか。
 幸い私は、道に迷ったことは何度もありますがビバークしたことはありません。でも、ビバークを覚悟したことは3度ほどあります。大峰・大台で道に迷ったこともありません。大峰で道に迷ってしまったときは、それだけでかなり危険な状況と言えそうです。 沢の出合で自分がどちらから来たか分からない……これはありますね。沢に限らず山道でも。迷ったら戻るのが鉄則ですが、戻る道で迷うのですからこれは恐いです。
 2晩のビバークをして脱出への光明を見出せずにいたSさんは、沢の出合に付けられたプレートを見つけた。人の通る沢であることに安堵し、食料も装備もなかったSさんはそこで待つことに決めました。
 SOSのメモ書きを沢の数箇所において、オタマジャクシを食べながら衰弱していく数日を過ごしました。そして本来の下山日から八日も過ぎた8月21日に、ようやく捜索隊に救助されたのでした。



遭難7:冬山で1時間の休憩中に天候が急変

 滋賀県に住むNさん(53歳男性)は、数日間に及ぶ山行を盆と正月に行うのが毎年の行事となっていました。夏は方々へ出かけましたが、冬はリスクを考えて、通いなれている北アルプスに絞っていました。

 槍岳山荘までは雨と強風にたたられて苦労させられたものの、予定通り2日の14時半に槍岳山荘に着きました。翌日3日は前日までと打って変わって見事な晴天に恵まれました。槍の頂に登り、感動の展望にひたりました。
 好天のあまり山頂に長居して予定より2時間遅くの下山になりました。中崎尾根に張りっぱなしだったテントに戻ったのが13時。槍平小屋まで2時間もあれば降りられるだろうと、そこで休憩を取ることにしました。ところがこの大休止がとんだ裏目に出ます。
 米を炊いて食事をしている1時間のうちに、天候は急変。ガスが立ち込め風は強くなり、ついには猛吹雪となりました。視界が利かないと下山の難しいルートでした。方向を確認できず、下り始めて間もなく道がわからなくなりました。斜面に迷い込むと腰までのラッセルで思うように進めなくなりました。16時頃になってビバークを決意。
 翌朝、天候の回復の祈りむなしく、いぜんとして吹雪。一晩で70cm近くの積雪がありました。結局その日は偵察に出ただけで2晩目のビバーク。次の日は風は少し弱まったものの相変わらずの雪。登頂時テントを張った場所を見つけたので、そこにテントを移しました。また偵察中に下山ルートを確認することができました。
 6日、風がなくなったので槍平への下山を試みました。積雪は2mを超えていて、胸まで埋まる状態でした。6時間苦闘して200m進むのがやっと。グローブの中に雪が入り込んで鈍痛が生じていました。凍傷の初期症状です。
 午後2時になって行動を中止。自力脱出を断念し、救助を待つことにしました。
 雪洞を掘って休むと、テントよりはるかに温かく、その晩はぐっすりと眠れました。夜の気温はマイナス20度近くで、テントは寒さが厳しかったのです。体温を落とさないように注意し、体力を温存し、持久戦を覚悟しました。
 家族の捜索願いが出され、ヘリが飛べるほどに天候が回復したのは、1月の11日。天候の急変からビバークを重ねること8日目。その日ようやく救助ヘリにNさんは無事発見されたのです。凍傷で指を6本失いましたが、これが生きがいとその後も山登りは続けているそうです。








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Last updated  2008.12.07 00:18:23
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