成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.08.17
XML
カテゴリ: 高速ツアーバス
会社のPCに不具合があって、今朝から社内の共用デスクの共用PCを使って仕事をした。本来は、地方支社から本社に出張してきた社員などが使うためのものだ。使ってみると不便ではなく、むしろ余計な電話なども入らないし気分転換にもなるし、思ったより仕事がはかどった。そもそも社員のデスクを固定せず「自由席」にして、その日ごとに社員が好きな席に座って仕事をする会社が増えているというニュースはよく耳にするのだが、まさに瞬間的にその状態。ただ、私は頭が固いのか、気分的には、それでも「自分の席」がないと想像すると落ち着かない。一方で、理屈で考えると、実際にはほとんど紙の資料は使わないから、やってやれないこともない気もするし。

少し違う話かも知れないが、私のオフィスは1棟まるまるを私の会社のグループが使っていて、ビルの上にはロゴマークが掲げられているから、よく「立派なビルを建てて」などと言われるが、実際には賃貸だ。ちょっと前の感覚で言うと、会社の規模がある程度大きくなると「自社ビル」を建てたり保有したりするのが当たり前だったのだろうが、不動産を保有することによる様々なリスクやコストを考えると1棟まるごと借りるほうが合理的ということらしい。これからは、自宅にしても、「土地を買って家を建てる」という旧来の概念はどんどん流動化していくだろう。終身雇用制のもと一生同じ会社が面倒を見てくれる時代は終わりつつあり、転職や転勤、家族構成の変化に合わせて、その時々のライフスタイルに合わせた家を借りる時代になるだろう。それに限らず、世の中のあらゆる物事が「固定的」「絶対的」から「相対的」「流動的」になりつつある。

実はここ3年で「高速バス」のビジネスも相対化、流動化しつつある。許認可が必要な高速路線バスに対して、そもそも高速ツアーバスというモデル自体が総じて流動的ではあるのだが、その高速ツアーバスという業態の中でもさらに流動化が進展している。いくら許認可が簡便といっても、これまで高速ツアーバスを運営するためには、パンフレットを相当数印刷して代理店に配布したり、予約センターの体制を整えたりする必要から、あらかじめ商品内容、具体的には「路線」「スケジュール」「料金」を、先の数か月分まで決定する必要があった。また、相応の固定費が発生する以上、平日も週末も夏も冬も運行しないと回収できなかった。しかし今は違う。確実に満席になるお盆のピーク日だけ運行することにして私のサイトに商品を登録してしまえば、利用者が希望の乗車日や区間を選択して「空席検索」ボタンを押した際に表示される検索結果上では、通年運行の会社と同列に並んでいるのだ。

高速ツアーバスの会社でも、流動化の度合いはいくつかある。さくら観光やロータリーエアーサービス(キラキラ号)は、毎日同じスケジュールで運行されるから、その意味では高速路線バスに比較的近い「固定的モデル」である。平日と週末の料金の差も小さく、かつ、あらかじめ決めたパンフレット価格と常に同額である。次に、ウィラートラベルや富士興商(旅の散策ツアーズ)は、運行スケジュールこそ「固定的」であるが、自社販売分と私のサイトなどでの代売価格を明確に分けることで、代売サイトではレベニューマネジメントを導入し繁閑によって価格がリアルタイムに、かつ大きく変動する。最後に、旅クラブジャパンやトラベルセンター竜ヶ崎、ワールド自興といった会社は、私のサイトでの販売状況や他社の増発設定のバランスから「来週の金曜は青森行きが1台足りない」というような状況を判断し、自社が抱えているバスの台数とを見比べながら臨機応変に商品を設定する。パンフレットも印刷しないし、そもそも固定された「路線」という概念さえない。料金も、基準になる「標準価格」のようなものは一切なく、その日その日の「時価」を設定する。

「路線」という概念さえ存在せず、その日の状況に合わせて商品を作るというと、「固定的」ビジネスを続けてきた既存事業者の方は皆さん驚く。恐怖感というか、何ともいえない気持ち悪さのようなものを感じるだろう(「自分のデスク」がないと落ち着かないのと同じだろう)。しかし運用上は「貸切」と同じである。「来週の金曜日、新宿西口●●ビル前に22時に配車。翌朝7時に大阪駅周辺到着」という仕業なら、走るほうから言えば、「来週の金曜日、都内の●●高校前に22時配車。応援団を乗せて翌朝8時までに甲子園球場到着」と何も変わらない。変わったのは、販売サイドのあり方だけである。

高速バスビジネスにおける「相対化」「流動化」は、準拠する法律の違いなど既に大きく飛び越えたレベルで進行しつつある。もちろん、高速ツアーバスでもリアルな(ウェブ以外の)販路はまだまだ残っているから「固定的」な商品づくりが完全に無くなってしまうことはないだろうし、何でもかんでも「流動化」というのは、利用者側のわかりづらさを誘引し、結果として利用者が背を向けるに違いない。ただ、世の中全体に流れる「相対化」「流動化」という大きな流れをよくウォッチしておかないと、利用者から置いていかれる蓋然性が大きいのもまた事実である。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.08.17 18:01:43
コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

nalys

nalys

Comments

京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

Calendar

Archives

2026.10
2026.09

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: