成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2012.01.19
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カテゴリ: 高速路線バス
本日付の『日本経済新聞』朝刊、埼玉・首都圏経済面で、「高速バス料 細かく設定 工房、予約システム 規制緩和にらむ」として、「発車オーライネット」のシステム改修の方向性が紹介されている。実はいま私は4泊5日の出張中でこの記事も某社の高速バス車内で書いており、日経の記事もメールで送っていただいたものを見ているだけだが、この出張中にお邪魔している高速路線バス各社の反応も、さらにこの記事を読んでも、まさに「いよいよ」という感じ。今日これから、そして明日お邪魔する事業者でこの記事の話をすると思うので、さらに各社の意識は高まることだろう。思うに、夜が明ける前に、東の空がぼうっと明るくなってくる、あの感じだ。

「発車オーライネット」のような高速路線バスの基幹システム&自社予約エンジンにとって「新高速バス」制度と直接関係するのは、運賃制度の柔軟化、ということになる。新制度では、「基本運賃」と、それから50%以上の割引とならない金額で「下限運賃」を届け出て、その間であれば事業者側の判断でリアルタイムに運賃を変動させることができる。

と、この話をする際には、現行の運賃制度について説明が必要だろう。現在でも、高速バスの運賃はいわゆる「軽微運賃」扱いなので、例えば社会的に明らかにおかしいとか、公正な競争を阻害するといったケース以外では、ざっくり言うと事業者側が届け出た金額がそのまま適用される。早期購入などの営業割引も同様だ。つまり現状でも実はかなり自由度が大きい。ただし、変更するたびに事前に届出をしないといけない。その点は、たしかに高速ツアーバス(募集型企画旅行)に比べて負担も大きい。それが、上記制度に変わる。

だが、国が決めるのはレギュレーションだけだ。その運用方法までは「お上」は教えてくれない。例えて言えば、いま野球は「3アウト」でチェンジだ。それが「4アウト」でチェンジという風に仮にレギュレーションが変わったとする。今では、1番バッターが塁に出れば2番はバント、が常識的な戦い方だろう。「3アウト」制での長年の経験から、それが最も得点の確率が高いことがわかっているからだ。一方、「4アウト」制になったら、2番はヒッティングに出るのがいいのか、3番もバントして走者を3塁に送った方がいいのか、仮説を立て実際に試し、経験を積んで、常識的な戦い方を見つけ出していかねばならない。

ではこの「幅運賃」制度導入により、高速路線バスでもレベニューマネジメントが可能になった場合、どんな動きがあるだろう? 運用の幅は50%までと制約があるわけだから、レベニューマネジメントの効果を最大化するためには、基本運賃額を若干値上げすることになろう。例えば現在片道4000円の路線があれば、基本運賃額は5000円くらいにすべきだろう。ただし、基本運賃額が適用されるのは年末年始などの最繁忙日の、しかも最繁忙時間帯だけだ。現状で「おおむねよく乗っている」便は今まで通り4000円。「乗っていない」便については、2500円を下限に値下げをすることができる。さらにそれをリアルタイムに変えられる。いったん5000円を付けた便も、「貸切バス型管理受委託」の活用で思ったより続行便の台数が手配できたら、その時点で4500円に値下げできるのだ。

新しい戦い方を身に着けるためには、当然、レベニューマネジメントに関するちゃんとしたロジックを学んでいただかなくてはならない。「どんぶり勘定」で運賃変動などやったら、意味のない値下げ合戦などが起こるだけだ。ただ、そのロジックはこのブログに書けるほど簡単な内容ではないし、ここに書いてしまったら私のメシの種がなくなってしまう…

もっとも、その手前の段階で、「発車オーライネット」など基幹システムの改修に当たり考えておくべき点は山ほどある。レベニューマネジメント概念に基づく運賃変動を行なうとして、高速ツアーバス各社がやっているような1円単位で金額をシステムにベタ打ちする手法か、または何段階かの運賃帯を開け閉めする手法を選ぶか。そしてそれを現場のオペレーションに載せていかねばならない。変動運賃をウェブ予約ウェブ発券に限定すれば現場の混乱は少ないが、わずか数%の乗客のために人材を張り付けてレベニューマネジメントをするというのは明らかに無駄だ。いつかは、車内発券も含めて対応することになろう。

