その頃、私の頭の中には、ある大きな疑問が常にあった。もし、耳の聞こえる人たちが背中を向けていたら、私はどうやってコミュニケーションをとったらいいんだろう? ということ。顔と顔を突き合わせた状態でないと伝えられないのに、どうしたらいいの?聴覚障がい者は、外観では識別できない。白杖を持たないロービジョンの方も同様だ。そして、とくべつ意識していない限り、普通私たちは、すれ違った人を健常者だと思い込んでいる。
――私を見て。あなたの顔を、目を見せて。そうすればわかるから。
アルフレッドとビルが手話で話し、ビルが父に伝えている。でも、彼らの手の動きは私にはさっぱりわからない。スピーディに複雑に動く手。とにかく驚くべきものだった。私は口をポカンと開けたまま、ふたりの動きに見入っていた。めまぐるしく動く口、指、そして体と顔の表情。なんてきれいなの、なんて魅力的なの!父がラジオで手話のことを知り、さっそくかめもを連れて、手話を使う人に会いに行く。そこで、7才のかもめは、いろんなことに驚く。
何より、私はエマニュエル。ようやく、私も自分が誰であるか、わかったのだ。私。つまりエマニュエル。
生まれた時から、両親に繰り返し名前を呼ばれ、呼ばれればすぐに振り向く習慣がついている人たちには、私のこんな話は想像しがたいことだろう。誕生と同時にアイデンティティが与えられていたのだから。そのことを改めて考える必要もないし、自分自身に問い掛けをしてみることもない。なんの努力もなしに、最初から私、なのだ。
点字を書く 41 (宛名管理) 2011.09.03
点字を書く 40 (出力用テンプレート作成) 2011.08.15 コメント(1)
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