Mの部屋ブログ

Mの部屋ブログ

PR

×

バックナンバー

2026年10月
2026年09月
2026年08月
2026年07月
2026年06月
2026年05月
2026年04月
2026年03月
2026年02月
2026年01月

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

輝絽リスト

輝絽リスト

サイド自由欄

設定されていません。
2009年08月22日
XML
 第四章 始まり

     1 中

「……でも、エインの個人や国家使用は禁止されているし、接続権限があるわ。アルバールはおろか、ウチの軍にだって無理のはずよ。それこそ、エインにでも見初められ、贔屓されないかぎりは、ね」
「……あのな保持、一応説明しておく」
 保持は蚊帳の外だったのだが、九十九がそれを見かねたのだろう。
「基本的にエインソーフは総合的な解析結果を示すだけで、こちらの質問には答えてくれないんだよ。“お告げ”みたいなもんだな。とはいえ、関係のない事を告げられてもしょうがないから、年に一度、新年を迎えた時に各国家が一年を通した予言の要望を出す。それは前に行ったとおりなのだが、それらの要望は各国代表者で組織されるエインソーフ保護委員会で審査され、そこを通りさえすれば各国が求めるお告げはなされる。だから、こんな戦術的な予言を尋ねることも、告げられる事も無いと考えていい」
「へぇ……」
「……司令、先ほどから気になっていたのですが、なんでここに部外者がいるんです?」
 堪りかねたように、沙理菜が九十九を指差す。常識のある沙理菜のことだ。九十九を指差したのは意識的なことだろう。

「それなら、彼にはサンクロバの軍籍はないはず」
「う~ん、知っていた? 彼はアルバールの情報部にいたのよ? 私たちの知らない情報をたくさん持っている――かもしれないじゃない。その情報を使わないのは、もったいないと思わない? ねぇ、九十九君? 私たちの知らない情報をたくさん持っているのよね?」
「彼が情報部の人間だったのは知っています。だからこそ彼が正確な情報を口にするとは限りませんし、彼にこちらの情報を与える事も危険と考えます!」
「それを判断するのは私よ、サリー? だけど忠言はどんどんしてくれて結構、というかむしろ一杯してネ」
 ネリュートは沙理菜の視点を何かから外そうとしている。ネリュートの言葉の端々から保持はそのことに気付いた。しかし沙理菜も負けていなかった。
「では彼を信頼する、その根拠をお教え下さい」
「下士官であるあなたが知る必要の無い事よ」
「う……」
 そう言われてしまっては沙理菜の立場からでは何も言えない。そうなると分かっていてネリュートは言ったのだろう。悔しそうに歪む沙理菜の顔を、ネリュートはニヤニヤしながら観賞していた。
「いやはや、ネリュート閣下の度量には感服いたします。ならば、期待に報いないとなれば男の恥! そこで耳寄り……かどうかは知りませんが、ご期待の情報を……」
 少し気まずい空気を吹き変えたのは九十九だった。

「おっと! これは耳が痛い……未確認情報で申し訳ないのですが、アレはおそらく、ノストラダムスです」
「え?」
「あ、いや、保持、お前の考えているのとはちょっと違う。この前説明したのともな。このノストラダムスは、稀代の占学師の名前を冠したアルバールの予報システム。正確にはノストラダムス計画の異端の後継者によって、アルバールの国益の為に再構築された、もう一つのエインソーフ、その骨格と成るもの。それによってこちらの位置を予言しているとしか考えられません」
「それは本当のことなの?」
「おそらく。そういう計画がある事自体は知っていましたが、軍部に提出されていた報告書では実用化にはまだ時間がかかるとされていましたので……完全に失念していました。ですがこれは本国の方からの確かな情報です。もっとも、信じるかどうかはお任せしますが」

