成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.04.02
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カテゴリ: 高速路線バス
出張のために飛び立った先日と戻ってきた本日夕方とで、飛行機の離着陸の向きが南北逆になっていた。飛行機は風上に向かって離着陸すると言うから、「風向きが変わった」ということだろう。意外だったのは、出発の際には過去数ヶ月間の出張の時と違って南向きに離陸して春を実感したにもかかわらず、本日は北に向かって着陸し冬が逆戻りしていたことだ。時に暖かく時に寒い日を行きつ戻りつ、それでも季節は着実に進んでいくのだろう。以前 「歴史を見る目」 の項で書いたように、既存バス事業者という会社を取り巻く環境を見れば、「1000円高速」による高速バスの減収や昨今の不況は、いわば「日々の寒暖」である。むしろ意を決して直視せねばならぬのは、モータリゼーションの進展や人口減少、右肩上がり経済の終焉など、ロングスパンでの「季節の変化」だ。

ではそれをもっと小さく「高速バス」に絞ってみた場合どうなるか。その場合、私は短期長期という時間軸ではなく、現在の高速バスを取り巻く環境の変化は、高速バスに固有の変化かそれとも社会一般で起こっている変化か、つまり空間的な広がりの中で捉えられるべきだと考える。今風の言い方をすれば「ローカルな現象」か「グローバルな潮流」かの区分である。

言うまでもなく、いわゆる規制緩和(需給調整撤廃と参入要件の緩和)による新規参入増加こそ、高速バスに固有の現象の代表である。1990年ごろまでの、ある区間には一つの共同運行ペアにしか路線認可を与えないという国の方針(平バスで言う「地域独占」に対し「路線独占」「区間独占」と呼ぶべきか)からダブルトラック、やがてマルチトラックが認可されるようになり、さらに高速ツアーバス業態が容認されるに至って、高速バスの新規参入は飛躍的に増加した。2002年の規制緩和は本来、本分野においては、貸切専業事業者が乗合許可を得て高速バス事業に進出するケースを主に想定されていたと考えられるが、制度は変わっても結局は「停留所の権利」に代表される様々な参入障壁が残った一方、お隣の貸切バス分野では想定どおり新規参入が多く見られたため、高速ツアーバスという少しひねくれた形態での新規参入ラッシュとなった。ただその結果として旅行会社という異業種が高速バス事業に関わることとなり、固定観念に囚われない柔軟な商品作りが持ち込まれたことで業界全体ではより大きな成長をすることができたのは怪我の功名と言うべきか(必ずしも旅行業界がバス業界に比べ柔軟だと言っているのではない。異業種による新規参入者が業界の固定観念を打破しブレークスルーをもたらすことは一般的な事象である。なお、規制緩和が進み新規参入が相次いでいるのは、バスに限らず我が国の多くの産業に共通かも知れないが)。

以上が高速バス事業に固有の環境変化だとすれば、反面で世の中全体に起こっている変化もある。それはウェブの普及による消費環境の変化である。まず、ウェブの普及は何よりもまず 「販売力のフラット化」 をもたらした。どんな大手でも貸切専業である限りは法人向け(つまり「1台いくら」)の販売はできても個人向け(つまり「1席いくら」)の販売をする方法を持ち得なかったが、ウェブの普及により中小の貸切専業バス事業者や中小の旅行会社でも大きな販売力を持つことができたのである。

ウェブの普及はもう一つ、消費者の購買プロセスの中で「比較・検討」の重要性を一気に大きくした。ウェブ化によって購買プロセスは従来の「AIDMA」(注意→関心→欲求→記憶→行動)から「AISCEAS」(注意→関心→検索→比較→検討→行動→情報共有)へ変化したと言われているが、紙のチラシ・時刻表と電話予約だった頃に比べ、乗客が予約までの間に目にする高速バスの情報量(座席のスペック、ビジュアルはもちろん、他の利用者による評価すなわちクチコミ情報まで)は飛躍的に増大している。常々申し上げているように、規制緩和による新規参入の増加という「ローカルな現象」と、ウェブ化による消費環境の変化という「グローバルな潮流」の組み合わせが「お客様自身が、バスを選んで乗る時代」をもたらしたのである。

『バスラマ・インターナショナル』118号の表3に、ウィラー・トラベルが「日本のLCCを目指す」とする意見広告を出稿しているが、その意味では、規制緩和による参入要件緩和とウェブ普及による販売力のフラット化こそ、米欧におけるLCC成長の大きな背景であったことは間違いなく、今日の高速ツアーバスの成長をそれと重ねてみることは正しいだろう。少なくとも、旅行形態の変化(団体から個人へ。旅行会社のお仕着せの旅行から個人で組み立てる旅行へ)に直面して危機的な状況にあった中小の旅行会社や貸切専業バス事業者に対し、起死回生の大きなチャンスを与えたことは間違いない事実である。

では上記のような環境の変化は、しかし、既存事業者にとってマイナス面だけなのか? 私にはそう思えないのだ。 「高速ツアーバスは『LCC』か?」

既存事業者の高速路線バスが再び成長の軌道に乗ることができるかどうか、再び春に向けて季節を一つ進めることができるかどうか。その分かれ目はただ一つ。彼らがもう一度、かつて成長期だった頃と同様の、挑戦者としての意識を取り戻せるかどうかにかかっている。「風向きを変える」のは、神様やお天道様ではなく、彼ら自身の意識である。





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Last updated  2010.04.02 21:31:22コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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