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神坂俊一郎

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Jun 19, 2021
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テーマ: 怪談(48)
カテゴリ: サヴァン症候群
第2話です。

彩は、母が言うように父には感情が無いとは思いませんでした。
「お父さんって、感情が無いというのとはちょっと違うと思うわ。」
美奈子には、夫の一郎は、感情が無いとしか思えませんでした。
「そうかしら。私には感情が無いとしか思えないし、逆にそれで救われているとも思うけど。それでなかったら、毎晩のように殴る蹴るの虐待を繰り返した母親と、普通に接することができたかしら。」
確かにそれは一理ありますし、父が祖母に対して感情を示したという記憶はありませんでした。
「確かにそうね。でも、お父さん、そのサヴァン症候群とやらで、予知した未来は絶対に実現したんでしょう。」
「そのようよ。」
夫が夢で予知した未来は、かなり荒唐無稽なことでも全て実現していました。

「だから、見てしまった未来に関することには、感情を表さなかったんじゃないかしら。」
「うーん、それも言えるかしら。でも、私たちにも感情を示さないでしょう。」
彩、それは違うと思っていました。
「いや、お父さんって、自分の感情を否定していたかもしれないけど、やるべきことはちゃんとした。私たちを責任もって教育し、大学まで出してくれたし、その後も面倒みてくれてる。お母さんだって、十分幸せにしたんじゃないかしら。」
確かに、酒もタバコもかけ事も女遊びもしないばかりか、宝飾品でも毛皮のコートでも、田舎出身の私には縁がなかったものを惜しみなく買ってくれましたから、他人から見れば羨ましい夫なのです。
「それは、そのとおりね。私の理想の条件を全て満たした上に、音楽、美術、一般教養に至るまで、教育もしてくれたわ。」
「そうよ。お母さんは、お父さん光源氏の紫の上だったのよ。」
確かに、彩の言葉は言い得て妙で、夫は私を磨いたし、私のことを、磨くに足るダイヤの原石とも言っていたのです。
「そう。私のことを、ダイヤの原石だとも言ったわね。」
「だから、お母さん、お父さんに不満はないんじゃないの。」
それはそのとおりで、美奈子さん、一郎君にそれほど不満があるわけではありませんでした。

彩、母は気が付きすぎるのであって、普通の男としては、父はむしろましな方だと思っていました。
「それも違うわ。お父さん、男性としてはむしろ気が付く方だと思うわ。」
「えーっ、そうなの。信じられない。」
夫の普通なら気付いても良さそうなことを全く気が付かないことが、いつも夫婦喧嘩の原因になっていました。
「今更聞くけど、お母さんって、他の男の人と付き合ったことあるの。」

