成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2014.01.18
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カテゴリ: 高速路線バス
長々と高速バス「第三の市場」について前置きを書いた。だがいざ具体的な話に入ろうとするとなかなか筆が進まない。実は、自分で唱えておいて恐縮だが、率直に言えば、ひとりのバス好きとして、どうも高速バスの「観光シフト」にいくばくかの違和感があるのだ。

学生時代にバスターミナルのアルバイトとして高速バスに出会い、そのままハマってしまった私は、しかし、仕事では10年ほどバスから離れた後、楽天トラベルの高速バス事業に転職してバスの世界に戻った。そこで「第二の市場(高速バスの歴史でいえば「第三フェーズ」。この、成長フェーズと市場とで連番が一つズレているのは、第一フェーズでは市場を作り上げられなかったからで、逆に言えば第二フェーズを担った既存事業者の存在の大きさを象徴しているのだが、混乱するので別の名称を考えるかな)」の誕生と成長に立ち会った。むしろ自らその旗を振ったと言っていい。いま私が生活していけるのは、「第二の市場」を成長させた実績を皆様に評価いただいているからだと思う。

その意味で私は「第二の市場(第三フェーズ)」で食っている。だが正直に言うと、愛着を感じるのは、「本籍地」である「第一の市場(第二フェーズ)」だ。文学少年だった私は(ちょっとした理由で商学部に通っていたものの)ビジネスというものを少し軽蔑していた。しかし友人の紹介でアルバイトを始めた高速バス事業は、ただの金儲けとは違った。現地(山梨や長野)で多少の赤字(当時はまだ「多少」だった)を我慢して地域公共交通の維持のためがんばっている共同運行先事業者や、回数券を握りしめ、我々スタッフに対し、<お世話になります>と頭を下げながらご乗車になる現地のリピーターがそこにいた。

もちろん、その反動で事業者の顧客志向が弱かったり大都市側に大きな潜在需要を残していたりすることに当時から疑問はあり、最寄りの居酒屋「つぼ八」でバイト仲間と議論するのに夢中になってはいたが(その頃の仮説を全て放り込んだものが「第三フェーズ」であり、その先に生まれた貸切バス型管理受委託や幅運賃制度だ。私がいま食っていけるのは、突き詰めれば「つぼ八」のおかげだ)、それでも、「沿線の役に立っている」という使命感がなければ、ただ金儲けのやり方を考えるだけなら、真剣に議論することはなかっただろう。

だから私は、「第三フェーズ」の登場人物である高速ツアーバスからの「移行組」たちとは「仕事」としては深く付き合うものの、好き嫌いで言えば、私鉄系の既存事業者どうしが共同運行する、地方都市を結ぶ高頻度昼行路線や、その現地需要への思い入れが強い。

いったん話は変わるが、イーグルバスの「お客様感謝会」に、毎年お招きいただく。取引先の他、川越市長や国県市議会議員、川越の商工会議所や商店会の役員も招かれ盛大な会だ。同社の努力と谷島社長のお人柄の成果だと感心する。一方で、少しだけ不思議な感覚に陥る。

壇上で代わる代わる挨拶に立つお偉方達が、二言目には「川越の観光」というキーワードをおっしゃることに、何か違和感があるのだ。もちろん、観光客対象の川越市内循環バスはよく承知しているし、「朝ドラ」効果もあり川越の観光客数が数年で大きく伸長しているのは、同市役所のお仕事をいただいたこともあるので理解している。それでも、何か違うと感じる。

私にとって(あるいはバス業界の人間にとって)イーグルバスとは、旧・都幾川村のような半過疎地域で、ダイヤ最適化システムなどITを活用しロジカルに事業の改善を進め、大手事業者が放り出した路線を引き受け地域公共交通を守っている真面目な事業者である。大学院に通い留学経験もある谷島社長の物静かな語り口がその生真面目さを象徴している。

だから、壇上の皆さんが、<同社は川越の観光振興に大きく貢献され>と口々に挨拶されるのを聞くと、イーグルバスを少し軽く見られた気がしてハラハラする。うん? 軽く見られる? 「観光振興に貢献する」ことは軽いのか?? 半過疎地域の地域交通は立派な仕事で、観光客を迎える仕事は「軽い」? なぜかはわからない。だがたしかにそう感じてしまう。



イーグルは、それでも、いろいろ上手で努力もし、結果として循環バスで観光に貢献している。しかし、全国を回っていると、たしかにそのような経緯で貸切専業の事業者の、二代目三代目が、地元から、<今後は人口が減るんだし、観光客を呼ばなければ地域が持たない。お前んとこバス会社だろう。地域のためにがんばってくれ>と期待されることが多いと聞く。だが貸切バス事業は受身の事業で、観光客を迎えることはできても増やすことはできない。だから、大都市から地元への高速ツアーバスに挑戦したりしてしまう(結果はほぼ全滅)。

つまりこういうことだ。ホテルなどで働いていた私でさえ、ことバスの話になると、「運輸」だと規定してしまう。地味だけど、生真面目に、地域のために走るのが仕事。それが美学。「観光」のような、華やかだが浮ついた仕事とは違うんだ、と。ところが、自分たちが貢献しているはずの地域の側は、実は、「観光」に期待しているのである。浮ついた軽い仕事? 旅行業界はバス業界を搾取する存在? とんでもない。「観光」はこの国の次の生き様である。高度成長期に、製鉄や重機などの業界が、<俺たちがこの国を支えている>と自負していたように、我々は観光立国というこの国の生き方の、一翼を担えるんだ。バス業界はその役割を楽しめばいい。

先日、委員に任命いただいている国土交通省での会議で、高速バスの観光シフトについてプレゼンテーションさせていただき、自慢のようで恐縮だが、お偉い方々からわざわざ直接お褒めの言葉を頂戴した。もう後戻りはできないし、それを推し進めることが、実は皆さんから期待されていることを実感する。

では、観光客を呼び込む高速バス事業とは何なのか? 観光施設をセットにした企画乗車券を作れば十分なのか? 次回(いつになるか自信はないけど)からは、具体的に高速バスの観光シフト、「第三の市場」の切り開き方について考えてみたい。





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Last updated  2014.01.18 16:44:32
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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