「それはそれ、これはこれですよ。結局を言えば、自国の利益にならない物と他国の利益になる物は全否定する、という国家単位での方針の結果です。融通の利かない偉大なシステムより、ランクは下がっても従順なシステムを必要とし、それを作り出した、ということです。まぁ、まだまだ未完成のようですが……」
「なるほどね。でも、自力開発じゃかなりの無駄が出ない?」
「あぁ、その辺は本家エインソーフで実証されていますから。あとは猿真似、実際はそこの開発が遅れているので、実用化はまだまだ先と考えられていたのですが……どうやら無理ならちょっと拝借という結論に至ったようです」
「呆れた……それって連盟憲章違反じゃないの?」
 発言者の沙理菜に、九十九は自信満々に言い返した。
「あ、その辺は大丈夫。アルバールは既に銀河連盟を脱退しているし、占術保護規約に同意した覚えはありません。問題なしです!」
「幼稚な言い訳ね……でも、エインでもそうだけど、重要なのは情報の蓄積。昨日今日のものじゃ意味はないわ。ということは、実用研究は最近でも、基本研究はかなり前からやっていた訳ね?」
 ネリュートは九十九の意味深な表情で何かを悟ったようだ。 
「そう……そういう事ね。予め作ってあったのね、エインに穴が」
「えぇ。世の中、ある程度の事は金で全て片が付きます。それに人間のやる事、どんなにチェック機構を増やしても、目先に積まれた黄金がまぶしくて、うっかり見落としたりもしますから。それにミスというものは、どんなに注意してもなくならないものです。一切問題ありませんよ」
「でも、穴があったとしても、いつか見つかるはずではないの?」
 沙理菜の疑問に、九十九は生まれ故郷であるアルバールへの嘲笑を浮かべた。
「その辺は抜かりないさ。最低限度必要なものはすでに複製済みと考えたほうがいい。機会さえあれば、アルバールはエインソーフを破壊するだろうから、その場合は証拠は残らない。そもそもアルバール独自の体制を作り上げ、その一切を独占する事ができれば、エインソーフは用事済みだし、邪魔な存在なのだからな」
「じゃ、その前に証拠を見つけて訴えればいいんじゃないの?」
「お? 保持、いい目の付け所だ。でもな、もし破壊する前に穴がある事が見つかり糾弾されても、だんまりを決め込むか、ミスを主張して貫き通して時間を稼げばいい。どのみち強国アルバールに表立って文句を言える国家は少ないからな。それにエインソーフにあるアルバールの情報を削除すると脅せば、従うしかない」
「あらあら、それは大変ね。アルバールは連合を脱退しているとはいえ、戦争の――宇宙の命運を握るアルバールの情報は、今後の予言には必要不可欠。そんな重要なものを消すわけにはいかないわよね。たとえ古い情報を元に各国からの情報提供で補完しているとしてもね」
「実はそこにこそ狙いがあったようですよ。アルバールがエインソーフに置いたシステムは、全体で一個となるように設計されている特殊な構造なのです。つまり、例えば“あいうえお”という言葉のデータを細分化して、別々の部分に一文字ずつ保存するようになっているんです。そして一度一つのデータがきえれば二度と復旧できなくなっているのです。五文字程度ならそう問題ありませんが、膨大量の資料ともなれば解析は困難であり、切り替えるには全てを一度に行う必要があるんです」
「なるほどねぇ~ 相変わらず悪巧みだけ優秀よね。アルバール共和国は」
「まぁ、アルバールの主張で、内容を悪用されない為の予防策として、独自のシステムと機器を導入した――事になっていますから、表立ってそれを非難しにくいですしね。実質は自身がそれを最大限に悪用しているという事は、最初から悪用する気があったということですよ」
「でも――」
 そんな事が許されるのだろうか? 保持にはどうしても納得がいかず突っかかってしまう。
「納得できない保持君の気持ちもわかるけどね、アルバールとその関係ともなれば、地球ぐらいの大きさの規模の設備が必要なのよ。それを誰がお金を出して作り直すの?」
「そ、それは……そうですよね……そうですけど……」
「気持ちは痛いほどわかるわよ。私も納得はしてないわ。でも、作り直すより少々の問題があっても、アルバールの情報筐体のある区域はそのまま残した方がいいという結論になっちゃうのよ。そもそも各国家の情報筐体は基本的に治外法権。いくら監査の為とはいえ、無断で入る事は出来ないからね」
「えぇ、ですからそこを中継地点として、エインソーフの情報を盗み見ているのですよ。もっとも、さすがにメインの方の穴は、エイン本体のシステム変更で塞がれているようですから、こちらからは覗ける内容は選べませんし、かなり限定されるらしいですが」
「全く……アルバールには呆れて言葉が出ないわね」
 肩をすくめる沙理菜に、ネリュートが苦笑して見せた。
「まぁ、清廉潔白な国家なんてこの世に存在しないわ。サリーだって骨身にしみているでしょうけど、サンクロバだって色んな暗部を抱えているもの。それに自国の利益を優先することは、国家しては正しいあり方よ。例えそれが卑怯な事でもね」
「……」





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年08月23日 20時52分04秒
コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: