成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.12.28
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カテゴリ: 高速ツアーバス
年末年始の取扱高は、今のところ対前年+30%程度の成長率で推移している。伸びているのは事実とはいえ、昨年の年末年始は一昨年に対して+60%増だったわけだし、売上予算は大きく未達であり、会社の中では肩身が狭い。社内会議でこれを言うと「言い訳」と一喝されそうだが、「カレンダーがよくない」のだ。ふつう、年末年始はおおむね5日間(12月30日から1月3日まで)が休みになる会社が多いから、最高の年だと前後の両方に土日がくっついて9連休となる。昨年の場合も12月26日の夜行から「帰省ラッシュ」が始まり、1月4日の夜行まで「Uターンラッシュ」が続いた。それに比べると今年は12月29日の夜から1月3日まで。コンパクトな年末年始だ。

そもそも帰省や旅行そのものを手控えた人も多いだろう。また、航空やホテル同様、高速バスの場合も「在庫数」(座席定員)に上限があるから短い期間に人の移動が集中しすぎると満席で予約を断る羽目になるので、できれば分散してくれるほうがありがたい。「繁閑の差」にどう対応するかは、我々の宿命なのである。以前にも書いたが 鉄道の場合は最大需要量に近い供給を提供し、航空は中間的需要量に応じて機材を準備 する。それに対しバスの場合は、運行する台数を需要の大小に対応して増減できる点が大きな利点であり、それでもなんとか3割の成長を維持できている理由はこの点に尽きると言っていい。

この「満席のはずの繁忙日にも在庫(続行便や臨時便)を確保する」ことに、以前は苦労した(高速ツアーバスが始まった当初からの「利益率が低い」「あれは力がない新免事業者が走るもの」という感覚が消えず中堅以上の事業者が消極的だったし、「やってみたいけど、既存事業者から“何されるかわからない”ので」という事業者も多く、自社の旅行業免許で高速ツアーバスを運行するのはもちろんNG。各企画実施会社が運行会社としてチャーターするのも苦労していた)ものの、今では180度風向きが変わったようだ。これまで「立場上、ツアーバスは走らない」と言っていた老舗の大手貸切専業者が、各旅行会社からチャーターされ運行会社としてどんどんクルマを出すようになった。年末年始など「高速バス繁忙日」は、もとより「貸切バス閑散日」だったわけで、それに輪をかけて不況による貸切バス需要の減少と、さらに円高によるインバウンド(訪日客)激減が追い討ちをかけた。会社の存亡が問われる中、これまで「立場上」と言っていた人たちも、自分たちがこだわっていた「立場」って一体何の立場だったんだろう?と自問し始めたそうである。いざ老舗の大手組が走るとなると、出てくる台数はその辺の新免事業者とは比べ物にならない。

結果、予約人数は伸びているものの、せっかく上がった高速ツアーバスの単価(料金)は少し下がってしまい、取扱額では上記のとおり3割増にとどまる。昨年の年末は、首都圏→京阪神でスタンダード車(4列シート・トイレなし)で片道8000~9000円というのが普通だったが、今年は6000~8000円あたりに落ち着いている。一方、3列シートなどの「特車」から早々に完売する状況は未だ続いている。繁忙期の増発は、国内の貸切バスのほとんどを占めるスタンダード車にならざるを得ず、瞬間的な需要増加に合わせて特車の増発が確保できるかというとそれは難しい。だから、 以前にも書いた が、特車は早々に完売する。この年末も、3列車は首都圏→京阪神で10000円を上回る価格が付いていたにもかかわらずすぐ満席となった。

長距離夜行においては「特車」の増発便がまだまだ欲しい。しかし事業者が3列シートの貸切車を導入しても、 現在の貸切バスの販売方法 なら一般貸切で稼動することはほぼ無理で平日はクルマが遊んでしまう。最近、メディア系旅行会社(クラツー、阪急)などの「旗持ち」のツアーで「ゆったり3列シート使用」といったコースが目立ってきており、当面はその辺りと組み合わせて運用することを前提に「汎用特車」を購入できるよう導くとして、やはり最終的には貸切バスの世界でも利用者が好みのバスを選ぶ時代を実現(私たちでは「貸切バスの予約受付」もいつか開始して、幹事さんが乗りたい会社とクルマをウェブ上で選べるようにしたいと考えているが、貸切バス業界の事情が未だそれを許さない)し、一般貸切と夜行増発とで特車の仕業の補完関係を作るのが正攻法だろう(なおこれは繁忙日の増発の話で、所定車両は逆に細部まで夜行専用にこだわって満足度を高め平日の乗車率を確保することが肝要だ。繁忙日には所定便の「専用車両」と増発用「汎用特車」で多少の価格差をつけて売る。それが「お客様がバスを選んで乗る時代」なのだ)。

一方(実現可能性や現行の法制度を考えずに書くが)、スタンダードの貸切車両(特に歴史も品質もある老舗の専業者。一例:日の丸やヤサカなど)は、本当ならこの時期には短・中距離高速バスの続行便に入るのが効率がいい。乗合系事業者は貸切事業をどんどん縮小しており、以前のように続行便を出せなくなっているからだ。もちろん、「○○へは△△バス(一例:長野県へは京王の中央高速バス)」そして「そのバスは○○バスのサイトから予約できる」「予約センターの電話番号は○○」「駅前のあのターミナルから乗れる」という認知は、ここまで該当路線を育ててきた乗合事業者の「資産」だから、乗合事業者の運賃収入(売上)と、続行便として「傭車」した老舗貸切専業者へのチャーター代(コスト)との差分は、乗合事業者が利益として得ればいい。価格の低い事業者を傭車すれば乗合事業者の利益率は上がるものの、安全性を含む品質を下げる。「コストと品質のバランス」をうまくとることは、世の中の多くの企業にとって一般的なビジネスである。






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Last updated  2009.12.28 19:28:57
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Re:年末年始商戦に思うこと~単価下落と特車不足~(12/28)  
経済人@尾張藩 さん
いつも、ブログを拝読しています。
私も需要の波動に応じて、乗合及び貸切バスが相互に車と乗務員を補完していく関係が、結果としてバス事業全体の効率化を高めるとともに創意工夫も生まれるものと思います。
やはり、バス事業を「乗合」「貸切」という2事業形態しか想定していない現行法が根本的な問題だといえますね。もっと実態に即した法令に改正し、より事業者の創意工夫が収益に反映されやすい状態になることを望みます。 (2009.12.30 22:14:07)

Re[1]:年末年始商戦に思うこと~単価下落と特車不足~(12/28)  
経済人@尾張藩さん、コメントありがとうございます。
そうなのです……法制度は事業者が都合のいいように変えていいというわけでは決してありませんが、だからといって現状の制度がベストとは限りません。いろんな立場の人たちが議論を重ねることが大切だと思います。最終的にはバス事業者各社の発展につながることが大切かと。
今後ともコメントをお待ちしています。 (2010.01.05 18:15:48)

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