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ここは塾の一室、先程から高2の沙織との古文の勉強が続いている。
「これはぞ、なむ、や、か、こその中の「こそ」で係助詞よね。だから文の終わりが已然形の「あれ」で終わっている・・・それで・・・次の行だけど・・・えーと・・今日のお昼の食事は・・美味しかったよ・・・むにゃむにゃ・・お天気も良くて桜が・・・むにゃむにゃ・・」
-暫し空白-
「え!今、私、変なこと言わなかった?」
「そう言えば、ちょっとそうだったみたいな気がするけど、大丈夫?先生!無理したらあかんよ!」
四月から高
2になったばかりの沙織が心配そうに私の顔を見ながら言う。
「有難う!大丈夫よ。一瞬今自分がどこにいるのか判らなかったわ。でも、もう大丈夫だから・・」
塾の講師たる者がこんなことではいけない。
もっと、気持ちを引き締めなければ・・と思うのだが、それにしてもどうも今夜は眠い・・昨夜は結局 2時半頃まで起きていたし、このところ、用事があまりにも多過ぎるんだわ。
どれかを切り捨てなければいけないと思っても、どれも切り捨てる勇気なんかないし・・
「そう、大丈夫なら良いけど・・きっと、先生疲れてるのね。」
「私ってね。ずっと前、専業主婦だった頃にあまりにも退屈で我慢が出来ず毎日、退屈だ、退屈だと言い続けていたことがあったのよ。それで罰が当ったのかなぁ・・今は忙し過ぎて困っている。まったく人生って自分の思うようには、なかなか上手くいかないものだわ!」
「でも、神様って罰なんかあてるようなひどいことをなさる方では無いといつも先生、言ってるでしょう!」
「それもそうね、きっと、退屈しないように神様が沢山仕事を与えて下さったのだから感謝しないといけないわね。」
「そうよ、私だって以前はよく眠くなって先生を困らせたことあったし・・」
沙織とこんな風に一緒に勉強するようになって早いもので、まる 2年経つ。
確か中学 3年生から勉強が始まったのであったが、いつの間にか今みたいに私のことを励ましてくれるようになったとは随分成長したものである。
さすが高校2年生だけのことあるよね!
最初のうちは勉強が始まって
10分もすると、すぐに眠くなって意識が朦朧としてしまうというような状態になるのがお決まりのパターンだった。
中 3だというのに勉強がなかなか軌道に乗らず、困ったなぁと思ったけれど、眠いものは眠いんだから焦ってもどうにも仕方がないので、その儘眠らせて置くと案外早く目が覚めて、再び勉強を開始することが出来た。
何でも沙織は心臓が悪いらしくて少し前に循環器センターに入院していたとのことで、薬も飲み続けているらしかったし・・
「ごめんね!先生!私って何でこんなに眠いのかしら?すぐに眠くなってしまって悪いと思うんだけどどうにもならないのよ。」
「それはね、あなたは体があまり丈夫じゃないので仕方ないのよ。無理をしないで自分が出来るようにして勉強を続けて行きさえすれば良いことなので、全然、気にしないでも良いからね。眠くなったらいつでも眠りなさい。目が覚めるまで、ずっと待っていてあげるから・・心配しないで良いよ。」
そんな風に言いながら、勉強を何とか続けて希望の高校に無事に合格することが出来たのだった。
それだから、人生って全てを神様に任せながら、どこまでも自然な流れに添って歩いていくのがいちばん良いのだわ。
「では、また古文の勉強続けましょうか!沙織さん、次のところ読んでくれますか!」
おや?なかなか返事が無いと思ったら今度はまた沙織さんの方が眠くなってしまったようです。
と、まぁ今夜の勉強はこんな風でした。報告終わり!
(完)