成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.01.24
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カテゴリ: 高速路線バス
5年ほど前(つまり私がまだ入社する前)、宿泊予約サイトとして相応の規模に育った私の会社が次に考えたのが「足回り」予約への進出であり、その第1号が「高速バス」だった(その後、航空、レンタカー、ごく一部だが鉄道の予約も始まっている)。そのとき、高速ツアーバスのみを先行して取り扱うという考えはなく、高速路線バスを運行する既存事業者に対しても熱心に提案に伺った様子だ。しかし結局、既存事業者からは前向きな返事をいただけなかった。今でこそ「高速ツアーバスの育ての親」という印象を持たれている私の会社だが、当然、当時はそのような色もついていなかったにもかかわらずだ。「高速バスの予約サイト」という概念がどうも理解されず(何度も繰り返すが「発車オーライネット」「楽バス」などは、少なくとも私たちの定義では「予約サイト」ではない。それらは私たちにとってライバルでは決してなく、役割分担しながら協力して高速バス各社をサポートしていく仲間である)、ウェブの会社にコストを投下する意義を見出していただけなかったようだ。そうこうするうちに、高速ツアーバス各社(とは言っても当時は9社。現在では60社を超えているが)との話が決まり、まずは高速ツアーバス予約事業が先行スタートすることとなった。

「もしもその際、高速ツアーバス各社より先に、どこか大手の既存事業者がイエスと言ってくれていれば」という想像は、私の中ではどこか甘い響きを持っている。私は、「ウェブを通して高速バス市場を大きく拡大させる」という将来像の大きさを優先し、自分自身の「アンチ・ツアーバス」の感覚と折り合いがつかないまま今の会社に転職したから、入社当初は何度も「転職は失敗だった。もう会社を辞めてホテルマンに戻ろう」と感じていたし、その度に「高速ツアーバスより高速路線バスを先に取り扱っていればさえ」と唇を噛んでいた。当初、既存事業者に提案に回った新規事業担当のメンバーは、「経営者の言葉」も「ウェブ屋の言葉」も「旅行会社の言葉」も話せる優秀な連中だったが、当然「バス屋の言葉」は知らない。プロジェクトの最初から「バス語」を話せる私自身が加わっていればもっとうまく提案できただろうし、そもそも社内で、まず先に高速路線バスの取扱を優先すべきだと主張していただろうと、心から悔しく感じていた。

また今でも、既存事業者に営業に行った際「もしも私の会社が、高速ツアーバスよりも先に高速路線バスを取り扱っていればどうなっていたでしょうね?」という話をすることがある。皆さん、急所を衝かれたように黙ってしまう(劇薬だから、ある程度気心が通じた相手にしか使えないテだ)。やれ行政が悪い、やれツアーバスが悪い、やれ高速無料化が悪いと全てを外部環境のせいにしがちな彼らにとって、高速ツアーバスがここまで成長した責任の一端は自分たちにあるというか、自分たちの選択(厳密に言うと「選択しないという選択」)が高速ツアーバスを育てるきっかけになったという現実はかなりショックなようだ。

では、と思う。「歴史にもしもはない」というが、もしも本当に私の会社が先に高速路線バスを取り扱っていればどうなっていただろう。私の会社は全国の多くの事業者と契約できていたかも知れない。全国にほどほどの送客をして、私の会社もほどほど儲かり、私は全国の既存事業者から「おかげで乗車率がちょっと上がったよ」と声をかけてもらい、ほどほどに満足していただろう。

しかし、それでは何も変わらなかったのではないか。まず足元の話では、高速路線バスの取扱手数料は、高速ツアーバス各社から今いただいている手数料よりも低かっただろう。私たちは(特に最初の2年ほどの間は)、手数料収入のうちかなりの部分をウェブ上での集客に再投資してきた。検索エンジン対策であるとか、「初めての利用者は500ポイントプレゼント」といったキャンペーンなどだ。もし低い料率でしか手数料をいただけていなければ、私たちの販売力は結果として今より大きく劣っていただろう。

そして長期的な話では、「高速バスという事業のあり方」について誰も議論を始めていなかっただろう。従来どおりの高速バスのあり方を是とし、せいぜいウェブマーケティングをちょっと積極的に活用し乗客数が多少伸びていたかも知れないが、抜本的に高速バス事業の今後のあり方をゼロベースから考えるということは、私個人も、また業界全体でもなかっただろう。事務局として高速ツアーバス連絡協議会を立ち上げていなければ、行政が主催する政策の勉強会に出席させていただくなどということも無かったに違いない。高速ツアーバスの成長が無ければ、現在の高速路線バスの制度のあり方がベストなのかどうか、誰も議論していなかったに違いなく、それは高速路線バス成長の可能性を閉ざしていたと言うことでもある。

これから、高速バスの制度がどのように変化していくのは責任を持って言える立場ではないが「昨日までこれでやってきたから」というだけの理由で変革をしないのは、高速路線バスを運行する既存事業者自らのチャンスをフイにすることであり、彼ら自身の問題として高速バスのベストな制度を考えていっていただきたいし、私たちはそれを精一杯お手伝いしていきたい。

もっとも、私の会社が仮に高速路線バスを先に取り扱っていたならば、別のインターネット企業が高速ツアーバスを大きく育てていたかも知れない。あるいはウィラートラベルやオリオンツアーや平成エンタープライズらが、自社の販売力を徹底して大きくしたのか。それとも全く新しい高速バスの業態が誕生し急成長していたという可能性すらある。「歴史にもしもはない」と言うが、もしある誰かのある選択が仮に異なっていたとしても、長い歴史の一部として捉えた場合、時代の変化は必然だということなのだろう。とにかく言えることは、高速バスという輸送モードには、やり方しだいでまだまだ成長の可能性があり、高速バスが成長することは、安価に快適に長距離を移動したい乗客にとっても、バスでメシを食っている者にとっても、喜ばしいことだということなのである。





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Last updated  2010.01.24 19:38:44
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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