成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.07.30
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カテゴリ: 高速ツアーバス
高速ツアーバス企画実施会社( 高速ツアーバス事業の実稼動ベースで約60社 )は、事業タイプによって大きく二つに分けられる。一つは、通年で同事業を営む会社である。ウィラー・トラベルやオリオンツアーのように全国に路線網を持つ会社もあれば、サンマリンツアー(宮崎)や高志観光バス(福井)のように地元密着で1路線だけ運行する会社もある。通年運行する以上は平日の乗車率が課題だから、販路の拡大が肝要だ。各予約サイトでの代売や自社サイトに加え、電話予約や旅行会社での代売(それらのためにはパンフレット製作と配布が必須)など多様な販路を組み合わせる。予約サイトの送客手数料負担を少なくするために自社サイトのプロモーションを行なうなど、チャネルミックスにも積極的だ。

彼らは季節波動に対応して続行便を設定するが、地上側での処理能力の限度などから、お盆などピーク日の需要に全て答えられる訳ではない(ロータリーエアーサービス「キラキラ号」や富士セービングバス「旅の散策」のように専用車両にこだわり続行便を一切設定しない会社もある)。そこで私たちは、通常の貸切バス事業者(ただし自社で旅行業免許も保有)に対し、ピーク日だけスポットで高速ツアーバスを企画・運行しないか提案に回ったのだ。私自身、座席表作成や乗車時のチェックイン業務など、初運行する会社の現場に出向きお手伝いしつつ手法を伝えたことも何度かある。その結果生まれたのが二つ目のタイプ「スポット型」である。彼らは年に数日しか高速ツアーバスを運行しないから、パンフレット製作や自社サイトのプロモーションをするより全座席を私たちに販売委託した方が安上がりでしかも楽だ。なお「スポット型」から「通年型」に移行した会社も多く、平成エンタープライズなど今やかなり大規模に高速ツアーバス事業を展開している。

高速ツアーバス成長の歴史を振返るとき、まずは汎用的な貸切車で参入しやがて上級車両の品揃えも図る 「スモールスタート戦略」 とともに、お盆などのピーク日に他の交通機関が満席になった後でもスポット運行の車両を積み増して「満席」状態を回避し多くの人に利用してもらい、それが固定客となって通常期にもリピートする、というサイクルがうまく機能した点も大きい。「山」をとにかく高くすれば「谷」もそれに釣られて埋まっていく。もちろん、片道輸送でも利益が出るようピーク日には極端に高い料金を設定するため価格変動システムを導入したことや、特定日のみ運行でも利用者が該当商品に辿り着けるようサイトのメイン導線を「空席検索」に変えたこと、精緻なデータ分析を元に出発日ごとに不足する台数を事前に把握できるようになったことなどがその大前提である。

そのような戦略を、私たちでは4年前にまず首都圏~京阪神に導入し、その成功を受けて首都圏~名古屋、仙台にも広げた。しかし、地方向け夜行路線に一気に拡大とはいかなかった。元のパイが小さいからだ。一晩で200台のバスが運行する区間に20台のスポット増発を設定するのと、3台しか走らない区間に1台のスポットを出すのとではインパクトが違う。「通年型」の会社も大切な取引先であるので迷惑をかけるわけにはいかないからだ。

「通年型の会社にすれば、お盆のおいしい時だけスポット組が入ってくるのは歯がゆいのではないか」と質問をいただくこともあるが、そんな疑問自体「路線バス業界的」だ。お盆に初めて高速ツアーバスを使った利用者が次に同区間を移動しようとした際、それが平日なら通年型しか運行していない。ピーク日に一人でも多く(他社のバスであっても)高速ツアーバスを利用してもらうことが通年型の会社にとってもプラスとなるサイクルを彼らは体で実感している。高速ツアーバス(本当は高速バス路線バスも含め)は、各自が狭い縄張りを守ることより皆で成長することを求められている「成長期」の事業である。

私はこれまで「高速ツアーバスは大都市間においては成功するが地方都市路線については難しい」と様々なところでご説明してきた。少なくとも3年ほど前には、決して既存事業者へのリップサービスだけでなく、私はそう信じていた(そう信じたかった、のかも知れないが)。地方都市路線では既に高速路線バスがマーケット掘り起こしを済ませている上に、マーケット全体の規模が小さく上記の各種戦略を採りづらいからだ。しかし企画実施会社たちの懸命な努力の結果、地方都市路線は大きく成長した。首都圏~青森、秋田、富山、金沢、岡山、広島、徳島、高松、福岡や京阪神~福岡など、大都市間路線に次いで流動が太い夜行路線については、何台もの続行便やスポット便の設定が当たり前になっている。この夏に在庫不足に陥って満席による品切れを誘発しそうなのは、首都圏~鳥取、島根、高知や京阪神~宮崎、鹿児島など、もう一段細い路線たちなのだ。

