「あなたは、ドアがパタンと閉まると音のする方に頭を向けた。だから、全く普通だと思っていたの。まさか、床の振動や空気の移動を感じて振り向いていたなんて、思いもしなかった」小児科医の誤診もあり、9か月になるまで両親は、赤ちゃんが重度の聴覚障がいであることに気付かなかった。
0才から7才まで、私の人生は穴だらけだった。目に見えたものの記憶しかない。年代のわからない映像を集めたフラッシュバック。この時期は、将来も過去もすべて同じ時空間の上にあった。ママが「昨日なんとかで……と言っても、私には昨日がどこなのか、昨日とはなんのことなのか、わからない。今では、聴覚障がい者の言語は手話というのが通念である。手話通訳のつくTV放送や講演会もある。手話は社会に浸透しているように思われるが、こうなったのはごく最近のことらしい。
ごく小さいうちから手話を習い始めたり、同じ障害の両親を持つ子供たちの場合は、ちょっと状況が違う。彼らのめざましい進歩の様子に、私は呆然としたものだ。7才になるまで手話を知らなかった私は、明らかに遅れていた。まるで、野性児かなにかのようだった。
点字を書く 41 (宛名管理) 2011.09.03
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