成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2011.12.21
XML
カテゴリ: 高速路線バス
年末を控え全国へ出張が続く。いくら好きとて、先週のように「両夜行」(往復とも夜行高速バス)はもうやめないと体が重くなってきた。週末は友人たちとある路線の初乗車を楽しんで、週が明けて月曜朝1便の飛行機で別の出張。午後から隣県に移動してその地の事業者に食事にお招きいただいた後、火曜はさらに隣県の事業者に移動して夜行で東京に戻ってきた。ますます体が重いが帰着後の本日はアポイントが無い。サラリーマンを辞めてよかったことの一つが、平日の朝に帰って飲む「明け」のビールだったり。

今回の出張は、ある地方を代表する事業者への往訪がメインだった。部長さんには面識があったのだが社長さんをご紹介いただけるということでご挨拶程度のつもりだったが、<せっかくだからちょっとしゃべって(講演して)くれないか?>。日時が迫っていたにもかかわらず、社長ご本人から各営業所、そして隣県など周囲の路線バス事業者にも声をかけてくださり合わせて50人という、事業者内での私の講演としては過去最大規模となった。

この、「周囲の事業者を巻き込む」姿勢は大変頼もしい。運賃や車両調達が柔軟化すれば事業運営上の変数が一気に増加する。共同運行先とも、また目先のライバルであるダブルトラック先とも常に連絡を取り合い情報を交換し、共通の価値観を養い個人レベルでの信頼関係を築くことができなければ荒波の時代を乗り越えることは難しいだろう。

さて、新制度そして「高速バス・ビッグバン」に関する理解は一部の事業者では着実に進んでいる様子。「あり方検討会」の議事録(おそらく国土交通省が発表する公式な議事録ではなく、より詳細なもの)や、時にはこのブログを隅々までお読みで細かい点まで鋭いご質問をいただき驚くことも増えてきた。

今回の制度改正は共同運行会社同士の関係性を大きく変化させるであろうことも、皆様との会話の中から強烈に伝わってくる。キーになるのは、「貸切バス型管理受委託」と「共同運送(コードシェア)」だ。その二つにより具体的にどのようなビジネスモデルが成立するかはここでは詳しく書けないが、この制度改正に多少なりともかかわっている私の考えはこうだ。大都市の大手事業者は運行コストが高く、高速バス事業から利益を上げにくい状況が続いている。さらに空港線など収益性のより高い事業も他にあるし、例えば営業所(車庫)はおおむね親会社の鉄道沿いにあり、仮に減車すればその分の車庫用地を不動産として活用できるなど「誘惑」が多い。

逆に地方の路線バス事業者は、利幅は多少無視してもいいから仕業数を稼ぎたい。平場や貸切が縮小均衡にあるなか、とはいえ組合員である乗務員をクビにはできず人件費が固定費化しているからだ。一方でレベニューマネジメント導入など一気に複雑化が進む今後の高速バス事業の運営には、地方の事業者が個別に立ち向かっていては情報もリソースも不足する。複雑さを増すマーケティング面は大都市のハブ的事業者に任せ、実際の運行は地方の事業者が中心に行なえるよう、共同運行会社間で収益の配分方法が変化することが予想される。鉄道や航空といった他の輸送モードと競ううえで、「考える人」と「走る人」の役割を分化して、それぞれ得意分野に特化することが有効だと私自身は考えている(もちろん、長い期間かけて結果としてそう落ち着くだろう、という意味だ)。

しかし、だ。今回お邪魔した数社のように、手間とコストをかけてまで私を招いてくれる、あるいは元気な経営者や担当者にお会いしたくて私から好んで伺うような地方の事業者に限って、上記のステレオタイプが通用しないことにあらためて気づく。彼ら自身はただの「走る人」になる気などなく、「考える人」になる意欲もリソースも十分にある。むしろ高速バス事業への期待が大きい分、経営者から担当者まで、大都市側事業者に輪をかけて懸命に考え、制度改正にも期待している。彼ら自身が東京や大阪に自らのバス停を持つことができれば、単独運行に移行し存分に力を発揮することだろうが、現実にそれは困難だ。

彼らにとっては、地力はあるはずなのに鷹揚に構えて動こうとしない大都市側の共同運行先には苛立っていることだろう。せめて周囲の地方側事業者がもうちょっと積極的になってくれれば大都市側の共同運行先にプレッシャーを掛けられるのに、というところだろう。しかし、その苛立ちが何かを変えていかないか、私はひそかに期待している。

「既存組」の高速バスが他の輸送モードに勝っていくために最終的に必要なことは、「頭脳」の役割を追う大都市側のハブ的事業者が、「考える人」としての責任を自覚し本気で積極的にマーケティング活動に励むことだ。そしてそれを導くのは、そのような大都市側事業者同士の競争だ。そのためには、地方側事業者が、地元での分厚い顧客基盤を持参金にして、より強いパートナーを求め共同運行の組み替える動きを起こすしかない。大都市側事業者が、一等地に昔からバス停を持っている、ということに胡坐をかき、戦略的なマーケティングを担う意欲も能力も持たなければ、実は顧客を握ってきた地方側共同運行先に見捨てられてしまうという環境を作ることが大切なのだ。もちろんそれは、「業界内の暗黙の了解」の中ですぐには起こりえない。だからこそ、地方側事業者の強い苛立ちに期待する。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011.12.21 20:31:53
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

nalys

nalys

Comments

京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

Calendar

Archives

2026.10
2026.09

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: