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Feb 15, 2007
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 ラルフ・イーザウの『暁の円卓』をどうにか読みました。
 ストーリーや歴史観には、不満がありますが、描こうとしている世界はなんとなく共感をもったり、感嘆を覚えるものでもありました。
 ミヒャエル・エンデに見出されたという著者は、ドイツのファンタジー界を代表する作家となっていますが、現代文明の様々な矛盾を語ろうとしています。この『暁の円卓』は、原著は4巻、日本語翻訳は9巻という大作となっていますが、戦争の世紀、テロの世紀と言われる20世紀でしたが、なんとか希望をもって21世紀を迎えたいという著者の思いが込められていたように思いました。
 主人公は、世紀の子として、1900年に生まれ、100歳の寿命を与えられます。使命は、テロの先導者である『暁の円卓』を滅ぼすためですが、第一次世界大戦において、勝者も敗者も大きく傷ついたこと、さらに、より悲惨な形(原爆の投下)で第二次大戦が終わり、その後も暴力が耐えない時代をたどります。歴史的事件の要所、要所に主人公が新聞記者として取材する傍ら、『暁の円卓』の一員を殺していくというもので、テロリストとの戦いや暴力を否定しているというところと矛盾する設定のような気がしました(そういう意味では『ネシャン・サーガ』のほうが、光と闇の裏表の関係を描こうとしていて、好意的に読めました。)。
 また、結局ヒーロー物という設定があるため、なんでも一人で首を突っ込み、解決していくという展開には、途中から読む気が失せるものでした。そして、最後も、悪の権化を抹殺するという解決の仕方はどうもついて行けません。すなわち、大規模な戦争やテロ行為という悪の問題は、ある意味で世界の支配的立場の人々だけの問題ではなく、それを許したり、無関心でいるところの人々の問題に掘り下げていかないと、複雑な現実をただ傍観者的にしか見ないものとなってしまうのです。ファンタジーも含めて小説の課題は、ただの娯楽というだけでなく、そこに生の人間や社会が描かれ、葛藤とともに希望が見出されることに大きな意味があるように思えますので(もちろん、そう一義的でもないと思いますが)、心ある作家にはそれなりのものを描いて欲しいと思っているのです(そういう意味では、決してファンを止めたわけではありません)。
 しかし、ドイツではビン・ラディンのテロ行為などについて叙述されている最終巻が発刊された9月に、アメリカの世界貿易センタービル爆破の事件が起こったということで、大きな話題になったとのことでした。また、ドイツ人でありながら(というのも偏見ですが)、日本の歴史を詳細に把握しようという姿勢には驚きを覚えますが、昭和天皇や伊藤博文の描き方も歴史的認識とは言いがたいものでしたし、戦前の日本のアジア主義や政治システムについてもう少し説得力ある記述が欲しかったです(図書館から借りて正解だったかな...)。
 それから、マルティン・ニーメラー牧師が登場したりするのは、日本の小説ではありえなさそうで、ちょっと嬉しかったですよ(ドイツならではでしょうか。K.バルトは登場しなかったなぁ。確か。)。








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最終更新日  Feb 16, 2007 10:23:21 AM
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Re:『暁の円卓』(02/15)  
ふみ さん
現在、「暁の円卓」を読み返しているところです。まだ歴史は教科書上のものしか知らない私にはすごく新鮮で、この本がきっかけで世界史を授業選択しようと思っています。 
確かに日本についての記述は、外国人特有だなあと思わずにはいられませんが、作者の日本への入れ込み方がみえてきて、その熱心さには感心してしまいます。
「ネシャン・サーガ」はキリスト教色が本書より強くて、考えには共感しにくかったです。
それでもどちらの本も大好きです☆ (Oct 25, 2007 07:58:40 PM)

Re[1]:『暁の円卓』(02/15)  
Preacher  さん
ふみさん
コメントありがとうございました。
本当に、世界史に対して興味を持たせられますね。

ネシャン・サーガは、キリスト教的ではあるのですが、やや善悪二元論的な世界の考え方もあって実はキリスト教という観点からもやや違和感があるのです。
ただ、太古の言語がヘブライ語であったり、聖書の言葉の引用もあったりで、知る人はニヤリとしてしまうでしょうね。
(Oct 26, 2007 10:07:45 AM)

Re:『暁の円卓』(02/15)  
レベッカがさらわれたのがショックすぎて読むのをやめてしまいました…
普通に子供ができて一緒に老いさらばえて欲しかったです… (Dec 2, 2014 01:18:36 AM)

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