sinokの【私情まみれの映画考察】

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サイド自由欄

February 18, 2007
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カテゴリ: 映画「あ」行
原題は「オルフェーヴル河岸36番地」。ここはパリ警視庁の所在地、つまりタイトルは「パリ警視庁」となるのだが、邦題の方が映画の空気感はよくでているように思う。近年では傑作といえる邦題ではないだろうか。この映画は、パリ警視庁の二人の警視、レオ(ダニエル・オートゥイル)とドニ(ジェラール・ドパルデュー)の、醜い争いの物語なのだから。

一般的な映画案内によれば、正義感に溢れる警視レオが、彼に嫉妬するドニによって陥れられていく、という話となっているが、実際はそんな単純なものではない。
レオは正義感も人望もあるにはあるが、決してクリーンな警官ではない。冒頭の、飲み屋での大騒ぎ(なんで警官が飲んで発砲するんだ??)、情報屋との密接な関係からみればよく判る。そういうところが人気がある所以なのだろうが、彼が足を踏み外すのも同じ理由だ。
ドニは結果的にレオを刑務所送りにするが、はじめから計画していたわけではない。すべては自己保身に走ったがために、結果としてレオをどん底に突き落としてゆかざるをえなくなる。
次々と起こる出来事の前に、2人の男はなす術もなく押し流されてゆくのだ。
そして彼らの争いに決着をつけるのは、レオでもドニでもない別な人間だ。主人公2人は、自分の意思では何一つ運命に抵抗できなかったというのに、この人物は自分の意思で物語に幕を引く。映画中、もっとも無力な1人に見えたのだが・・・。

運命を前にもがく、という物語は、なぜか男でなければ似合わない。女は運命に流されることも、立ち向かうことも、男より自然にやってのけるからかもしれない。
ましてや、もがく姿に色気があるなど、絶対に男にしかありえない。レオもドニも、物語が進み、途方にくれて立ちすくむ姿は、たまらなく色気がある。
物語で女たちに愛されるのはレオだが、私はドニもいとおしい。哀れでならない。ドニの妻が、彼を抱きしめてやれたなら、もっと彼の人生は変っていたように思うのだが。

まして、彼の心の中には、いまだに昔愛したレオの妻・カミーユがすんでいるのだから・・・。
そうだ、つまり、愛した女の愛を得られたか得られなかったか、それだけがこの2人の運命を分けたのだ。


こんな、久々に本格的な男の映画が、福岡ではミニシアター系の映画館でしか、しかも半日しか上映していない。シネコンではやってくれないのだ。おかげでこっちは観にいくのが面倒でたいへんだった。
まあ、マイナーなフランス映画だから仕方ないか・・・と思ったが、ちょっと待て。この映画の主演2人は、ハリウッドで言えば『ヒート』のロバート・デ・ニーロとアル・パチーノみたいなものだ。フランス映画にうとい私だって知っている。なんでこんな、超級スター競演映画が、もっと大きな映画館にかからないのか・・・・。
まあ、日本でどこが配給するかって問題もあるんですけどね、それにしたってこれはあんまりではないの?
いま、大手シネコンにかかっている映画の大半は観にいく気にもならない邦画ばかり。正直いって、この邦画バブルはげんなりしている。
なぜって「人が死ぬ話」があまりに多い。病気になったり事故にあったりしないと、物語にならないのだろうか。そして役者は総じて若い。少女のころから青春映画になんの魅力も感じなかった私にとっては、面白くも何にもない。
しかも同じ「人の死」を扱っていても、それら邦画の予告編を見た限りでは、『ミリオン・ダラー・ベイビー』あたりと比べると、あまりに痛みが少ない。美しく、美しく、そしてとても嘘くさいのだ。
そんな同じような匂いの映画が並んでいると、それ以外の邦画も見る気が失せてくる。悪循環だ。だからって、今の洋画が全部いいとも思わないけど。

そんな私の気分を置いていくように、2006年は邦画の興行収入が洋画を抜いたという。
その昔映画会社の宣伝部に憧れたものだが、今は入社しなくて良かったと思う。

まあ、映画は仕事にするもんじゃない、観るもんですねぇ。





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最終更新日  February 18, 2007 06:31:26 PM
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