2024/01/07
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

・ニーポートとモーゼル

 こうした一連の動きの原点となったディルク・ニーポートが、なぜモーゼルで FIO Wines をはじめることにしたのだろうか。 1987 年、父の醸造所で働き始めた年にディルクはモーゼルを初めて訪れた。中流域のブラウネベルクにあるフリッツ・ハーグ醸造所( Fritz Haag (weingut-fritz-haag.de) )の醸造家ヴィルヘルム・ハーグを訪問し、ポートワインとは真逆の、アルコール濃度が低く軽やかで繊細、精緻でエレガントなリースリングの味わいに深い感銘を受けたという。ちなみにディルクの母はドイツ人で、ドイツ語は母国語のようなものだ。

2008 10 代だったが、北米のインポーターが主催したカリブ海のクルーズ船上試飲会でディルクに出会った。顔見知りのワインジャーナリストに「ディルクは君のワインをきっと気に入るはずだよ」と唆されて、挨拶に行ったのが最初だった。

だがその時ディルクは、フィリップのワインをあまり気に入らなかったという。アロマティックでアルコール濃度も高めで、ディルクの理想とするモーゼル産リースリングとかけ離れていたからだ。にもかかわらず、あるいはだからこそ、ディルクはフィリップをドウロに招待した。そしてディルクの元で三カ月働いて帰ってきた時、フィリップは自分の進むべき方向性を見つけていた。モーゼルでしか出来ない、軽く繊細でエレガントなスタイルを目指すのだ、と。

アルコール濃度の高いパワフルなスタイルは、他の産地に任せておけばいい。熟し始めの糖度が低い段階で収穫して、アルコール濃度は高くても 12% 前後を目指す。圧搾前に果皮・果肉を果汁に漬けて香味成分を抽出する手法も捨てた。そのかわり、醸造に時間をかけることにした。多くの生産者は収穫翌年の春に瓶詰を始めるが、フィリップは短くて 1 年、長い時で 5 年間、ステンレスタンクか伝統的なフーダー樽で澱引きせずに熟成し、さらに 2 年間瓶熟してからリリースする。これらの昔ながらのモーゼルの醸造手法を、試行錯誤を通じて復活させた。

(つづく)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2024/01/07 10:28:35 AMコメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Comments

李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
mosel2002 @ Re[1]:ひさびさのドイツ・その54(03/14) pfaelzerweinさん >私の印象では2013年…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その54(03/14) 私の印象では2013年からは上の設備を上手…

Profile

mosel2002

mosel2002

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: