成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.11.25
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カテゴリ: バス産業
日本最大のバス事業者である西日本鉄道がバス事業を本格的にリストラ

※バス事業の現状を客観的に把握しようとするとネガティブな発言が多くなってしまうが、私自身は決してバス事業の縮小を望んでいるわけではない点、念のため明記しておく。

まず、公表されている決算資料によると、昨年度の同社バス事業の赤字額は年間23億円である。一方、売上高ではバス事業の6割に満たない鉄道事業だけで45億もの利益を出しており、運輸部門全体では差し引き20億強の利益を残している。そのほかに、不動産や流通といった「副業」で合計80億の利益があるから、会社全体では100億円の黒字、というのが昨年度の概観だ。そのうえで、上記新聞報道を読むと、昨年は23億だったバス事業の損失が本年度は30億にふくらむ見込みという。

整理すると、(それを「いい」とか「悪い」とか言うつもりはなく、事実として)次の2点が挙げられる。まず一つ目は、“1000円高速”の件があろうとなかろうと、同社のバス事業はもともと巨額の赤字を出していたということである。同社は早期から地域分社を進めるなどコスト削減を図る一方、何度も繰り返しご紹介しているように九州内で強いリーダーシップを発揮し積極的に高速バス事業を展開し新しい収益源を開拓してきた。ただこうやってあらためて見ると、高速バスの利益で地域の路線バスの損失を埋めてきたという表現は決して間違いではないものの、厳密に言うと「高速バスの利益で、地域の路線バスの損失の“一部”を埋めてきた」である。地域の自治体等から欠損補助を受けている路線もあるであろうにもかかわらず、そして高速バスの利益からの補填があったにもかかわらずバス事業全体で23億もの赤字が出ているのである。ただ、それでもバス事業を維持できるのは、バス以外の鉄道や流通などの事業で利益を出せる体質だったからだろう。

もう一つ言えるのは、仮に本年度の赤字が昨年より7億円増えたところで、運輸部門(バス+鉄道)全体でも、また全社においても「まだまだ黒字」であることだ。つまり「会社全体で1円でも黒字がある以上、乗客が一人でもいる限りバスを走らせるんだ」という根性論、精神論を述べるつもりなら、余地はまだまだあるということだ。もちろん、民間企業である限りそのような精神論は通用しないが。

むしろ、売上(営業収益)においてバス事業などよりもかなり大きな規模を持つ流通業やレジャー・サービス業の方が、昨今の不況の影響を受け利益の見込みを落としているかも知れない。その数値は公表されていないので想像するしかないが、一般論として、これらの事業は景気変動の影響を大きく受ける。その利益の圧縮幅は、バス事業の赤字の増加額7億円よりもっと大きいかも知れない。もちろん“1000円高速”の特に九州における高速バスへの影響を否定はしないが、本年度の同社のP/Lに与えるインパクトが、“1000円高速”の影響によるものが最も大きいのかどうかは外部からはわからない。

以上は、あくまで公表されている情報を元に私が個人的に解釈したもので学生のケーススタディの枠を出ていない無責任なものであるが、ここからは西鉄に限らずの一般論として、あらためてバス事業を維持することの難しさについて考えさせられる(付帯事業が大きい西鉄だからなんとか対応できており、他の事業者はもっと苦しかろう)。「公共の足として、赤字であったとしても(税金から補填するなどして)バス路線は維持すべきだ」という考え方を否定する気は一切ないが、一方でこれだけの赤字を出していると言うのは、要するに「バスが利用されていないから」ひいては「バスの利用価値が低いから」に他ならない。「運転免許を持たない交通弱者のために必要だ」と本当に言うのなら、身の丈にあった事業サイズに縮小し、その代わりそれらの人たちにターゲットを絞って小回りの利くサービスに徹しないといけないが、口では「交通弱者の」と言いながら昔ながらの最大公約数的な事業を惰性で行なっていないか。

もっとも、23億もの金額を西鉄がバスのために「身を切って」投じていたことを知っている地域住民はそう多くはなかっただろうから、今般の“1000円高速”がきっかけでそのことがアピールできたなら、結果として十分に意義のあることだと考えている。既存事業者の一部には「ウチのバスが無くなって困るのは市民なのに」と市民や行政の無関心を批判する向きもあるが、バスが無くなって本当に困るのは他でもないバス事業者の社員であり、バスの存在感を訴えるための必要なアピールは怠ってはならない。大切なことは、事業者の経営者(日本型経営においては、社長個人ではなく本社部門全体)は、従業員ら多くのステークホルダーに責任を負っているのであり、お客様向けや従業員向けのきれいな言葉(「乗客が一人になってもバスを走らせる」「赤字でもバスを走らせて地域に貢献している」など)に自ら酔ってしまっては、正しい舵取りができなくなる、という点である。





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Last updated  2009.11.25 19:12:06 コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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