成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2012.02.01
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カテゴリ: 高速路線バス
前回、レベニューマネジメント(RM)のことを少し書いた。ここで皆さんに少し考えていただきたい。「ビジネスクラス」と言えば航空の高級座席を指す。一方で「ビジネスホテル」は低価格のホテルだ。よく似た名前の両者だが、なぜ正反対の性格を持つのだろう?

前回の内容を振り返ると、出張客は価格に無頓着でプレジャー客はシビアだ。つまり出張客はバジェット(予算。支払意思)が大きくプレジャー客は小さい。前者は利用直前に予約を入れ(リードタイムが短い)、後者は前もって予約する(同・長い)。だからざっくり言うと、前もって安い運賃を提示してプレジャー客を集めておき、出発直前には高い運賃で出張客を狙い撃つ。ただし、路線環境によってそれが通用しないケースもある。

その環境とは、おおむね鉄道等との競合の話だ。競合が少ない路線では上記の理屈が成り立つのに対し、激しく競合している路線では出発が近づくほど運賃を上げていく手法は通用しない。その原因は主に、出張客の行動特性にある。鉄道と競合が激しい路線ながら高速バスを選んでくれる出張客とは、すなわち会社からは鉄道運賃をベースに出張旅費を受け取り、実際には安いバスを使うことで差額をポケットに入れているケースが多い(もちろん、私のような個人企業の場合など例外は少なくないが)。それゆえ上記に挙げた「出張客は価格に無頓着(価格弾力性が小さい)という前提が成り立たず、だから「右肩上がり」の運賃曲線は有効でない場合が多い。というのが前回の骨子だ。

同様の事例は宿泊マーケットにも存在する。米国企業では、社員の出張などに企業がけっこうお金をかける。彼らは実は、社員(といってもホワイトカラーということだろうが)の労働環境にかなり配慮する。日ごろから社内の食堂やフィットネスクラブが無料の企業も多いという。また治安がさほどよくないので、安ホテルは危険という理由もあるだろう。結果として、飛行機は高級座席を使い、宿泊はウェスティンやハイアットでなければ、商談相手からも信用してもらえない。だから出張客のバジェットは大きい。

一方で我が国は対照的だ。社員一人ひとりも共同体意識が強く、節約に協力的だ。<あの人、えらくなっても安いホテルに泊まって、いい社長さんだねえ>という清貧志向もある。さらに出張旅費の精算方法が影響した。旅費規程で「課長クラスは1泊8000円」などと決められ、実際に泊まるホテルが高ければ自腹、安ければ差額はその夜のビール代に化ける。まあ、福利厚生というか、自宅で食事できない分の食費補填というような要素もあったのだろう。したがって総じて日本の出張客のバジェットは小さく、でも出張客のリードタイムが短いのは変わらないので、日本のホテルで「右肩上がり曲線」が成立しづらいのだ。

つまり、米国を中心とした国際線航空のマーケットでは出張(ビジネス)客のバジェットが大きいので「ビジネスクラス」は高級座席となり、日本における出張宿泊マーケットではビジネス客のバジェットが小さいので「ビジネスホテル」(和製英語)は低価格。つまり、このねじれの背景には、出張をめぐる「文化の違い」が存在するのだ。

ただ、ミクロに見ると変化もある。日本でも、これまでの「渡し切り出張旅費」をやめ、領収書に基づき実費精算する企業が増えてきたのだ。企業側は、確実に経費削減になる。「サラリーマン」(これも和製英語)にすれば、出張時の「ささやかな楽しみ」が徐々になくなりつつある。とはいえ、それへの対抗策も生まれてきた。ホテル側が、宿泊者本人に利得がある商品をたくさん作っているのだ。その代表が、「楽天スーパーポイント10倍プラン」「QUOカード付きプラン」だ。従来、旅費規程8000円の会社の社員が7000円で宿泊すると1000円分、懐に入った。一方、領収書方式になると1円も得しない。そこでホテルは1000円のQUOカードを仕入れ、その分を上乗せして8000円の宿泊プランを作ったのだ。

実費精算への動きは出張交通費にもみられる。少し前まで、出張旅費の精算時に「公共交通機関は領収書不要」とする企業が多かった。JR(国鉄)など領収書自体を出してくれなかったのではないか。だが、特に航空運賃が多様化する中、出張交通費の精算にも領収書提出を求める企業が増えている。とすると、だ。出張における高速バス利用の典型例として挙げた「会社から鉄道運賃を受け取り実はバス利用」というスタイルが成立しなくなる。実際にどれくらい減っているのかデータでは証明できないが、影響はゼロではないだろう。

ならば、上記ホテルの事例を参考にできないか。「QUOカード付きプラン」成功の背景は、「宿泊者(出張者)本人に利得がある」ことだ。だが、QUOカードを渡すわけにはいかない。「新高速バス」では運賃が柔軟になるとはいえ、それは通達の範囲内だけであり、法律で禁止されている「運賃の割戻し」は当然認められない。QUOカードのような換金性が大きい特典は、「運賃の割戻し」と判断される蓋然性が大きい。仮に、従来4000円だった路線について、基本運賃額を5000円、下限運賃額を2500円と届け出た場合、2500円まで値下げすることはできるが、「QUOカード1000円分が付いて3500円」とするのは厳しい。



もっとも、それを実現するためには、バス事業者が地元企業をコツコツ回って営業して歩かないといけない。実は一番のネックは、各事業者の営業マインドかも知れないなあ。





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Last updated  2012.02.01 09:20:11
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Re:「ビジネスクラス=高級」「ビジネスホテル=低価格」のねじれ(02/01)  
高速太郎 さん
最後の2段落については、所得課税問題はクリアできるのでしょうか?高速バスが、鉄道や空路より厳しい交通手段として、差額を非課税対応の出張日当として、認めることが可能なのか疑念を持ちます。記載として、筆者様が税務署などの見解をお持ちなのか示されたほうがよくありませんか?

Re[1]:「ビジネスクラス=高級」「ビジネスホテル=低価格」のねじれ(02/01)  
高速太郎さん、コメントありがとうございます。

なるほど…実は私のよく知っている会社の旅費規定では、「航空機を利用した出張」の場合は他の出張と日当が異なる額になっており(まあ、飛行機に乗るのが特別だった時代の名残でしょうが)、それを参考に書きました。したがって、一般的なルールとしてどなたかの見解をいただいているわけではありませんし、現実にそれを求めても、「金額の妥当性などを含め個別に判断」と言われてしまう気がしております…

ただ、本記事の趣旨は、「非課税にする」ことが目的ではなく、たとえば新幹線+前泊の出張を夜行高速バスに変更した場合、早朝到着後、喫茶店やサウナで時間を潰す人が多くそのための費用も発生しますし体力的にも厳しいので、企業側が削減できた経費からその分を出張者本人に還元でいないか、というものですので、課税扱いの「高速バス出張手当」でも目的は達成できるかと考えています。

高速太郎さんのご指摘とは全く反対の「出張者本人の利得になるか?」と言う観点でも、ある方から、「給与と一緒に口座に振り込まれれば結局は『家計』に入ってしまうので、『小遣い』になるQUOカードほどの魅力はないのでは?」という指摘もいただきました。

したがって言葉が不足していた点をお詫びしつつ、これから各事業者さん達と一緒に法人セールスのネタを作っていく際に、より精度の高い提案にすべく、多様なご意見をいただくのは大変助かります。
引き続きコメントなどお待ちしております。 (2012.02.09 18:11:08)

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