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2011.02.25
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<“Sandy Bridge”駄目じゃん!>



「品質検査の過程で、先日発表したインテル® 6 シリーズ・チップセット(開発コード名:Cougar Point)の設計上の問題を特定し、解決策を施しました。この問題では、場合により、チップセットの Serial-ATA(SATA)ポートの品質が時間経過とともに低下することにより、SATA で接続された HDD や DVD ドライブの性能や機能に影響が及ぶ可能性があります。

本チップセットは、第2世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリー(開発コード名: Sandy Bridge)搭載 PC に利用されています。インテルは、該当するチップセットの工場からの出荷を停止し、今回の問題を解決した新しいチップセット製品の製造を開始しています。第2世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリー、およびその他の製品には、この問題による影響はありません。」

だそうです。

この同社のプレス・リリースで意味が分かった方々にはパソコンやその部品を購入されたり、或いはハイテク株への投資を考えたりする時にも充分なヒントになったと思われますが、たぶん普通の人には「???」だったのではないでしょうか?

また新聞などの記事で断片的に話を知らされた方も同様かと思います。では平たく言うとどういうことかというと、先般鳴り物入りで登場したインテルの最新MPU(超小型演算処理装置)であるSandy Bridgeはまだ使えないということです。使えることは使えるのですが、それが本来持っている性能を使い切れないがため、当然満を持してその新しいMPUを搭載したパソコンを売りまくろうと目論んでいたパソコンメーカー各社は、思い切り肩透かしを食った、ということになります。

<チップセットとは何ですか?>

チップセット(この場合ではインテル® 6 シリーズ・チップセット(開発コード名:Cougar Point))とは何かというと、何度かこのコーナーでも取り上げましたが、パソコンの頭脳であるMPUとHDDやDVD或いはネットワークなどとの間でデータの仲介をしたり、時にグラフィックス描画機能を持ったりするパソコンの隠れた心臓部ということが できます。

もちろんMPUがパソコンの主な性能を決めるのですが、実はこのチップセットの違いでパソコンの特性がガラッと変わったりします。だいたいMPUの世代交代に合わせてチップセットも世代交代しているので、注意深くパソコンのカタログ・スペック表を見ていると、何気にそれが機種ごとに違っていたりすることが解るはずです。

以前はチップセットの専業メーカーなどもあったのですが、現在ではインテル製のMPUについてはほとんどインテル製のそれが使われていることが多く、たまにエヌビディア製などを見かけたりするという感じで淘汰されてしまいました。

<チップセットが不良品だとどうなるの?>

前述のようにかつてはチップセット専業メーカーも多かったため、ひとつのメーカーのチップセットが使えなくても他社製品を使えば良かったのですが、現在はほとんどインテル製のMPUにはインテル製のチップセットが使われるようになってしまったため、はっきり言ってチップセットが不良品だと解った段階で新しいMPUの利用もできないということになります。

プレス・リリースには「第 2 世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリー、およびその他の製品には、この問題による影響はありません。」と書いてありますが、 もちろんそれら自体には影響はありませんが、 いくら新しいMPUを買ったと喜んでみても、それで稼働するパソコンが組めないのでは意味がありません。これは当然自作パソコンのマニアの間だけで問題になるのではなく、主として困っているのは新MPU「Sandy Bridge」の登場を当て込んで、春先のパソコン需要を取り込もうと目論んでいいた完成品メーカーです。

当然新学期セールに「新MPU搭載! インテルの新型Corei 7で動画処理も楽々!」なんてキャンペーンを考えていたところは全滅です。解決策を施し、今回の問題を解決した新しいチップセット製品の製造を開始しているとは言っていますが、2月21日現在、インテルが完全なる対策品を供給し始めたとの報道がありませんから、さすがに今からそれをマザーボードにマウントして、新しいパソコンとして組み立てて、そして春休みに店頭に並べるなんていうことは物理的に不可能です。このダメージをまだ市場は織り込んでいないような気がします。

<H67とP67の違い>


今この段階でご説明しても仕方のないことかも知れませんが、今回の新MPUである第 2 世代インテル® Core ™プロセッサー・ファミリー(開発コード名: Sandy Bridge)の最大の売りは何かといえば、MPUコアにグラフィックス・コアが混載され一つのダイ(シリコン・ウェハーから切り出した四角い状態のもの)になったということです。MPUパッケージの中に二つのダイを混載したのは前世代からありましたが、一つのダイに混載したのはインテルでは初めてです。これにより劇的に処理能力、取り分け動画のエンコーディング処理が早くなったので、私のように映画をiPhoneやiPadで観られるように圧縮したりする人には大歓迎されて期待されていました。

