成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2013.11.20
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カテゴリ: 高速路線バス
自分の話で恐縮だが、「高速バス・マネジメント・フォーラム」が終わった後の週末には、毎年、北海道に一人で出かける。実は、私はすごい人間嫌いで強い孤独癖があるため(人生観も極めてネガティブだし。ただ今のところ、お取引先その他周囲からは、逆に社交的で活動的な印象を持ってもらっているようでほっとしているが)、ふだん一人で生活し一人で仕事しているにもかかわらず、もっと一人になりたくて旅行を組む。

目的地が北海道であることには、そんなに深い意味はない。ただ、飛行機でしか(事実上)行けない、という立地は、しかし、(海外に向かうほどのコストや時間をかけずとも)それなりに日常との断絶感に寄与している気もする。出張の際には煩わしさしか感じない搭乗までの段取りも、旅だと思えば、自らを日常と切り離してくれる儀式のように思える。ざわついた東京駅から新幹線に乗車する際はこのような儀式がなく、物足りない。

あと私の場合、気に入っている宿泊施設があることは目的地の重要な要素だ。洗練されていて、それでも居心地がいい宿泊施設というのはそんなに多くない。滞在自体が目的だから、いわゆる観光地には立ち寄らない。「ガーデンシティ」と呼ばれる帯広の街が気に入っていて、市内を歩いたりする程度。帯広には、有名なバーテンダーさんがいるバーもいくつか。

そうやって何もしないでいると、心の中がほぐれてくる。就寝中に見る夢はふだんは仕事の話ばかりだが、だんだんと高校時代の友人や子供の頃に住んでいた家が登場するようになれば、自分が日常から解放されたことを実感する。もっとも、その頃にはもう東京へ戻る日が近づいているのだが。

長々と私の旅の「絵」をご紹介したのは、旅行者によってその絵は多様化しているはず、との思いからだ。子供のいる家族なら「雪かき」や「キャベツ刈り」体験はかけがえのない思い出になるだろう。ダイビングなどアウトドアスポーツが目的の方もいれば、地元の歴史に詳しい先生が寺社を案内してくれるなら日程調整してでも出かけるという人もいるだろう。

かつて観光といえば、知らぬ土地に出向き、風光明媚な景勝地をまわればそれが十分な価値を持った。目的そのものが「見知らぬ土地」に出向くことなのだから、消費者自身が現地の情報を得て自ら商品(旅程)を作ることは困難であった。また、受け入れる側の宿泊・観光施設にとっても、物理的に遠く離れた所に住む消費者を対象とする以上、(巨大な首都圏市場を抱え自身も巨大な「伊東に行くならハトヤ」のような例外は別として)自ら直接プロモーションを行なうことは困難であり、その結果、旅行会社の存在感が大きくなった。彼らは、消費者が多く住む市場(大雑把に言えば大都市)に立地しながら、旅行のプロとして全国全世界の観光地の情報を持っており、それらを組み合わせて旅行商品を造成し販売した。

それらの旅行商品は、おおむね市場側(つまり「発地」)で参加者が集合し、鉄道、航空や貸切バスなどで移動してまた発地に戻ってくる形をとった。商品を企画するのは発地側に住む企画担当者である。ただ、もちろん彼らはプロではあるが、限界もある。全ての宿泊施設や観光地について自ら深い知識を持つわけではない。先輩から受け継いだ「アンチョコ」を頼る部分は少なくない。ましてや、カウンター(店舗)で消費者に対し販売を行なう担当者は、パンフレットや基幹システムに記載されている以上の情報は持ち得ない。

一方、消費者の側は大きく変化している。先日のフォーラムで、<1960年代、某事業者では高原のスケートリンクに向かう会員制バス「スケートバス」が一晩で50台口も出たらしい>とお話をさせていただいたが、おそらく当時はスケートくらいしかレジャーが存在しなかったのだろう。首都圏から北東北などへの「帰省上京バス」が年末年始などに限定され通年運行されなかったのは、高速道路が未整備だったという環境とともに、そもそも休日数が限定され可処分所得も少なく、そう頻繁に実家に帰ることができなかったのだろう(故郷の津軽平野を懐かしむ当時の演歌を聞いて、<じゃあ今度の週末ちょっと帰省して両親の顔を見てくればいいじゃん>と感じるのは、そのあたりの環境が大きく異なるからだろう)。

だが今日では(歴史を振り返ると高度成長から安定成長に移行した80年代からのようだが)、人々は豊かになり、同時に我が国の社会は様々な点で急激に便利になり、「知らぬ土地に行く」こと自体のバリューは急速に低下した。さらに、消費者が手にすることのできる情報量は急激に増加した(A5判ガイドブックからムック版の『るるぶ』『まっぷる』へ、さらにウェブへの変化を見るだけでも実感できる)。知らぬ土地に行き、ガイドブックやテレビで何度も見た名所旧跡を訪れること自体を、今では、消費者は「光を観た」とは感じない。



前回書いた ように、「既存組」高速乗合バス事業者には、これまで綿々と築き上げてきた地方と大都市を結ぶ市場(第一の市場)において、後発参入を少しでも防ぐべく、現有顧客基盤のなかで収益性を高め、そこで得た新たな収益を、多様なニーズにきめ細かく対応するために再投資する「筋肉質な」高速バス作りが求められていると同時に、まだ誰も掘り当てられていない新しいマーケットである大都市や海外からの観光客(第三の市場)をどう高速バスに誘導するか、真剣に取り組みことが求められている。そして上に挙げたような旅行形態の個人シフトが、高速バス事業にとって追い風となることは間違いない。

第一の市場の戦い方については(まだ完全にはご理解いただけていないとは思うが)何度もご説明してきた。ここからしばらく本ブログでは、第三の市場の歩き方、いや厳密に言えばその「歩き方」はまだ誰も見つけられていないわけだから、その市場のまだぼんやりした輪郭線を、次回以降、ご紹介していく。





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Last updated  2013.11.20 17:08:21
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
京帝117@ Re:新宿高速バスターミナル(02/21) 私がカウンターに座っていた時は、空いて…

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