「 象の背中 (2007) 」
死期を悟った象は群れから離れ、ひっそりと最期を迎える場所を探して旅立つ
監督は、「マナに抱かれて (2003) 」、岸谷五朗版「愛の流刑地(2007)TV 」監督を務めた井坂聡。
主演は、「Shall We ダンス (1996) 」、「THE 有頂天ホテル (2005) 」、「SAYURI (2005) 」、「バベル (2006) 」の役所広司。
共演は、「アラカルト・カンパニー (1987) 」以来20年ぶりの映画出演となった、今井美樹。アニメでは、「ブレイブ ストーリー(2006)」で運命の女神の声を担当していましたね~。
Story : 突然、末期の肺がんで余命半年を宣告された48歳の藤山幸弘は、残された時間をどう生きるか選択を迫られる。妻と二人の子どもの事はもちろん、建設会社の部長として精魂傾けてきたプロジェクトも気掛かりだ。しかし、結局は延命治療を拒否し自分なりに人生を全うしようと決断する。激痛に耐えながら心残りのないように最後の別れを告げておきたい人たちを訪ね歩く幸弘だったが、妻の美和子には事実を言い出せずにいた。
[ 2007年10月27日公開 ]
ー 作品情報 より ー
この映画を観る前に、役所広司と今井美樹のインタビューをテレビでみたのですが、役所広司は末期癌に冒された役作りをするために、「もうこれ以上やせないでください」とドクター・ストップがかかるほどの徹底したダイエットをしたそうです。
なるほど、この映画の中で治療を拒否して倒れてターミナル・ケア施設に入るまでには、びっくりする程のやつれようでした。彼の演技は大変評価に値する物でした・・・・・
しかし、映画の中で感じられる事は、仕事も家庭も順風満帆で充実した人生を送って来た余命半年と言う癌の宣告と言う残酷な事実以外には、一貫して「 きれい事 」ばかり・・・
利益、コスト優先、競争社会のまっただ中の会社で、主人公のただならぬ態度に、なにも聞かずに自分の会社の立場も顧みず彼の意志を応援する同僚、母には内緒だと言われ父から自分が余命半年の癌だと告げられその意志を受け止め努めて明るく応援する息子、そしてなんの見返りも求めなずなんのあがきも見せない愛人の存在、多感な時期に一瞬にして理解を示して明るく振る舞う娘、財産なんかいらないと啖呵を切って出て行った弟のためにお金を用意する兄。
そして、なによりも、上品で綺麗なだけの妻・・・・・。
そんな印象しか残りませんでした。
これは、ある意味、男のエゴというか、夢見る理想的な姿を作り上げた偶像なのでしょうか・・・・
延命治療を拒否し、死ぬときまで生きていたい、そんな自分の人生の決断は個人の意志として、ある意味選択肢の一つでもあるのかなと思います。この映画を観ていて、私も万が一そんな残酷な宣告を受けたとき、もしかしたら、そういう選択をするかもしれないなとも感じました。
余命半年なら、病院のベッドで辛い抗ガン治療を受けてベッドに寝ているだけの生活が待っているなら、出来る限り自分の愛する者の側で心残りのないように身辺整理をして死にたい。・・・っと
しかし、冷静に考えてみれば、現実はこんな簡単なものではあり得ないでしょう。
笹野高史が演じた、主人公藤山幸弘の会社の犠牲になって会社が破産し妻とは離婚し家族と離ればなれになった上に癌に冒されて延命治療をやめた、元取引相手高木が去って行く後ろ姿こそ「像の背中」のような気がしました。
「今」この幸な180日間を、生きていく・・・・。なんって宗教の宣伝文句のように、えそらごとのように聞こえてなりません。
最も納得するシーンは、愛人に骨を分けてあげるてくれるように岸部一徳演じる兄幸一に遺言を残そうとしたとき、幸一が弟幸弘を叱り付けるシーンです。
そして、涙もろい私があまり泣けなかったこの映画のかなで、唯一涙が滲んだのは、兄幸一が、ものものろの思いを込めて 「長男なんってめんどくせ~な~」っと鼻をすするシーンでした。
残されたものがこれから生きていく長い人生で背負って行かなければならいもの。それは決して軽い物ではない・・・・っと言うことも。
エンドロールで流れるケミストリーのテーマソングは素敵でした。映画が終わってエンドロール中に途中退席する人が少なかったのは、みなさん、それぞれの自分の人生に思いを馳せながら、この曲に聴き入っていたからなのでしょうか。
~おしまい~
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