そんなテルアビブ★イスラエル★

そんなテルアビブ★イスラエル★

2015年02月07日
XML
たったひとりの聖戦(1)
たったひとりの聖戦(2)
たったひとりの聖戦(3)
たったひとりの聖戦(4)
たったひとりの聖戦(5)
たったひとりの聖戦(6)


たったひとりの聖戦(7)



ロバート・フィスク著      
安濃一樹訳

               .
<アフガニスタンのイスラム教徒がソ連の手によって屈辱の淵に落とされているときに、何もしようとしない臆病なサウジ王子たち。ここで怒りに身をふるわせた男がいた。オサマ・ビンラディンである。王子たちが辞退した使命を一身に担うと、経営する建設会社の資金と機材を投じ、たったひとりの聖戦を挑んだ>
               .

▽ たったひとりの聖戦(7)

               .
 しかし、ビンラディンがほんとうに話したかったのはサウジアラビアのことだった。私たちがスーダンで会ったころよりも、王国の情勢は悪化していると彼はいう。イスラム教の指導者 ウレマー たちは、米軍の駐留は許すことができないとモスクから宣言を発した。サウジ政府は「アメリカに勧められるまま」、ウレマーたちを弾圧した。


 サウジの人びとに対する裏切りは、一九三二年に アブドゥルアジーズ・アルサウード が王位に就いたときに始まる、とビンラディンは考えていた。彼が生まれる二十四年前のことである。
               .

 「イスラム法を奉じるという旗の下にサウジ家は政権を担いました。だれもがこれを信じて権力を委ねた。しかし、アブドゥルアジーズはイスラム法など用いず、サウジ家の利益だけを考えて国を作り上げました。石油が見つかると、サウジ家はイスラム法に代わる支配の道具を手にします。人びとに金を与えた。贅沢な行政サービスや、思うがままの生活を与えた。豊かさに満ち足りているうちは、不平をいわないものです」 
               .

 ビンラディンは、お馴染みの ミシュワクの小枝 を使っている。歴史、いや彼が物語る歴史は彼のあらゆる主張を基礎づけていた。サウジ王室はシャリア法の制定を約束していながら、アメリカが「サウジアラビアを西洋化し、経済を破綻させ」るのを許した。サウジアラビアは、 イラン・イラク戦争 のとき、サダム・フセインを支援して二五〇億ドルを浪費した。 一九九一年の湾岸戦争 では、西側諸国の支援にまわり、また六〇〇億ドルを失った。すべての責任は王室にあるとオサマはいう。
               .


               .

 一九九〇年、ビンラディンに転機が訪れる。サダムが クウェートを侵略 した年である。
               .


               .

 ふと話を止めると、ビンラディンは、自分が意を凝らした歴史の講義を私がちゃんと聞いているか確かめていた。どこか不気味な個人授業だった。
               .

 「サウジの人びとはウレマーたちの訴えを思い出しました。アメリカこそが自分たちが抱える問題の原因だと気づいた。・・・サウジアラビアが世界最大の産油国であることはだれでも知っています。それなのに、だれもが税金に苦しんでいる。十分な社会保障もない。人びとはいまモスクでウレマーたちの訴えに耳を傾けています。この国はアメリカの植民地となってしまった。ウレマーたちはそう訴えている。リヤドとアルコバールで起きたことは、アメリカに向けられた怒りのあかしです。サウジの人びとは、アメリカこそが自分たちの敵だと、いま悟りました」
               .

 サウジ政権を倒すこと。王国から米軍を追い払うこと。この二つの目標は、ビンラディンにとって、まったく同じことを意味していた。彼は自分の願いをこう伝えた。「イスラム教の指導者たち(もちろん自分はそのひとり)に勇気づけられ、人びとが自らの力で米軍を聖地から追いやる。いままで豊かさにかまけていたサウジの人びとが、ついにはアメリカ合衆国に戦いを挑む」。ほんとうにそんなことが起こるだろうか。
               .

 ビンラディンは、ときどき話を止めると、一分あまりも沈黙することがあった。そうして自分の言葉を確かめている。こんな話し方をするアラブ人は見たことがない。ほとんどのアラブ人は、記者の質問にあうと最初に頭に浮かんだことを口にする。そうしなければ無知だと思われると心配する。しかし彼は思慮深く沈黙に耐えていた。自分の言葉には人を戦地へ導く力があると信じて疑わないからだ。傲慢なまでの確信だった。
               .

ヨーロッパ人も第二次大戦でドイツに占領されたとき抵抗したではないか、とビンラディンはいう。パレスチナでよく聞かれる議論だ。私は答えた。ヨーロッパ人は、サウジアラビアに同じことが当てはまるとは考えないだろう。ナチスは何百万ものヨーロッパ人を殺害したが、アメリカはサウジの人間をひとりも殺していない。そんな類推は、歴史に照らしても人道の上からも間違っている。
               .

 ビンラディンは納得しなかった。「私たちはイスラム教徒として互いに強い絆で結ばれています。・・・パレスチナやレバノンの兄弟たちの苦しみを私たちは自分のことのように感じている。・・・パレスチナで六〇人のユダヤ人が殺されたとき(パレスチナ人がイスラエルで自爆攻撃を行ったこと)、わずか七日のうちに世界中が結束して犯行を非難しました。それなのに、六〇万人もの子どもたちがイラクで死んでいっても、世界は何もいわなかった」
               .

