misty247

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2011.06.08
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テーマ: お勧めの本(8172)
カテゴリ: 点字・点訳
 その頃、私の頭の中には、ある大きな疑問が常にあった。もし、耳の聞こえる人たちが背中を向けていたら、私はどうやってコミュニケーションをとったらいいんだろう? ということ。顔と顔を突き合わせた状態でないと伝えられないのに、どうしたらいいの?

 ――私を見て。あなたの顔を、目を見せて。そうすればわかるから。
 聴覚障がい者は、外観では識別できない。白杖を持たないロービジョンの方も同様だ。そして、とくべつ意識していない限り、普通私たちは、すれ違った人を健常者だと思い込んでいる。
 山ですれ違う人に「おはようございます」と挨拶しても、無言だったとき、『なんて無愛想な奴だ』と呆れる。しかし、ちょっと待て。もしかしたら聴覚障がい者だったのかもしれない。
 『障がいのため、できないのかもしれない』と、その可能性を常に念頭に置くことで、相手に優しく、かつ自身もストレスを受けずにすむことに、私は気づいた。
 ぶつかられても、ロービジョンだったのかもしれない。
 レストランでキーキー子供がわめき続けていても、ろうなのかもしれない。
 多くの場合、違うのだろうけど、そう考えると無用に苛立つこともない。
 (これも「大切な教え」の仲間だ)
 アルフレッドとビルが手話で話し、ビルが父に伝えている。でも、彼らの手の動きは私にはさっぱりわからない。スピーディに複雑に動く手。とにかく驚くべきものだった。私は口をポカンと開けたまま、ふたりの動きに見入っていた。めまぐるしく動く口、指、そして体と顔の表情。なんてきれいなの、なんて魅力的なの!
 父がラジオで手話のことを知り、さっそくかめもを連れて、手話を使う人に会いに行く。そこで、7才のかもめは、いろんなことに驚く。

 章のタイトルは『手話が私に”生命(いのち)”をくれた』
 言語を得て、かもめは飛躍的に成長する。
 何より、私はエマニュエル。ようやく、私も自分が誰であるか、わかったのだ。私。つまりエマニュエル。

 生まれた時から、両親に繰り返し名前を呼ばれ、呼ばれればすぐに振り向く習慣がついている人たちには、私のこんな話は想像しがたいことだろう。誕生と同時にアイデンティティが与えられていたのだから。そのことを改めて考える必要もないし、自分自身に問い掛けをしてみることもない。なんの努力もなしに、最初から私、なのだ。
<つづく>





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Last updated  2011.06.08 22:27:49
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