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大島和隆の注目ポイント

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2010.04.09
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<世の中デジタル化の流れですが……>



そして時代は正にデジタル化の流れの真っただ中にあり、“デジタル化”などという言い方さえもが陳腐化してきた今日この頃ですが、私は敢えて資産運用を志す方に「アナログの勧め」をお伝えしたいと思います。でもだいたい「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる世代が大学生になろうかという昨今、アナログと言ってピンとくる人も減りつつあるのかと思いますが……。

<そもそも人間はアナログなもの>

コンピューターが発達して、何もかもがコンピューターの世界に取り込まれていく現代においても、人間の頭脳ほどに優秀なコンピューターはありません。そして同時に人間はいかにしても最後はアナログです。確かに人間の頭脳の処理能力をある側面では上回るスーパー・コンピューターなどはありますが、完全な人工知能、すなわち自分で考え、進化することができるという意味において、人間の頭脳に勝るコンピューターはありません。

結局突き詰めればコンピューターの処理の原点は電気が流れているか居ないか、すなわちプラスかマイナスか、つまり0と1だけの世界に収斂します。これが二進法ですが、コンピューターの処理の原点がここですから、技術進歩はいかに大量の0と1を瞬時に計算できるか、逆にいえば、いかに人間の脳みその思考過程を細分化してフローチャート化して0と1の世界に分けるプログラムを作れるか、そしてそれを処理できるかに掛かっているとも言えます。

何の話がしたいかと言えば、0と1の間には無限の数値があるということです。0と1だけではなく、0.5や0.33、或いは0.7925といったものだってリアルな世界にはあります。にも関わらず、コンピューターの世界は突き詰めれば0と1でしかなく、その刻みを無限に小さくできることはできても、絶対にその中間値はないということです。でも人間にはそれがあります。テレビが滑らかに動画を伝えるのは1秒間に30枚の静止画を連続して表示しているからですが、人間の目は静止画ではありません。まあ、人間の目は見たものを記録することはできませんが……。

<検索ではなく、スクラップ>

最近は私自身もそうですが、何もかもがインターネットになってしまい(ネット企業グループなので当たり前?)、何か調べものをする時にはまずはネットで検索するようになってしまいました。辞書を引いたり、百科事典(←死語に近い)を開いたり、或いは図書館にこもって文献を漁るなんてことは本当に少なくなりました。デジタル・ネイティブ世代の高校1年生の息子などは電子辞書が鞄に入っているだけで、使い込んで手に馴染んだ英和辞典の有難味を理解させるなどは至難の業です。確かに便利です。必要な情報が瞬時にネット上のどこかから収集できるのですから。

でも、私はそんな現代になっても毎日欠かさずしている作業があります。それが新聞の切り抜きスクラップです。「えーーーっ?」と思われるかも知れませんが、新聞の記事をカッターで切り抜き、それを薄茶色のスクラップブックにスペースを合せながら貼って行きます。おおよそ月に2冊の割合で消費しますが、そんな地道な作業を続けています。

正直ベース、そのスクラップブックを見直すことは週に一度、週末にメルマガの原稿書きをする時に再度開く程度ですが、飽きずに、懲りずに続けています。ほぼ再度開くことのないバックナンバーを保存しておくのを家族はかなり嫌がっていますが、結構な量が本棚に溜まっています。

<検索するならネットの方が便利なのは事実>

恥を忍んで申し上げれば、私は記憶力に自信がありません。受験生の頃、数学や物理が好きだったのは、公式さえ覚えていれば試験本番のその場で対応ができるからで、世界史や生物は暗記していないと手も足も出ないから嫌いでした。そんな私がファンドマネジャーになって最初に苦労したのが“覚えていない”ということです。そもそも放っておくと怠惰な性格ですから、前述のように地道に記憶するなんて作業は向いていません。でも過去の事実と照らし合わせて先を見通すのが“相場観”の原点ですから、記憶するのが苦手だなんて言っていられません。どうやって記憶の襞にそれを残すのか?

スクラップした切り抜きを見直すということはほとんどないですし、単純に検索するならネットの方が正確で情報量も多いです。しかし、スクラップするという作業の中で、その記事の内容が自然と頭に残ることにある時気がつきました。またスクラップするためには、毎朝電車の中で新聞を読む時にスクラップする記事としない記事を判断しておかないとならないことに気がつきました。つまり、記事の重要性を判断する癖が身に付いたということです。

今よりもリサーチ自体に時間が掛けることができた時は新聞を読む時に赤と青の色鉛筆を持ち、記事に線を引きながら読んでいた時もあります。片側が赤鉛筆で反対側が青の色鉛筆が便利ですが、くるくる鉛筆を回しながら読みます。ラインマーカーだと新聞のインクで黒くなるので、この作業は色鉛筆に限ります。そうするとより頭に自然と入ってくるような気がしました。流石に最近は時間がないので、スクラップするだけになってしまいましたが、最初のうちはこんな作業もスクラップを上手にするための秘訣かもしれません。

<エクセルに手で株価を入れる>

クウォンツ運用を私が始めた頃でも、株価や金利の過去データは簡単にダウンロードすることができました。もちろん有料で日経平均株価の引値が日次データとして一日分が10円とかいう単位だったと思いますが、あまり頓着することなく「過去5年分の日経平均株価とTOPIXと……」なんて感じでドバーっとダウンロードしていました。

そういう意味からすると、過去の時系列データなどを手に入れることは現在とても容易になりました。おまけにあまり追加的な費用は掛かりません。にも関わらず、私の日課の中には新聞の証券面や情報端末から20種のデータを取り込んでエクセルに打ち込む作業が入っています。昔の先輩たちはB4判のフルスカップに手書きしていましたが、私はエクセルに同様なシートを作って手入力を毎日しています。

解析用のデータベースとするためにはあまり役に立ちません。例えば日米で休日が違う時、データの空欄ができてしまうため、チャート一つ作るのでも穴が開いてしまうことがあるからです。ではこの作業の目的はと言えば、やはり人間がアナログな生き物だということが原点にあります。数字を目で追い、手を動かして入力することで、自然と記憶に残り、そして見落としやすいデータを忘れずにチェックする習慣づけにもなるということです。

昔の先輩の中にはチャートも方眼紙を付け足し付け足ししながら手書きしていた人もいましたが、私はそこまではしていません。

<アナログの勧め>

想像してみて下さい。この何もかもが便利になった現代に、新聞の切り抜きを地道にしながら糊づけしている姿を。或いは毎日決まったように特定の数字をエクセルに打ち込む姿を。でもどんなに環境がデジタル化しても、人間がアナログであることには変わりありません。ネットで検索すればだいたい何でも手に入りますが、それを次に処理するのは人間だということです。万能に聞こえるプログラミング取引のようなものでも、それを最初にプログラミングしたのは人間です。だからこそ、どこかアナログな作業をしないと勝てないのかも知れないと思ったりもします。是非、アナログな作業を積極的に取り入れて下さい。

今晩はアコースティックな音楽を聞きながら一杯飲んで寝ようと思います。ただ残念ながら我が家にはCDしかすでになく、結局はデジタル処理されたものになってしまうのですが……。

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楽天投信投資顧問株式会社
CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第72号 2010年4月9日発行より) ==========================================================






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最終更新日  2010.04.12 17:38:35


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