 国連による イラクへの経済制裁 にビンラディンが言及するのはこれが初めてだった。 制裁によって、五〇万人以上の子どもたちが死亡 したことは、国連の専門官が自ら認めている。「イラクの子どもたちが殺害された。これはイスラム教に対する十字軍の攻撃に等しい」とビンラディンはいう。「私たちイスラム教徒はイラク政権を好ましく思っていません。しかし、イラクの人びとも子どもたちも私たちの兄弟です。みんなの行く末を案じています」。彼が「十字軍」という言葉を口にしたのも初めてのことだった。
               .

 ビンラディンがサダム・フセインの独裁政治から距離を置いたことは以前にもあったし、その後もフセイン政権に対する批判は止めていない。これが幸いして、サダムと関わりなどなかったことが明らかになる。五年後にアメリカがイラク侵略に踏み切ったとき、その理由のひとつにあげられたのが、フセイン政権がビンラディンを「支援」しているという情報だった。サダムは自分の政権を忌み嫌う男を「支援」していたことになる。
               .

 あの夜のビンラディンはさらに重要な発言をしていた。もっと注意して聞いておくべきだった。彼は右手を胸に置いて、こういった。「やがてアメリカはサウジアラビアから撤退するでしょう。時間の問題です。そして、アメリカがサウジの人びとに仕掛けた戦争は、すべてのイスラム教徒に対する戦争になると信じています。・・・イスラム諸国の人びとはアメリカに抵抗し、街から街へと戦いが広がってゆくでしょう。イスラム教の指導者たちが、私たちが信頼を寄せるウレマーたちが、アメリカを追い払えと宣告するファトワをもうすでに出しています」
               .

*
               .

岩波『世界』誌、〇五年一二月号掲載。
               .

Extracted from The Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East by Robert Fisk.
               .

ロバート・フィスク 。英『インディペンデント』紙中東特派員。ベイルート在住。北アイルランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻、イラン革命、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガン侵攻、湾岸戦争、ボスニア戦争、アルジェリア内戦、NATO軍のユーゴ空爆、イラク戦争などを取材。著書にPity the Nation: Lebanon at War (1990.1992)など。最新刊にThe Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East がある。
               .

*
               .
写真は、1990年11月、サウジアラビアを訪問したジョージ・HW・ブッシュ大統領と談笑するファハド国王。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2015年02月22日 20時56分30秒
コメントを書く
[パレスチナ・中東問題] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

プロフィール

Bon-Bon

Bon-Bon

カレンダー

バックナンバー

2026年10月
2026年09月
2026年08月
2026年07月
2026年06月

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

パクパ @ 188BETオンラインカジノのご紹介のご相談(188BET) 運営者様 オンラインカジノ・スポーツブ…
188BET 田中竜司@ オンラインカジノのご紹介のご相談(188BET) オンラインカジノのご紹介のご相談(188BET…
188BET 田中竜司@ オンラインカジノのご紹介のご相談(188BET) オンラインカジノのご紹介のご相談(188BET…
パクパ @ Re:188BETオンラインカジノ オンラインカジノ・スロットの188BET日本…
王島将春@ Re:マラウィ Day36:フィリピン兵のPTSD(06/27) 初めまして。福井市在住の王島将春(おう…

カテゴリ

カテゴリ未分類

(11)

マニラ:日々のできごと

(35)

マニラ:犬との生活

(0)

テロ・戦争・IDF

(17)

集団的自衛権

(14)

パレスチナ・中東問題

(54)

2014年 ガザ Operation Protective Edge

(17)

2012年 ガザOperation Pillar of Cloud

(9)

2008年 ガザ Operation Cast Lead

(30)

村上春樹:エルサレム賞

(8)

イスラエル出入国

(32)

テルアビブ観光

(33)

エルサレム観光

(7)

イスラエル観光ガイド

(16)

イスラエル国の祭日

(20)

ユダヤ祭日

(13)

ユダヤ祭:新年、贖罪日

(15)

ユダヤ祭:プリム

(6)

ユダヤ祭:ペサハ

(8)

ユダヤ教

(20)

郵便、銀行、両替

(15)

国内交通、旅行会社、安全情報

(24)

テルアビブの街とファッション

(34)

レストラン、カフェ、食事

(25)

生活、習慣、文化

(28)

日々のできごと

(47)

犬との生活情報

(38)

ペットショップ・獣医

(20)

ルームメイト・友達・日本人会

(24)

アパート、ホテル

(17)

仕事

(27)

恋愛、デート

(23)

恋愛:金髪君

(7)

恋愛:ギディちゃん

(11)

恋愛:年下君

(7)

恋愛:マイク

(8)

美容・医療・健康

(19)

セックシャリティー

(21)

イベント:マドンナ

(16)

イベント、パーティー

(18)

TLV100周年イベント

(8)

09年ローマ法王訪問

(15)

イスラエル⇔イタリア

(6)

イスラエル⇔トルコ

(6)

イスラエル⇔日本

(33)

日本:日々のできごと

(32)

日本:犬との生活

(5)

動物検疫(犬輸出入)

(15)

フィリピン:マラウィ包囲作戦 

(7)

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: