成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.11.21
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カテゴリ: バス産業
このところ、日本の歴史に関する本を読むことが続いている。まずは 『殉教』 (山本博文)、そして 『あの戦争は何だったのか』 (保阪正康)。取り上げた事象は異なるが、前者の副題「日本人は何を信仰したか」が共通している気がする。

前者は、江戸初期のキリシタン弾圧における殉教の事実と、なぜ日本においてだけ大量の殉教が生まれたのかを克明に描いている。山本氏は、拷問と死を覚悟してキリシタン禁制下の日本に潜入してくるカトリック宣教師の側には「華々しい殉教」への強い意思があったとするが(もともと、イエズスの磔刑を原点としている宗教ではある)、同時に、大量に殉教した日本人武士階級には「潔く死ぬことを美しい、誇らしいと感じる日本人の武士的エートス」があったとする。また、聖遺物信仰的に殉教者の遺体に群がった民衆の(土俗的信仰の延長としての)熱狂と、わずか20年ほどでカトリックから離れていった「日本人の心変わりの恐ろしさ」にも注意深く目をやっている。私自身は特に、「潔く死ぬ」美学に、ついつい自分も同感しがちであるからこそ、カトリックの教義に殉じて死を迎えた彼らが、実は本質的には旧来の日本的価値観に基づいていたのではないかという考えに目からうろこであった。

そのうえで、後者、すなわち太平洋戦争である。保阪氏はこの戦争の話を、旧日本軍の組織の説明から入り、「開戦へのターニングポイント」として2・26事件から叙述を始める。天皇親政を目指す軍人の間では「小善」と「大善」という二つの考え方があり、一軍人として天皇に仕える「小善」に対して、しだいに「天皇の大御心を実現するために“一歩前に出て”仕える」ことをよしとする「大善」を一部の急進的な軍人が実現しようとしたのが同事件である。その後は、開戦の決断、開戦後の戦い方そして負け方、ただひたすら「坂を転がり落ちるよう」である。<無謀とわかっていながら、しかし誰も「ノー」とは言えず、曖昧なまま始まってしまった戦争><実際に「真珠湾攻撃」は、その後に上陸作戦を展開しようとか、ハワイを制圧しようとか、次に何をしようという戦略は全く考えられていなかった><それほど、大本営は混乱し、また無為無策であったのだ。戦略を立て直そうなどと考えることもなく、言ってみれば“下手な博打打ち”のように「もう一度、もう一度」と同じ手を繰り返すだけであった>。

やがて<その大本営は、自分たちに都合の悪い状況を隠すことのみに汲々とし、決して自己省察などしようとしなかった。「戦争の目的は?」と聞かれれば「自存自衛のため」などときれいごとを述べているだけ>といった状況に陥り、ついには「敵の戦闘機は、高射砲で打ち落とすのではなく精神力で打ち落とすんだ」「アメリカ軍が来たら竹槍で刺し違える」といった半狂乱の時代を迎えていく。

<喩えていえば台風が来て屋根が飛んでしまい家の中に雨がザーザー降り込んでいるのに、誰も何も言わない。わざと見ないようにして、一生懸命、ドアの戸締りなどに精を出している。だが、そんな組織の“体質”は、今を顧みても、実は、そう変わらないのかも知れない>という氏の指摘は全く同感である。たしかにその意味で 『日本史の考え方』 (石川昌康)で、石川氏が大胆にも壬申の乱と明治維新の二つのエポックから日本史を見ようとしていることもよく理解できる。白村江の戦いで敗戦し、当時の大帝国であった唐から攻め込まれる恐怖のもとに壬申の乱という国家を二分する内戦が起き、結果として日本の古代国家制度が整った。ペリーが黒船に乗ってやってきたから、戊辰戦争が起き、新しい日本が生まれた。何かよほど大きな、目に見える形での「外圧」がない限り、自ら変革しようとしないのが私たちかも知れない。さらに「自存自衛のため」「アジアの解放」といった教条的なお題目がそれに加われば、自己省察さえ忘れてしまうのだろう。

「乗客が一人でもいる限り走り続ける」というお題目は、顧客志向を明確にする社内スローガンには適しているかも知れない。しかし経営者や今後の経営を担う者までがそれに酔ってしまっては、会社や産業を正しく導くことはできない。私自身、「キリシタンとして名誉ある死を迎えるため潔く首を差し出し」「国民の血の最後の一滴まで戦う」姿に多少の(あくまで多少の、だが)共感や美学を見てしまうだけに、その姿をよき反面教師としていかなければならないと思う。自ら望んで過酷な拷問に耐え名誉ある死を望んだのはわずか400年前の、そして、正しい戦争を戦っていると信じ神風が吹くことを望んでいたのは、ほんのわずか前、祖父母の代の、ほかでもない、いずれも日本人だったのだから。





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Last updated  2009.11.21 20:15:50コメント(0) | コメントを書く


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