
♪スタジアムに響く歓声を吸い込んで-。すっかり耳慣れたフレーズが流れれば、『勝利の方程式』の合図だ。マウンドに上がった藤川が腹筋のあたりに、グイっと力を込める。圧巻の5奪三振ショーで、横浜打線をひとひねり。今季8度目の零封勝利を演出してみせた。
勝利だけでは満たされないプライドを、炎の3連打が示した。前日17日は0-1の敗戦。そしてこの日は、暴投でもらっただけの1-0という不甲斐ない展開…。磐石投手陣の快投で、守りの方が大観衆が沸く“逆転現象”が起こっていた甲子園。八回二死走者無しからの2得点が、攻撃陣の譲れぬ意地だった。
左翼線にフラリと上がった打球は、振り抜いた分だけ、野手の間にポトリと落ちた。13打席ぶりの『H』。一気に二塁を陥れてチャンスメークをすると、続くシーツが初球のストレートを中前に弾き返す。鳥谷の劇走で間一髪ホームベースをかすめ取り、待望のバットによる1点を奪った。
ろ。俺はおまけや」。そう謙遜した主砲だが、最後に1本が出たことに「どうやろな。点が入った分だけ、良かったけどな」。この日は、恒例の試合後のスイングチェックはなし。ナインに混ざって、満身創痍の体を引きずるように戻っていくアニキの背中に、主砲の意地が浮かんでいた。