さらに、運賃変動を導入すると往復割引の扱いが非常に難しくなる。そのため高速ツアーバス各社は運賃変動導入とともに往復割引を廃止した。だが紙の回数券は無くせないだろう。紙の回数券には、単なる割引という以上の様々な意味があるからだ。乗車便変更の扱いも難しい。当面は変動運賃の場合は便変更をいっさい受けず、払戻し再購入をお願いするしかないだろうが、多頻度昼行路線において便変更不可というのは自らの強みをわざわざ否定しているようなものであり、これもいつかは差額徴収で変更可能という風に持っていかないといけない(なお払戻し手数料は100円ではなくなる)。さあ、途中バス停の車内でどうやって差額徴収対応するか? 現在の乗越精算とは比べ物にならない複雑さだ。運賃はリアルタイムで変動しているのだから。そして子供運賃は? 障がい者割引は?

記事にあるように、「発車オーライネット」や「SRS」などの基幹システムは、まずは初年度、最低限の改修を行ない、実際のオペレーションや収益改善効果を見比べながら、何年もかけて完成に導くことになろう。数年後、中央高速バスや九州内路線のような多頻度路線の運用がどのように変化しているか、想像するだけでドキドキする。

「北海道ホテル」 を満喫する予定。ただ翌月曜日が「バス事業のあり方検討会」だから、帰りの飛行機が大雪でキャンセル、なんてことだけは無いよう祈りながら、かの地の透明な空気が今から待ち遠しい。





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Last updated  2012.01.19 13:19:19
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Re:高速路線バス基幹システムの「新高速バス」制度対応(01/19)  
管理・・・職 さん
橋を渡ってお越しいただいてありがとうございます。今回もお話しながら新たな気づきを頂きました。ありがとうございます<(_ _)>。今現在、大名商売など何処を探しても無いですよね・・・その中でいかに生き残るか・・・お話をしていると話題が広がりアイデアが出てくるのは何ででしょうね?同じ光景を私は何度も見てきているのですが二人で話しながらなんででしょうね?と言った事から新たな収入源を見出しました。刺激でした。同じ光景を見ながら気が付かなかったのですから・・・レギュレーションを守りながら色々な方向を模索する。下駄屋に固執していると取り残されますよね。また来月楽しみにしつつ、取り残されないように視野を広げます。 (2012.01.20 01:26:40)

Re[1]:高速路線バス基幹システムの「新高速バス」制度対応(01/19)  
nalys  さん
管理・・・職さん、こちらこそいつもありがとうございます。昨日帰ってきました。

そうですね、たまに外から行くから見えるものもあると思います。仕事としては、そのような情報をご提供し続けますので、事業の成長の役に立てていただければと思います。

でも私もお話ししていて楽しくなかったり、私自身の成長につながらなかったりするようなお取引先だと、お邪魔しても楽しくありません。御社を含め、いま私はどのお取引先もお伺いするのが楽しみで(状況は各社ごとに異なるのですが)、その意味で本当にお取引先に恵まれたと感謝しています。

また来月、お邪魔します。 (2012.01.22 11:16:12)

基本運賃と上限運賃について  
ひとし さん
いつも楽しく学びながら読んでます。

新高速バスの基本運賃とそこから50%の下限運賃についてです。こちらは1年以上前に記事ではありますが、まだ有効なのでしょうか?
http://www.mlit.go.jp/common/000219455.pdf
上記のサイトではそのような事は書かれておりません。案としては廃止になったものなのでしょうか。
よろしくお願いします。 (2013.05.28 07:42:50)

Re:基本運賃と上限運賃について(01/19)  
nalys  さん
ひとしさん、コメントいただきましてありがとうございます。

この件ですが、実際に省令改正を行なうにあたって関越道事故を受け内容の見直しを行ない、違う形で制度化されております。当初案とは異なり「運賃タイプごとに20%の幅で届出」になりました。もっとも複数の運賃タイプ(「●●割引運賃」など)を使い分けることで幅広い運賃変動は可能ですね。

ちょうど、九州各社が京王の基幹システム「SRS」(サイト名としては「ハイウェイバスドットコム」)を導入することを発表し、また昨日は日本経済新聞朝刊に「SRS」機能拡充のニュースが掲載されたところですので、なんとか時間を見つけてこの幅運賃制度の件について書いてみたいと思います。

引き続きよろしくお願いします。 (2013.05.29 08:49:52)

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