そんなテルアビブ★イスラエル★

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2015年02月05日
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たったひとりの聖戦(1)
たったひとりの聖戦(2)
たったひとりの聖戦(3)
たったひとりの聖戦(4)


たったひとりの聖戦(5)



ロバート・フィスク著      
安濃一樹訳
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一九九六年六月の終わり、ベイルートは暑い夜を迎えていた。机の電話が鳴り、思いもよらないメッセージを告げた。海外特派員としての経歴を振り返っても、あれほどの衝撃を持つニュースは数少ない。
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「ロバートさん、あなたの友人が会いたいと言っています。スーダンでお会いになった人です」。男の英語にはアラビア訛りがあった。最初、カショーギのことを言っているのかと思った。だが、彼と初めて会ったのは一九九〇年だったからハルツームに行くずっと前のことだ。
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「いえいえ、ロバートさん、違います。あなたがインタビューした人です。おわかりでしょうか」。はい、わかりました。どこへ行けばその人にお会いできますか? 「あの人が今いるところで」と声が答えた。ビンラディンがアフガニスタンに戻っているという噂は聞いていた。だが、だれも確認できていない。どうすればその人と連絡がとれるのかと聞いてみた。


「ジャララバードへ行ってください。・・・こちらから連絡があります」
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▽
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七月五日。カシャ、カシャ、カシャ。だれかがアイスピックで頭を突いてくるようだ。カシャ、カシャ、カシャ。カシャ、カシャ、カシャ、カシャ。私は座り直した。鍵の束で窓を叩いている。「ミスーッタァ、ロバート」。押し殺した声で「ミスター」と呼んでいた。わかった、わかった、ここだ。「降りてきてください。男が待っています」
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私の部屋の窓まで、ホテルの古びた非常階段をよじ登ってきたに違いない。そう気づくまで時間がかかった。コートを手にした。今から走っても、着くのはきっと夜になる。あやうく愛用のニコンを忘れるところだった。フロントデスクの前をできるだけ平静を装って過ぎると真昼の暑さの中へ出て行った。
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男は薄汚れた灰色のローブを着て、木綿の丸い帽子を被っていた。アフガン風の身なりだがアラブ人だった。私の手を両手で包み、礼儀正しく挨拶して笑顔を見せた。名前はモハメッド。私のガイドだった。


「あの方に会いに行くんだね?」。男は微笑むばかりで何も言わない。
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モハメッドの後について、砂埃が舞うジャララバードの大通りを延々と歩いてゆくと、廃墟となったソ連軍の基地に差し掛かった。壊れた装甲車が赤い星の国章を錆びつかせて、粉々になった門の上に並んでいる。その廃墟の中に小型トラックが停まっていた。
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「ロバートさん、私たちの護衛です」と、運転席の男が当たり前のことのようにいった。灼熱の太陽の下、髭面のゲリラを従えて、アフガニスタンのナンガルハール州に広がる荒野へと旅立つことが、そんなに当たり前のことだろうか。アフガンの戦士たちが荷台に乗り込むと、助手席の男が肩にしていた無線機がシューと音を引いてパチパチと鳴った。
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出発の間際になって、モハメッドが荷台から降りてきた。運転手も車から出てしまう。二人はまばらな草地まで歩くと、礼拝を始めた。それから五分間、男たちはひれ伏すようにして、遠くカブールの渓谷に向かって祈りを捧げた。その遥か彼方には聖地メッカがある。
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崩れかけた幹線道路を走り、途中から灌漑用水路ぞいの土道に入った。銃器が荷台の床で跳ねる。護衛たちはチェッカー模様のスカーフで顔をおおい、眼だけのぞかせている。そうして何時間も走り続けた。通り過ぎる村々の土の家屋は半ば潰れていた。いくつも谷を越え、切り立つ黒い岩波を巡った。まるで月面を旅する思いがした。
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夕暮れまでに、狭苦しい東部の村々をいくつも走り抜けていた。年老いた男たちが道端で炭に火をおこし、アフガン風のブルカで全身を覆った女たちが影のように路地に立つ。数多くのゲリラ戦士がいた。モハメッドや運転手に気づくと、髭の中から歯を見せて笑った。
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ようやくトラックが止まったときにはもう夜になっていた。着いたところは果樹園だった。木の長椅子が軍用毛布で覆われていて、その上にベルトや帯が山積みになっている。闇の中から武装した男たちが現れた。だれもがアフガン服を着て、平べったい羊毛の帽子を被っていた。手にはライフルやマシンガンを持っている。
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アラブ人のムジャヒディーンだった。アラブ世界に君臨する大統領や王たちの半数は、アメリカ合衆国がそうするように、戦士たちをアラブの「アフガン人」と呼んで蔑んでいた。だが、この男たちがアルカイダと呼ばれるとき、世界中がその名を知るようになる。その時はもう目前に迫っていた。
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男たちはエジプトをはじめ、アルジェリア・サウジアラビア・ヨルダン・シリア・クウェートから来ていた。眼鏡をかけた男が二人いる。そのひとりは医師だという。厳粛な面持ちで握手を求め、アラビア語で挨拶をしてくる者も何人かいた。この男たちはビンラディンのために命を捨てるだろう。腐敗した世界に生まれながら、清らかな心を持ち続け、天から授けられたという夢を信じ、その夢に突き動かされていた。
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岩波『世界』誌、〇五年一二月号掲載。
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Extracted from The Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East by Robert Fisk.
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ロバート・フィスク 。英『インディペンデント』紙中東特派員。ベイルート在住。北アイルランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻、イラン革命、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガン侵攻、湾岸戦争、ボスニア戦争、アルジェリア内戦、NATO軍のユーゴ空爆、イラク戦争などを取材。著書にPity the Nation: Lebanon at War (1990.1992)など。最新刊にThe Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East がある。
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写真はアフガニスタン、ナンガルハール州。









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最終更新日  2015年02月22日 20時57分06秒
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