しかし、前述のようにチップセットはここで重要な役割を担っており、実はH67とP67と呼ばれる2種類のチップセットのどちらを選ぶかによって、パソコンの性能や性格が大きく変わるのです。一番端的な例は、その評判のグラフィックス機能を利用できるのはH67の方だけで、P67を購入しても内蔵グラフィックス機能を利用したパソコン画面描画はできません。つまり劇的にエンコーディングが早くなることを楽しめるのはH67だけということになります。

しかし一方でオーバー・クッロクという、より能力を引き上げるような処理をすることはできません。そもそもゲームなどで高度な演算能力を必要とする人は、グラフィック・チップは内蔵GPUなどを使いませんから問題ないという判断だと思うのですが、同じ新MPUを買ってきても、チップセットでH67を選ぶかP67を選ぶかでパソコンの性格は大きく変わってきます。ちなみに私はH67を買ってエンコーディング時のメリットを享受しようと算段していたのですが、先月末の報道を聞いてから動けていません。

<一部機能を諦めるならばOK>

プレス・リリースが良く意味の解らない説明になっている部分に「チップセットの Serial-ATA(SATA)ポートの品質が時間経過とともに低下することにより、SATA で接続されたHDDやDVDドライブの性能や機能に影響が及ぶ可能性があります。」という部分があります。「時間経過と共に???」ということなのですが、どうやらこの辺の状況はあまり開示されていないようです。ただ要するにHDDやDVDドライブと接続した時に、段々と速度低下が起こったり、最高性能を得られなくなったりするということのようですが、逆に言うと、それを諦めるならば新MPUも使えるようです。

つまりこの新チップセットにはHDDなどを接続するポートが6つあるのですが、その内の2つは正常稼働するようなのです。故に残りの4つを蓋して使わなければ問題ないらしいです。実際パソコン・パーツを買いに行く私の御用達のショップでは「デバイスを接続できるSATAポート、および搭載可能なドライブ数に制限がございます。」という太ゴシック表示の後に「SATA 6Gb/sポートのみ、デバイスの接続が可能です。SATA 3Gb/sポートについては、ポートは存在しますがデバイスを接続できないよう加工して出荷いたします。

したがいまして、SATA 3Gb/sポートに関しましては、デバイスの接続(増設)が行えません。(使用マザーボードによって利用可能なSATA 6Gb/sポート数は異なります。)」という但し書きがあり、それを了解の上でならばH67もP67も手に入れることができるようです。確かにみんながみんな全部のポートを使う訳でもないので、この対応の仕方もありといえばありなのですが……。

<完成品メーカー数社は腹を括った>


実際、1月31日の発表以来、途方に暮れた完成品パソコンメーカーとインテルは協議を続け、機能を限定して使うことにしたメーカーには対策前の製品を供給し始めたようです。確かに日本においては新学期セールが書き入れ時であり、この時期に最先端パソコンを投入できないメーカーとしてはやり切れないと思う反面、なりふりかまわず出せる物を出すという決断もありだと思います。ただこんな私でさえ「4月に買い換えよう」と計画を先延ばしにしているぐらいですから、業界が失った需要はインテル一社の損失額見通しである約3億ドルよりはるかに大きなものになる筈です。

<悪材料はどこまで影響するか?>

市場関係者として注目しているのは、この悪材料がどの程度、どの範囲まで、いつまで影響するかということです。せっかくこのところ調子の良い株式市場、ハイテク株比率の高い米国ナスダック総合指数などはもう少しでITバブル崩壊後の高値を更新しようかというこの段階で降って湧いたような災難です。

市場シェアの80%を握るインテルの製品トラブルは長引くようだと市場に冷や水をかけかねません。ハイテク関連の部品はどんどんコモディティ化して値段が下がり薄利になります。利幅の取れるハイエンド品で稼がないことには、とりわけ日本の電子部品メーカーにとっては頭の痛い話です。安価な製品群の世界では、韓国や台湾、或いは中国勢などが牙を研いでいるのですから。

ただ私が危惧しているようなことはなく影響は軽微なものに留まるという見方が ないわけではありません。すなわち、 いかに注目されている第2世代インテル® Core™ プロセッサー・ファミリーといえども、出始めはそれを搭載したモデルが主役になるとは限らないからです。それにマニアでなければそんなにMPUに こだわりは ないかも知れないとも思うからです。

ただ私自身、とてもSandy Bridgeには期待をしていましたし、どの週末で新しいパソコンを組もうかと考えていた矢先だったのでかなりがっかりしている次第です。こういう消費者が多ければ多いほど今回はマイナスインパクトが拡大するので、今回限り「そんなこと、あまり こだわらないんじゃない?」という人が多いことを願う限りです。マーケットの問題意識には注意が必要です。

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楽天投信投資顧問株式会社
CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第93号 2011年2月25日発行より) ==========================================================





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最終更新日  2011.02.25 17:03:47


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