彩、それは単純に父と付き合ってからの3か月ぐらいで、母の見かけが大きく変化したせいだと思っていました。
「それも、お父さんが磨いたからでしょう。」
そう言われると否定はできませんでした。
「まあ、そうね。確かにもろ田舎もん丸出しのほっぺの赤い座敷童が、半年ですっきりした美女になってたもんね。お父さんのお陰ではあるわ。」
だから、母はまともに男性と付き合ったことはないのです。
「やっぱり、お父さんとしか付き合ったことないんだ。」
「うーん、2回デートして、私は好みだなと思った男性だったけど、迫られたから断ったらさっさと乗り換えられてショック受けたことならあるわ。」
彩、確かめてみました。
「その人、お父さんより気が付いたかしら。」
そう問われるとノーでした。自分勝手に引きずり回して、挙句の果てにホテルに行こうと迫られただけでしたから。
「気が付いたとは言えなかったわね。自分勝手に引きずり回して迫っただけだったし。」
「だからねえ、お父さんみたいな男の人って、本当に希少なのよ。」
彩の言う通りですが、美奈子はそれなりに、不満はありました。
「お父さんって、気が付かないだけじゃなくって、自分からこうしたいって絶対言わないのよ。それも不満かしら。」
これも贅沢な悩みですし、父からその理由を聞いたことがありましたから、彩は答えました。
「それね。お父さんの3番目の彼女だったかしら。彼女が、いや、高子おばあちゃんもかしら、そしてお母さんも悪いのよ。」
美奈子、義母の高子と一緒にされるのは絶対嫌でした。
「何が悪いのよ。」
「ああ、そうね。私も、聞いたものの最初は信じられなかったんだけど、お母さん見ていて嘘じゃないってわかったことよ。」
「だから、何なのよ。」
「お父さんって、そのサヴァン何とかの予知より、目の前にいる他人の心も読めるのよ。」
美奈子、それは、わかる気がしました。
夫の一郎は、最初から美奈子の望んだとおりにしてくれたのです。
普通なら絶対あり得ないと思うのですが、初めて見かけて半年後、渋谷でのグループ飲み会の後、わざわざ2時間遠回りして当時彼が住んでいた横浜の独身寮とは正反対の方角の葛飾の金町まで送ってくれたのです。
美奈子、そうしてくれたらいいなと思ったら、さらっとしてくれましたし、翌日、清水の舞台から飛び降りるほどの決心で、結婚前提で真面目に付き合ってくださるか、忘れてくださるか、どちらかにしてくださいと手紙を書いたら、あっさりと、結婚前提で付き合いましょうと返事をくれたのですから、これも、確かに望みどおりに動いてくれたわけです。
つまりは、私の心を読めたわけです。
しかし、夫の3番目の彼女との関係がわかりません。
「お父さん、心が読めるのはわかるし、それでやーさんからも恐れられてたんだけど、3番目の彼女って、大学4年の時の優佳さんだったかしら。それがどうしたの。」
「その優佳さん、お父さんが彼女の心を読んで先回りして望みを実現させたら、途端に機嫌が悪くなったんだって。」
美奈子、彼女のことは聞いたことがありました。
「あはは、それ、聞いたことあるわ。でも、私、彼女の気持ちもわからないではないわ。」
「というと。」
「きっとね、こうなったらいいなと思ったことを、あまりにもあっさりと実現させてくれたら、張り合いがないを通り越して、失望に近かったんじゃないかしら。でも、私とどう一緒なのよ。」
「お母さんはね、お父さんがいいことしてくれても、自分の望みとちょっとでも違っていたら不機嫌に怒ったからよ。おばあちゃんに至っては、お父さんが親切でやることにいちいちけちつけたのよ。だから、察してやってあげるのはやめたんだって。」
娘の言葉に、美奈子は、夫の悲惨な過去を一つ思い出しました。
一郎君、両親の離婚調停の間に立ったら、双方から理不尽に恨まれたこともあったのです。
「なるほどね。わかったけど、お母さんとは違うでしょう。」
美奈子はそう思っていましたが、彩は同じようなものだと思いました。
「まあね。お母さんには愛があるから、許されるけどね。」
そう言われて、美奈子は高子のことを思い出しました。
「高子おばあちゃんって、愛のない人だったわ。」
彩は、父から祖父はもっとひどかったと聞いたことがありました。
「お父さんが言うには、常夫おじいちゃんはもっとひどかったんだって。」
義父にあたる常夫のことは、結婚した時には既に高子と離婚していましたし、美奈子も子供たちも一度も会ったことがありませんでした。
「我が家では、お父さんしか会ったことが無い人ね。」
「そうね。おばあちゃんと違って虐待はしなかったけど、会社つぶした後ろくに働かず、息子の名前を騙ってまで借金したり、ひどい人だったようよ。」
彩は、高子おばあちゃんよりもずっとひどいと思っていました。
「いや、ずっと悪いわ。幽霊になって息子のお父さんのこと殺そうとしたんだから。」
一郎君が屋根から落ちて肋骨5本折った真相は、常夫さんの亡霊に引きずり降ろされたのでした。
「実はお父さん、屋根から落ちる前に、一度は常夫おじいちゃんの亡霊を祓ったのよ。」
「えっ、その話は聞いたことない。」
「おじいちゃんの亡霊、京丹波の家から、夢前温泉のホテルまでお父さんについていったのよ。それで、夜中にお父さんの首を絞めたの。お父さん、そんな時は物凄い力を発揮するから、つい、「死ね。」と霊力を発揮して消してしまったんだって。その時は、少し悩んでいたわ。これって、父の霊を殺してしまったことになるのかなあって。」
彩にはよくわからない世界ですが、父は正しいと思いました。
「やられたからやり返しただけでしょ。お父さんって、元々物凄く強いから、自分からは絶対手出さないもん。お兄ちゃんとのデスマッチだって、お兄ちゃんが言うこと聞かないで殴り掛かったから応戦しただけだったし。」
長男の宏大との親子げんかは壮絶で、一度は廊下で取っ組み合いになり、置いてあった缶詰が箱ごとボコボコになったほど物凄いものだったのですが、二人とも超人的に丈夫でしたから、ほとんど無傷で済んでいました。そして、全て一郎が勝っていました。
「でもまあ、大した余裕と言えるのか、亡霊に引きずり降ろされた時、「ああ、父の幽霊まだ消えずに残っていたのか。」ってむしろ安心したんだって。」
その話を聞いた美奈子は、呆れましたが、逆に言えば、夫はそれほどの強さを持っているのです。
「だから、私は余計に思うわ。お父さんって、感情が無いわけじゃあないんだって。」
そう言われると、娘の考えもわかる気はしました。
「まあ、怒りと言うか、強さも感情って言えないこともないか。」
「そうよ。まあ、お父さんの怒りを向けられた人はほとんどいないし、お兄ちゃんとの大げんかも冷静にあしらってたから、感情を表したことはないってお母さんの言い方も間違ってはいないわ。」

続く。

画像は、お庭に咲いているナルコユリ、花菖蒲、エノキアオイです。
ナルコユリは元々自生していた山草、花菖蒲は、どこかから鳥が運んできた種から生えて、エノキアオイは、近所のスーパーで捨てられかかって50円で売られていたものと、それぞれ来歴が違います。









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Last updated  Sep 4, 2021 09:26:57 PM
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Yoko@ Re:ヤマトタケル異聞8(10/04) 記紀とは違うヤマトタケルを興味深く拝読…
Yoko@ Re:ヤマトタケル異聞1(09/21) ずうずうしくリクエストをしたYokoです。 …
Yoko@ Re:ヤマトタケル?2(04/19) 21日のご返信に気が付かず、ご返信せずに…
神坂俊一郎 @ Re[1]:ヤマトタケル?2(04/19) YOKOさんへ アメーバブログも確認したら全…
神坂俊一郎 @ Re[1]:ヤマトタケル?2(04/19) YOKOさんへ 既に発見されたかも知れません…

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