en chambre

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2009/06/08
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カテゴリ: 旅行
何週間か前の話になりますが、F1のモナコGPをやってましたね。

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私は、行くつもりがなかったのにモナコに行ってしまった経験があります。

今から11年前の秋。大学4年だった私は、1ヶ月かけてギリシア・イタリア・フランス・スペインを旅行しました。
初めての海外旅行で、一人旅。ルートも全て自分で考えた個人旅行でした。

旅の初日、パリ行きの便がいきなり欠航になったり、ハプニングだらけで不安でした。でも徐々に慣れてきて、物心ついた頃から憧れていたヨーロッパを旅行できて、幸せだなあと思い始めた、旅の中盤の話です。

ユーレイルパス(ヨーロッパの鉄道乗り放題切符)を持っていた私は、その日イタリアのジェノバからフランスのニースに行く計画を立てていました。時刻表で発着時間はしっかりチェック済み。

ジェノバの駅に着いて、掲示板を見たらニース行きの表示がない。乗る予定の電車と同じ時間に出発する電車はVentimigliaという知らない地名が行き先になっていました。

トーマスクックの時刻表で調べると、Ventimigliaはジェノバとニースの間にある駅。おそらく、イタリア側の国境の駅で、Ventimigliaに着いたら行き先表示がニースに変わるんだろう。私はそう解釈して、電車に乗りました。



しばらくすると、車掌さんがやってきて、「ここで終点だから降りて!」というようなことを言われました。

「え?どういうこと?」わけがわからないながらも、このままドアが閉まったら大変!と慌てて下車。(後で気づいたのですが、慌てすぎてローマで買ったばかりのストールを車内に忘れてきてしまいました・・・。)

とりあえず駅のインフォメーションに行って分かったのは、「フランス国鉄がストをしているからここから先には進めない」ということでした。

スト!それっぽいニュースをホテルのTVで見てたけど、イタリア語はわかんないし、ジェノバの駅は普通どおりだったから気づかなかった!

私の予想どおり、Ventimigliaがイタリア側の最後の駅だったのです。

どうしよう・・と呆然としていると。
「Are you Japanese?」と話しかけられました。

それが、Sさんとの出会いです。

Sさんは推定60~70歳の日本人の男性。自宅は福岡だけどVentimigliaに家を借りていて、年に数回訪れてはイタリア語を習ったり、ここを拠点にヨーロッパ各地を旅行し、絵を描いているという人でした。

この日は、モナコの友人の家に電車で行き、翌日から一緒に旅行に行く予定だったそう。英語が苦手なので、状況をインフォメーションで聞いてほしい、と頼まれました。

私も決して流暢に英語を話せるわけではないけど、なんとか「夕方にならないと電車が出ない」ということがわかりました。



まずはモナコの友人に遅れるということを電話して、さて、どうしようか。
夕方まで待つのは辛い。モナコからニースはバスが通っているので、タクシーの相乗りでモナコまで行ってはどうか?私はその提案に賛成しました。でもここでひとつ問題が。

当時はまだユーロが流通していないころ。フランスに入国して両替するつもりだったので、手持ちのイタリアリラをほとんど使い果たしていた私。手持ちはトラベラーズチェックとカードのみ。

幸い、タクシーに「クレジットカード使えます」のシールが貼ってあったので、私がカードで払って、半分を現金でSさんにもらうことにしました。

海岸線沿いの道をかなりのスピードで走るタクシー。グレース王妃が事故死した場所のような360度の急カーブ。かなりスリリングな運転でした。



Sさんの知人のレストランは、F1のモナコGPのコースの真上にあり、シーズン中はお店からレースが見れるという好立地。イスがF1カーの座席と同じデザインだったりして凝ってた。そこでランチをごちそうになってしまいました。

お店からモナコ駅までの道のりにはカジノがあったり(その日は定休日で人気はなかったけど)、海岸ではヨットやボートを楽しむ人がいたり。とてもきれいな街並みで、予定外ではあったけど来れて良かった。(Sさんに聞いたところによると、洗濯物を外に干してはいけない、というルールがあるとか。)

Sさんはとても優しい雰囲気の人で、ゆっくり歩きながらモナコを案内してくれ、お互いの旅の話をしました。

結局、タクシー代は日本に着いてから書留で送ります、と住所を教えてもらいました。

バス乗り場で見送ってくれて、なんて親切な人に出会えたんだろう、と車内で涙ぐんでしまいました。

その後、私はニース~バルセロナ~パリと旅を続け、無事に帰国。

Sさんが帰国する時期に合わせて、私は感謝の手紙を入れた現金書留を送りました。(タクシー代、バス代などをざっくり計算して5000円)

数日後、なぜかSさんから現金書留が届きました。

中を見ると、私が送った金額がそのまま入っていて、次のような手紙が添えられていました。


「イタリアでの出会い、私は感謝しています。あの出会いがなかったら計画通り学習は進まなかったと思います。
トリノの美術館やアオスタまで行けたことは神様が天使をつかわして下さったと思えるくらい、貴重な時間が生かされた思うと、感謝の気持ちで一杯になります。本当にありがとう。

それと、何だかおかしくなっている日本。
バランスの良い人たちがあまり無理をしないで良い行動をとれば、自然に快復すると私は思ってます。
あなたはバランスの良い環境に学び、育った方。今の日本の何が変なのかわかっている人。だから自然体で行動すれば、傾いている日本をまともにさせる優秀な人達の一人であると、私は御見受けしました。

お金と時間にケチな(大切にする)私が贈る御礼、少ないですが、受け取ってください。
御名前だけ記憶しておけば、数年後お会いできるかもね。私は私の成長が楽しみです。

御多幸お祈りします。ありがとう。心は少年のSより。」


借りたお金を返す、当然なことをしただけなのにここまで褒めていただいて恐縮でした。

感謝するのは私のほう。あの日は間違いなくSさんが私にとっての「その日の天使」でした。

その後、年賀状のやりとり(Sさんはいつも旅先の素敵な絵を描いた年賀状をくれた)が続いていたのだけど、数年前からSさんからの年賀状が届かなくなってしまいました。

最後の年賀状には、体調があまりよくない、ということも書いてありました。

結局、再会はかなわないままだけど、私は一生Sさんを忘れないと思う。

写真も撮ってないけど、Sさんの表情はまだ記憶に残ってます。

つらいな、と感じたとき、この手紙を読めば立ち直れる。

私はあの頃より成長できてるかな。

モナコの風景をみると、あの時のことが思い出されるのでした。

(長文を最後まで読んでくださってありがとうございます)











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Last updated  2009/06/08 10:13:49 PM
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