それでも、高速バスマーケットのほとんどを占める多頻度昼行路線は未だ高速路線バスが圧倒的に強い。所要2~4時間の中距離路線で高速ツアーバスがなんとか事業として成り立っているのは、福岡~宮崎、東京~長野、東京~福島くらいで、高速路線バス側の運賃が他路線と比較しても高めだなど何らかの要因があったところばかりだ。長距離夜行と比べ習慣的利用が多い中距離路線では、制度面では当日発券など高速路線バス業態の方が有利だし、営業面ではフリークエンシーが重要で小規模参入では転移しづらいなど高速ツアーバス(ないしは新規参入者)に不利である。だから今現在の私の率直な意見を求められれば「やはり中距離路線で高速ツアーバスが大爆発することは難しいのでは」と答えるしかない(それこそが、針の筵のようになりながらも提案を続け高速路線バス取扱を拡大しようとしている、会社としての理由である。個人としての理由は単に「好きだから」だけど)。






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Last updated  2010.07.30 19:30:36
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高速バス市場の拡大はどこまでか?  
経済人@尾張藩 さん
いつも、ブログを拝読しております。
ちょっと、遅くなりましたが、コメントさせていただきます。
高速ツアーバスが大都市間輸送から大都市-地方都市輸送に進出しつつあることから、いよいよ「市場の限界」に近づきつつあるように感じています。
とすると、そろそろ「市場の脱皮」を行い、新たな市場を創造しなければならない時期にあると思います。では、どうやって「脱皮」するのか???
「脱皮後」の姿は、正直わかりませんが、脱皮するために必要なことを述べたいと思います。
一つは、成定さんが情熱を燃やす「高速路線バスと高速ツアーバスのワンストップ購入」だと思います。何よりも利用客がそれぞれのバス便を比較した上で、利用客自らが選択するという仕組みを通じて、市場そのものが「切磋琢磨せざるを得ない状態」にすることが必要です。
もう一つは、私が何度も主張している「高速路線バスと高速ツアーバスの事業ルールの統一」だと考えます。一方が出来て、一方は出来ないという現在の法制度は根本的に間違っていると思います(おそらく、現在の高速ツアーバスの事業モデルを大胆に乗合自動車事業に取り込むことになると考えます。)。
さらに、もう一つ。違法行為を厳しく取り締まる仕組みを確立すべきです。それが国等による監査強化なのか、第三者機関等による格付けなのかは議論に値すると思いますが、健全な市場を育成するためにも、違法行為を平気で行うようなバス事業者が跋扈するような、いわゆる「正直者がバカを見るような状態」を一掃すべきかと考えます。 (2010.08.08 15:46:27)

Re:高速バス市場の拡大はどこまでか?(07/30)  
非常に深いお考えの元にコメントをいただきまして本当にありがとうございます。全く同感であります。
「脱皮のために必要なこと」。まず「切磋琢磨せざるを得ない状態」を作ること(そのための一つの要素が弊社でのワンストップ購入)は心から同意します。次の「ルールの統一」については、私個人は「既存事業者でも高速ツアーバス業態を選択する自由がある以上は不公平と言えず、むしろ新業態の開発も競争のうち」という考えではありますが、「統一ルール」も一つの重要な見識だと思います。
そして最大の課題は「取り締まる仕組み」。この点も率直に同意します。では、さあ、どうするか? 販売側としてできることは何なのかという自問も含め、考えるべきことは山ほどあります。安全や消費者保護のため規制があるのはバスだけではないのに、もしバス業界にだけ「バレなければさえ」が横行しているのならおかしなことです。片側では監査強化や格付が必要で、評価認定制度に加え、大きな一歩として高速ツアーバス運行事業者が安マネの評価義務付け対象になり、現在、各事業者が安マネに順次取り組んでいる最中です(みんな苦労しています)。もう一方で、それら「ちゃんとやっている会社」が1席でも多く100円でも高く売れるよう消費者との関係性を築くことの両面が同時に機能することが大事だと考えています。まあ、フツウの業界ということですが。
非常に深いコメントに十分にお答えできたかどうか。私の立場としては、行政など関係の皆様とも情報交換を深め、できることから一つ一つぜひ実現していきたいと考えています。またコメントをお待ちしています。 (2010.08.10 18:19:41)

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