悩める裁判員経験者・似蛭田妖のブログ

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2021.05.08
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「大崎事件と私」の鴨志田弁護士へ(3)~警察に騙される解剖医。 」の続きです。​

 鴨志田先生。警察や検察の情報によって誤導されるのは、何も、大崎事件の解剖医だけではありません。冤罪事件一般にありがちな事だと思います。

 また、冤罪事件でなくても、「より重い刑罰を背負わせようとする警察や検察の思惑に引っ張られて誤った所見を述べる解剖医や鑑定医がいる」と多くの識者が言っています。

 僕が補充裁判員を務めた対馬放火殺人事件では、殺害された父親と娘さんが殴打行為を受けた順番と時間が問題とされました。

 検察が主張したストーリーでは、まず最初に、夕方頃、父親が大量出血を伴なう執拗な殴打行為を受け、意識不明の状態にされた。そして、娘さんはそれよりも、数時間遅れの夜、同様の殴打行為を受け、意識不明の状態にされた、ということになっていました。

 検察は、この見立てが正しい事を証明するために、N大学医学部法医学教室のI教授を鑑定証人として出廷させ、I教授に、白血球の一種である「好中球」が受傷部位に集まる特性によって、「父親の方が娘さんより数時間早く、殴打行為を受けたと言える」と証言させました。

 このI教授は、放火殺人事件の被害者である父娘2人の遺体を事件後、詳細に調べた方です。そして、法医学のプロとして高い評価を受けている方です。

 ところが、この鑑定手法には、科学的な穴がありました。

 これに、弁護側と裁判官、正裁判員が誰も気づかない。

 I教授と検察が気付いていたことは間違いないと思います。法廷に出す前に、I教授が偽証罪に問われないように、ぎりぎりセーフの証言をさせるために入念に確認と打ち合わせをしたでしょうから。

 実は、殴打行為を受けた部分の組織に好中球が集まる特性による検察主張の正当化。つまり、「殴打行為を感知した好中球は時間経過に比例して、より多く受傷部位に集まり、規則的に数量を増していくから、遺体の傷口を調べれば、好中球の数量から逆算して、受傷を受けた犯行時間が分かります。この対馬放火殺人事件の被害者2人が殴打行為を受けた時間も当然分かります」という検察とI教授の説明は客観的事実に反するものでした。

 だから、「父親が先に殴打され、それより、数時間後に娘さんが殴打された」という検察所論が科学的に証明されることは無かったのです。

 後で聞いた話ですが、傍聴した新聞記者の多くが、「検察が話を作った」という印象を持ったそうです。

 鴨志田先生。なぜ、この検察所論が法廷で通らなかったと思われますか?

 それは、この僕、似蛭田妖が鑑定の「穴」に気付いて、メモを左陪席判事に回し、代読でI教授に質問したからですよ。勿論、この質問内容は裁判長が検閲しましたが。

 ご存知の通り、法廷で「裁判員の方、証人に質問はありますか?」と裁判長が裁判員席に振るのは、検察弁護側の主尋問、反対尋問が終わり、それに続く、裁判官の質問も終わった、本当に、最後の最後のタイミングです。

 そこで、僕がメモで左陪席判事の代読で質問した内容に、I教授は降参され、検察官3名は凍り付きました。

 I教授は、僕に向かって、「良い質問をされましたね。貴方の仰る通り、この好中球による鑑定は誤差が大きく、誤差の範囲は、検察が主張するような1、2時間程度ではなく、数時間、場合によっては5時間ほどのこともあり得ます」と白旗を揚げられたのです。

 この答弁を聞いた、職業裁判官3人(裁判長、右陪席判事、左陪席判事)が僕に続き、立て続けにI教授に質問。この論点に関する検察主張を完全に壊してしまいました。

 鴨志田先生、詳しくは、本ブログ2020年3月29日分「 誤差が大きすぎる法医学鑑定。本当は犯行時刻なんて分からない。 」をご覧くださいませ。

 実は、後に、訴因変更が行われたのですが、検察は、この論点が崩れたため、鉄工所で大量出血の痕跡が発見されなかったことと併せて、そうせざるを得なかったと多くの識者が言いました。

 結局、父親が夕方頃、鉄工所で殴打され、意識を失い、娘さんはその数時間後の夜、自宅で襲われて、殴打され、意識を失ったという検察のストーリーは証明されず、そのストーリーも否定は出来ないものの、そのストーリーと同程度には「2人はほぼ同時刻に殴打された説」、それに「娘さんが先に殴打され、父親はそれより後に殴打された説」も否定できないという結論になりました。(傍聴すれば分かります)

 ちなみに、この論点に限らず、他の論点でも、検察が有罪の根拠として法廷に出した材料はどれも同様にいい加減で脆弱なものだと、多くの識者は言っています。

 鴨志田先生も、僕が質問した好中球による鑑定の「穴」をお知りになりたいと思われるので、お話します。

 僕がI教授に質問した内容は以下の通りでした。

「好中球が受傷部位に集まる数量、速度と温度の関係はどうなっているのですか。I先生は気温何度を基準にして、今までの話をされたのですか。父親が暴行を受けた鉄工所には暖房が無く、12月の寒い海風を受ける場所にあったから、その数量、速度は影響を受けるのではないですか。また娘さんが殴打された場所は室内で、暖房があったので、これも影響を受けるのではないですか。この暴行を受けた両者の状況の違いから、誤差が1,2時間だから、暴行を受けた順番は父親が先で、娘さんが後だと、本当に断定できるのですか?」


 鴨志田先生。I教授は、大崎事件で遺体を検分した解剖医より学識と実力がある法医学の医師です。それでも、このような鑑定意見を述べられました。

 I教授は、事件後、被害者父娘の遺体を警察から預けられ、早い段階から、警察、検察と何度も密に接触されました。

 当然、警察と検察の見立てたストーリーを知っておられたか、想像がお出来になられたと思われます。

 もし、警察、検察が、「自分達は、娘さんが先で、父親が後だと見ている」と言えば、鑑定意見が上述の通りになったかどうか疑問だと、これもまた、識者が言っているのです。

 率直な話。一般的に解剖医や鑑定医は、警察、検察に振り回され、科学的に正しい判断をすることが阻害される傾向があると、僕は考えています。
































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Last updated  2021.05.08 13:30:43コメント(0) | コメントを書く


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